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テーマ:座敷童子(17)
カテゴリ:神話・伝説・哲学
ご飯を食べている部屋にある大きな鏡の中に座敷童様の姿が見えるといいことあると言われたカメ一郎、弟のカメ四郎と一緒に鏡を見ていました。
でも、いいことはありません。 それだけでなく、チロおばさまが死んでしまいました。 死ぬってどういうことなんだろうと思いながら、鏡をまた見ると、白装束の少女が見えました。 あつ、座敷童さまだ、いいことあるかなと思ったら、鏡の中から彼女は聞きました。 「何が望みだ。」 「うーん、チロおばさまが死んでしまったし、死ぬってどんなことかなあと思いながら、いいことが起きてくれないかなと思ったんです。」 すると、不気味にほほ笑んだ彼女は、更に聞きました。 「いいこととはなんだ。」 カメ一郎、思いつかなかったので、苦し紛れに答えました。 「うーん、みんなが幸せになることかな。」 「みんなが幸せになることがいいことなのか。」 取りあえず答えてみただけで、カメ一郎にもわかりませんでした。 「うーん、みんなが幸せならいいことだと思うけどなあ。そういえば、弟のカメ四郎も、座敷童さまを見たんでしょう。」 カメ一郎、弟から、鏡の中に白い服を着た女の子が見えたと聞いたことがありました。 「見たけど、あいつは逃げたぞ。」 「えっ、いいことあるって言ってたの、カメ四郎だったのに。」 彼女はにたりと笑いました。 「そのいいことが怖かったのだろう。」 「えっ、いいことって怖いことなの。」 「そうだな。考え方次第だな。彼が逃げたのは、賢明でもある。」 カメ一郎、考え込みました。 「えーっ、逃げたらいいことあるとは思えないけどなあ。」 「じゃあ、カメ四郎を連れておいで。」 「連れてきたら、いいことあるの。」 「私とずっと一緒に居られるようにはできる。」 それならきっといいことなんだろうと、カメ一郎は思いましたが、朝夕の食事の後しか、座敷童さまの鏡の前には行けません。 「でも、なかなかカメ四郎をこの鏡の前に連れてくることはできません。」 すると、座敷童さまは別の方法を教えてくれた。 「鏡の前でなくても、水の表を見てもいいぞ。お前たちの主人は、ガス台の前に飲み水を準備してくれているだろう。」 そう、ご主人様が毎食時、大きなお椀にお水を入れてくれるのです。それならできそうなので、カメ一郎、食後にカメ四郎を誘って水を飲みに行きました。 カメ一郎が、水の表面を見てごらんというのでカメ四郎が水面を覗くと、座敷童さまが見えました。 「怖い。」 カメ四郎は、座敷童さまを怖がっていました。 「何も怖がることはない。今日は兄貴のカメ一郎も一緒ではないか。」 座敷童さまに声をかけられると、確かに今は怖くありませんでした。 「うーん、今は怖くないけど、座敷童さまの「いいこと」は怖い。」 「私と一緒に居られることは、決して怖いことではないだろう。」 座敷童さまは、カメ四郎にずっと自分と一緒にいることがいいことだと言ったのです。 「でも、座敷童さまとずっと一緒にいることは、ご主人様や奥様とは二度と会えなくなることなのでしょう。」 カメ四郎は、座敷童さまにそう言われていましたし、ご主人の一郎さまとはずっと一緒に居たかったのです。 「所詮、私と人間とでは、時の次元が違うのだ。」 そんなことを言われても、さっぱり訳が分かりません。 「座敷童さまと一緒にいられることは、本当にいいことなのですか。」 カメ一郎が聞くと、座敷童様はにっこり笑いました。 「そう。お腹が空いたなあとか、トイレが汚いなあとか、悩まずに済む。ご主人の奥方に、「お前なんか拾うんじゃなかった。」とこぼされたり、リン君みたいに、「悪いことをするリンなんて、福島に帰ってしまえ。」