テーマ:映画館で観た映画(8561)
カテゴリ:フランス映画
激情のメロディが男の背中を撫でる。
そう、熱く熱く熱く、 背中を迸る声はまるで彼の想いの熱さのようで、 窓辺からパリの街を見渡していた彼は やっと、ベッドの彼女に声をかけた。 昨夜の情事を表すかのように、 二人とも真っ裸。 旅が、始まる。 ザノは恋人のナイマを旅に誘った。 彼の両親が捨てざるを得なかった故郷、 遠く、7000キロ離れた、アルジェリアへの旅。 徒歩と無賃乗車、 時には金を稼ぐため農園で働くことも。 通りすがりにさまざま人と出会う。 その土地で暮らす人、 その土地から離れていく人、 パリからアンダルシア、 船の乗り間違いでモロッコへ。 さまざまな場所で彼らの前に、 見えない「国境」が立ちはだかる。 パスポートの提示、抜け道、 まっすぐに目的地へ辿りつけはしない。 若い二人だからこそ、時には、 旅先で別の愛を見つけケンカもする。 やっと到着したアルジェリアは まだ地震の被害の傷跡が消えないままだ。 彼らがアルジェリア入ろうとすれば、 アルジェリアから去っていく人々の流れに出会う。 どこに境界があるというのか。 一つの国に 入っていく者と、 去りゆく者がいるのである。 ザノとナイマ。 戯れあい、愛し合いながら 確認するようにお互いの傷の所以を話す。 男の暴力の傷、幼い頃の事故の傷、 誰にも本当のことが言えない深い傷もある。 入っていく、 去っていく、 その度に人は何かをどこかに刻むように。 トニー・ガトリフ監督脚本作品。 奔流のような熱さが、 メロディのうねりとなり画面からも溢れている。 「音楽が宗教」 ザノがそんなことを言っていた。 迸るようなのだ、 ザノとナイマ、二人の胸の中、 探し求めるものの想いの熱さが。 ロマン・デュリスが魅力的にザノを演じ、 ルフナ・アザバルが奔放にナイマを演じている。 激情のメロディ。 故郷に出会うザノと 故郷を自分の傷に隠すナイマ。 一つの国に 入っていく者と去りゆく者がいる。 それでも生まれた場所は刻まれている。 そして、まだ ザノとナイマの旅は続いている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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