もうすぐ44才になるノーラは、
姉に彼と知り合って理由を正直に言う。
「バーでナンパしたの」
27才のマックスは別の理由を言う。
「彼女を家まで送って、彼女から離れられなくなった」
うっとりとした目で彼女を観る彼にも嘘はない。
彼女が濃厚なラブシーンで彼を悦ばせたのも確かだ。
でも、それはキッカケでしかない。
二人にはちゃんと、恋に落ちていたのだ。

ノーラはマリリン・モンローが好き。
それからカントリー・ミュージックが好き。
マックスは、クラシックが好き。
クラシックは「一番美しい音楽」を称する青年。
二人の違いは年齢以上にある。
ノーラの部屋は猥雑で、散らかっている。
マックスの部屋は整然と美しい。
彼女は酒好きでタバコが大好きである。
彼は自分の車に煙を入れない。

マックスは端正な顔だちの青年。
ジェームズ・スペイダーが丁寧に演じている。
その横にいるノーラは恋人には見えない。
スーザン・サランドンは彼の恋人にはとても見えない。
落ち葉の敷きつめられた道を歩く二人、
跪いてノーラの靴のヒモを結び直すマックス。
「優しいのね」と呟くノーラ。
二人は本当に、恋人同士なのだけれども。

ノーラの心にはマックスに似合う相手が見える。
「大学卒の、美人で若い、いいところのお嬢さん」
マックスの死別した妻がイメージ通りの女性。
「あなたは私を恥じている」
彼の愛を感じながらも彼の戸惑いを見抜くノーラ。
彼女は嘘が嫌いなのだ。

年齢の差、
趣味の差、
生活の差。
二人の間で、内面的にそれらを乗り越えても、
社会が認めない時がある。
社会が、二人を引き裂く時はある。
だが、社会が認めても、二人の未来はわからない。
ノーラに去られたマックスは、
自分の周囲のお似合いのカップルにシニカルに言う。
「でも1年も持たなかったじゃないか」

ノーラはいつも働いている。
マックスは誠実に生きようとする。
ニューヨークで再会して、いきなりキスしている二人。
愛を確かめあっても未来なんかわからない。
でも何もかも一致した人生なんてありえない。

年齢の離れた、恋人には見えない二人。
行き違いを言葉で、身体で確認し合う。
けれども、リアルな恋愛があふれている。