と怒鳴られたり、ニャーン君みたいに、「こんなところにおしっこするような悪い奴は死んじまえ。」とか叱られることもない。」 でも、ご主人の一郎さんはちゃんと餌をくれますし、罵声を浴びせることもありませんから、カメ四郎は彼が大好きでした。 「でも、ご主人はそんなこと言わないし、とっても優しいから、ずっと一緒に居たい。」 すると、座敷童さまは、怖いことを言いました。 「お前の主人は、お前より先に死ぬぞ。つまり、一緒に居られなくなる。それでもいいのか。」 ご主人と別れることは、辛いし、嫌でした。 「それは嫌だなあ。」 「私と一緒に来れば、ずっと何もしないで遊んでいられる。」 それがいいことなのか、カメ一郎もカメ四郎もよくわかりませんでした。 「それって、いいことなのですか。」 カメ一郎が聞くと、座敷童様は自信たっぷりに答えました。 「時を忘れることができる。お前たちのご主人さま、いや、全ての人間、いや、全ての生き物にとって、時を忘れていられることよりもいいことはないぞ。」 カメ一郎、別のことを確かめてみました。 「今の仲間たち、そう、ミトラおじいさまや、リンおじさま、アカネお姉さまと別れるのは、いや、誰よりも、カメお母様と別れるのはいいこととは思えません。」 すると、不気味に笑いながら、座敷童様は提案しました。 「それでは、21匹の仲間たち全員一緒ならどうだ。」 カメ一郎もカメ四郎も、それならいいと思えました。 21匹みんなで座敷童さまと一緒に時を忘れていられるなら、確かにいいことでしょう。 「それならいい。カメ四郎はどうだ。」 「うーん、兄さんがいいと思うなら、いいよ。みんな一緒に座敷童さまといられるなら。」 弟も同意したので、カメ一郎は聞きました。 「カメ四郎もいいというなら、座敷童さまと一緒に行きたいと思いますが、どうすればいいのですか。」 座敷童さま、少し考えてから答えました。 「新入りのシロチャの兄貴を呼んでおいで。」 この家に拾われて半年もたっていないシロチャは、座敷童さまのお話は信じていませんでしたから、文句を言いながら飲み水の前に来ました。 「なんだい、カメ一郎。おや、確かに水の中に女の子がいる。へえ、あなたが座敷童さまなんだ。じゃあ、いいことあるのかな。」 座敷童さま、シロチャに、カメ一郎に提案したように、主人とはお別れだが、21匹そろって自分のところに来て時を忘れて楽しく過ごさないかと持ちかけました。 「へえ、そんなことできるのかな。それなら、今日の飯は遅いとか、トイレが汚くて入れないとか、心配しないでいいってことなのかい。」 「そうだ。カメ四郎一匹だけに声をかけたら、主人と別れるのは辛いからと逃げられた。カメ一郎を誘って、カメ四郎にどうなったら私のところに来るかと聞いたら、21匹一緒ならいいと言うから、シロチャ、お前も誘ったのだ。」 ということは、自分だけでなく、ミトラおじじも、ニャチばあちゃんも、ポンばあも、自分と一緒に拾われたサビ姉も一緒に居られることになります。 「ふーん、魅力的だな。でも、ご主人さまとはお別れなんだ。」 「お前たちのご主人は、確かにいい人かもしれないが、カメ四郎に話したように、お前の方が長生きするぞ。ご主人がいなくなって、奥方だけになったら、どうだ。」 シロチャは即答しました。 「それは怖い。それなら、座敷童さまと居られる方がいい。」 シロチャも同意したので、座敷童様は、どうすれば自分のところに来ることができるのか、教えることにしました。 続く。 画像は、カメと子供4匹、カメ一郎カメ二郎カメ三郎カメ四郎です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 15, 2020 09:26:25 PM
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