お兄ちゃんへ
あきらお兄ちゃん。こうして お便りを出すのは 初めてだね。お兄ちゃんの眠るお墓に 何度も何度も行ったんだよ。でも いつもいつも お兄ちゃんの彼女さんが居て私は 逃げるように 帰ってきちゃうの。弁解なんて出来ないから。。お兄ちゃん私はもう お兄ちゃんの歳を とっくに追い越しちゃった。お兄ちゃんは 私が幼稚園の頃から 守ってくれたよね。お兄ちゃんのお母さんが お弁当をたまに作ってくれた。小学校になってからは お兄ちゃんがこっそり私が 家でご飯が食べれない毎日を過ごしているのを知ってご飯を作ってくれて 近くの公園で継母に見つからないように こっそり食べたよね。お兄ちゃんだって 子供だったのにお兄ちゃんの作ってくれる おにぎりは とっても美味しかったよ。でも・・・お兄ちゃんのお母さんもお兄ちゃんも そのことを継母に見つかって大騒ぎになって お兄ちゃん 怒られたよね。大きくなっても お兄ちゃんはずっと私のお兄ちゃんだったよね。あの事件の後 お兄ちゃんだけに打ち明けてなにか 苦しい事辛い事があるたびにお兄ちゃんは 彼女そっちのけで 助けてくれたよね。あの日も 郵便ポストに入れられた あの事件の写真が 入れられていて私は 耐えられなくなってお兄ちゃんに電話をしたね。お兄ちゃんは 今すぐ行くから!そう言って 雨の中 バイクで 私の部屋へ向かってくれた。私は雨が嫌い。特に雷が鳴る時。あの事件のあった日3日間 私は 監禁され気が付いたら 林の中に 捨てられていた。はっきり覚えてる。明け方 空が少し明るくなった頃雨が降っていて 雷が大きな音を立てていた。だから 空が暗い夜から 明け方の薄明かりが差し込む時間雨の日雷が鳴る日私はいつも 怖がっていたよね。今でもね 怖いんだ。お兄ちゃんは 私からの電話で急いで 私の元に バイクで来ようとしてくれた。その道中の 事故。雨でアスファルトが濡れている中急いで私の元に駆け付けようとしたお兄ちゃんのバイクはタイヤがスリップしてお兄ちゃんはバイクから投げ出されて 後続の車にひかれちゃった。。お兄ちゃんのお母さんから連絡をもらって急いで 病院に駆け込んだ。お兄ちゃんは ベッドの上で包帯ぐるぐる巻きにされて顔しか見れなかったね。お兄ちゃんはいつものようにやさしい声で言ってくれた。(ごめんな。俺の代わりに守ってくれる奴がきっと居るから)そう一言私に言ってそのままお兄ちゃんは 3日間眠り続けたね。。そうして お兄ちゃんは 消えちゃった。。お兄ちゃんの最後のお別れの時私が行ったら 彼女さんが私に言ったんだ。あなたが 彼を殺したのよ!彼を返してよ!あなたが代わりに死んでよ!いつも 私の事より あなたの事ばかり考えてたのにあなたは彼を殺したのよ!あなたは 人殺しなんだよ!よく のこのこと 顔を出せたわね!そう言われて お焼香も出来ずに帰ってきちゃったの。その通りだと思ったから。私が雷が鳴るほどの 大雨の時にお兄ちゃんに 助けを求めたから。私が お兄ちゃんの命を奪った。私が 彼女さんから お兄ちゃんを奪ってしまった。ごめんね。お兄ちゃん。私知ってるんだ。お兄ちゃんは誰にも 彼女さんにさえ私が事件に巻き込まれた事を 内緒にしてた事。彼女さんに言っていれば 私を助けてくれるたびに彼女さんと 変な誤解で 喧嘩にならずに済んだのに。お兄ちゃんは 誰にも私の事件の事をばらさなかったんだよね。。ごめんね。お兄ちゃん。私ばかり 好きな道に進んじゃって。。でも今頃天国で 彼女さんと仲良くしているかな。。彼女さんには本当に申し訳ない事をしてしまったね。お兄ちゃんが消えちゃってから彼女さんは 統合失調症になって 自殺した。私に書置きを残して・・・。あなたを許さない。彼を殺したあなたを許さない。そう たった2行の 私への最後の遺書。私は彼女さんの ご両親からいっぱい責められた。彼女さんのお葬式に行ったときあの時 彼女さんから言われた言葉と同じようにお母さまから言われたの。あんたが 娘を追い詰めたのよ!娘を 返しなさいよ!人殺し!そう 私は2人の命を奪った人殺しなんだよね。ごめんね。おにいちゃん。私 お兄ちゃんに何も恩返し出来ないまま。。でも お兄ちゃん聞いて。お兄ちゃんが最後に私に言った言葉。(俺の代わりに守ってくれる奴がきっと居るから)お兄ちゃんが消えてから もう 6年。私 その人に今 出逢ったかもしれないの。いつも 守ってくれるの。お兄ちゃんみたいに。お兄ちゃん以上に。お兄ちゃん。私 幸せになってもいいのかなお兄ちゃんの命も彼女さんの命も奪った私は幸せになっても 良いのかな。。お兄ちゃん 教えて。。