不時着したのは、砂漠のど真ん中。
果てもなく続く砂の大地、空はどこまでも広がる。
7月の日差しは容赦がない。
突然の砂嵐をなんとかくぐり抜け、
かろうじて生き残っても
生還の望みはなかった、最悪の状況。

閉鎖された石油採掘所のスタッフと、
使い古された機材をのせフランク機長は着陸した。
幸いにも水と缶詰だある、
捜索隊を待つのが懸命な判断だった。
だが、無線は壊れ連絡も出来ていない。
それに閉鎖された採掘所のスタッフに、
会社が救助のため莫大な費用を出すとも思えない。
だだ待つだけ、なら、
死を待つのに近い状況だった。

絶望。
絶望よりも彼らは、
自分たちで動くことを選択する。
飛行機の設計士を名乗る、
エリオットという男が提案する。
壊れた飛行機、でも無傷な部分も多い。
その残骸を組み立て直せば可能なはずだ。

「新しく、飛行機をつくろう」

会社のスタッフでもなく、
いつのまにか採掘所にいたというエリオットは、
変わり者で高慢なところがあった。
しかも雷鳴がきたときに、
フランクたちは感電防止のために、
「アース」の設置を急いだが、
エリオットは「アース」を知らなかった。

1965年「飛べ！フェニックス」のリメイク。
ジョン・ムーア監督の演出は、題材に忠実である。
大事故である、死者は当然いるが、
死と言う悲劇を演出するパニック映画ではない。
派手さやスリル、人間描写、
または秀逸な社会問題の提起よりも、
丹念に事柄を時系列で描く。
飛行機墜落のダイナミックな映像、
わかりやすい銃撃戦に
フェニックス号のテイクオフと、
どの場面もしっかりと撮られていて、
映像の醍醐味を楽しめる作品になっている。
デニス・クエイドをはじめキャストも堅実。

閉鎖された石油採掘所のスタッフたち、
ガラクタのように見捨てられた者たちが、
絶望の中で希望を手にする。
だが、その希望も
大型の模型飛行機かも知れなかった。
エリオットは本物の設計士ではなかったのである。
だが彼らは決して気負うことなく、
常に前を向いて希望をつかみとった。
方向さえ定かではない砂の大地、
救助は期待できない、
限りある食料に熱い日差し。
それでも、
絶望よりも、希望。

ときおり常軌を逸することがあっても、
彼らはマイペースで自分の仕事をこなしていた。

彼らは飛行機を作った。
それだけのことであるけれども、
それは紛れもなく彼らの力となる。
最悪の状況に陥ってもやりぬいたということが。