レムリアからの転生旅行者

高尾（髙雄）に行った後、嵐山で食事し、午後8時頃には叡電元田中近くの優佳さんの下宿まで彼女を送ってから北白川の下宿に戻った一郎君でしたが、その時になって、ようやく今日の優佳さんの異常に気付きました。
彼女、今日デートしていた時も、半分意識がなかったことに。
何故今になって気付いたかですが、今日の午後も、全部ではなかったものの、一郎君が昨日のように優佳さんを無意識に操っていたからで、その時は一郎君自身気付かなかったのです。
心の直結状況というものは不思議なもので、昨日のように意識のない優佳さんを意図的に操る場合は、彼女の反応が返ってきませんから、当然一郎君の自覚があるのですが、今日は完全に意識が飛ぶまでは至りませんでしたから、一郎君が無意識に操っている優佳さんが半ば独り歩きしてしまっていて、操っていた一郎君の方が気付かなかったのです。
彼女の記憶が不確かだった件も、一郎君は神護寺の紅葉にはそれほど興味はなかったため、その時は無意識に優佳さんを操る方だけに頭を使っており、菖蒲谷池で優佳さんと遊んだ時だけは、半ば無意識に操っている優佳さんに水切りで負けたため、一郎君が自身の意識に集中し、優佳さんも完全に自分に戻っていたから、しっかり覚えていたのです。
しかし、他の時間は一郎君が大部分優佳さんと意識を同調させて操っていた分、彼女の意識が希薄だったのです。
つまり、一郎君は、自分と同時に優佳さんの行動もコントロールできてしまっていたのです。
こんなことって、あり得るのか。
昨日は、優佳さんが完全に意識を失っていたので、彼女の意識を乗っ取って意図的に操り、最後は彼女の中の自分の意識を強制終了させることで、彼女の意識を戻したのです。
つまり、優佳さんの行動と一郎君の意思のメリハリがはっきりしていたのですが、今日はそれが連続的に変化していったため、優佳さんだけでなく、操っている一郎君も気づきにくかったのです。
今頃優佳さんは、あれ、今日の午後は高尾に連れて行ってもらったはずなんだけど、あんまりよく覚えていないや、なんて気付いているのではないだろうか。
そう思うと、深刻な事態にもかかわらず、笑えて来てしまったのです。
明日も送っていくことになっているから、その時また聞いてみよう。
そう割り切ってさっと思考を切り替えた一郎君でした。

恋人である優佳さんの意識がおかしかったら一大事ですし、一郎君は真剣に心配すべきことなのだと思うのですが、この辺が、サヴァンのおかしなところで、彼にしても、その更に上を行った摩耶美紀子さんにしても、合理性が前面に出て、普通の人間の感情とずれた面があったのです。
そもそも一郎君、優佳さんとはセックスする気なしに付き合っているのですから、いくら優佳さん当人が要求したこととはいえ、その当人が同時に要求していた結婚前提の交際としては、最初から大きな矛盾があったのです。

ただ、普通の男性だったら、ナイスバディの優佳さんを前に、彼女の意思を尊重するからと、手も足も出さないで居られた方がおかしかったのだと思います。
サヴァンの予知で、優佳さんは自分がセックスする相手でも結婚する相手でもないと知りつつ交際している一郎君も、誠実とは言えません。
でも、彼は、優佳さんの希望には大変誠実に応えたのですから、変な関係だったとしか言いようがありません。

続く。

画像は、子ネコと一緒に母猫カメのお乳を吸っているトメコです。
トメコの下に1匹埋まっていますから、カメのお乳を吸っている猫が5匹いるのです。
子ネコ同士もじゃれて遊んでいます。