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Mizumizuのライフスタイル・ブログ

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Figure Skating(2009-2010)

2010.04.04
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カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

現在のジャッジングシステムで、ファンが強く反発しているのは、演技審判の匿名性だ。もちろん、参加した演技審判の名前は公表されてはいるが、誰がどんなGOEおよび演技構成点をつけたのかわからないようになっている。

プロトコルを見ると、明らかにおかしなGOEをつけているジャッジがいる。これは誰なのか。公開されないのは不当だし、この匿名性がジャッジの裏取引を助長しているのではないか。ファンの不満は、おおむねこのように集約できると思う。

逆にISUとすれば、匿名にすることで、圧力に関係なくジャッジが仕事ができ、かつ時に暴走するファンからの過激な批判からジャッジを守ることになると考えているのだと思う(たぶん)。

基本的にMizumizuは、演技審判がどんな点を出したかを秘匿にしてしまうなどナンセンスだと思うし、こうして隠してしまうことで仕事がいい加減になり、かつファンの不信感を増長させていると思っている。

だが、匿名性の廃止を率先してやるべきだと考えているかと問われれば、答えはノーだ。それは、むしろ後から議論してもいい。

優先順位から考えれば、もっと深刻な問題がある。それは「ランダム抽出」。演技審判は最大12人が参加することになっていたが、コストカットのために人数が減らされ、現在では格式の高い試合でも、演技審判として9人が参加するだけになっている。そこで、最高点と最低点がカットされ(いわゆる、上下カット)、さらにランダムに2人の審判の点がはじかれることになっている。

つまり、実質5人の点で順位が決まることになる。ハッキリ言って、これは相当にまずい。ヒューマンエラーや、ジャッジ間の裏取引を防ぐために多人数でジャッジングをするのが新採点システムの理念でもあった。このジャッジ人数を減らす案がチンクワンタ会長の口から出たとき、旧採点システム時代にオリンピックのジャッジを務めた経験をもつソニア・ビアンケッティさんは、強烈に反発していた。

彼女の主張は、「ジャッジの人数を減らしてはいけない。ランダムカットはやめるべき。匿名性は即刻廃止。ジャッジ間での点の調整をしたり、後からジャッジによるジャッジ評価をしてはいけない(そのかわり名前を出して、責任をもってやるべき)」だということだった。

実際に、ジャッジの人数が減ってから、採点は変に「投げやり」になってきた。信じられないような大差がついても平気。試合によって上げ下げがあっても知らんふり。GOEや演技構成点は、試合を見ずに実績を見て出してるのでは? と思えるような出方。それと露骨な「ホーム・アウェイ方式」。たとえば試合開催地がヨーロッパなら、たぶんメダルは1つはヨーロッパ選手に行くだろう・・・と思ったら、ちゃんとジュベールとレピストに行った。

もちろん彼らがいい演技で期待(?)に応えたのは事実だが、レピスト選手のフリーには、なんとなんと3回転がトゥループ(2回)とルッツしか入っていない。

http://www.isuresults.com/results/wc2010/wc10_Ladies_FS_Scores.pdf

「ジャンプの難度を落として、ミスなくきれいにまとめれば、(そこで勝たせたい選手が)メダル」というMizumizuが昨年のロス選手権で予想したことが、ヨーロッパでまた現実になってしまった。

ヨーロッパではフィギュアの人気はすでに風前の灯火なのだ。ISUとしては、なんとか「スター選手」を作って盛り上げたいのだろう。オリンピックのフリーでレピスト選手がいい演技をした「実績点」で、メダル仕分けはヨーロッパ選手権女王のコストナーではなく、レピスト選手のほうに行ったのかもしれない。

レピスト選手の強みは、トリプルトゥループ+トリプルトゥループ。なかなか決まらないのが玉にキズだが、今回はホームのヨーロッパ。メダルのチャンスがあるとわかっていて張り切ったのか、きっちりきれいに決めて、ショートでは加点1.6点をもらい9.6点という点をい稼いだ。苦手のルッツやフリップはショートからはずしている。

一方で、長洲選手は非常に難しいトリプルルッツ+トリプルトゥループを跳んだのに、お約束のダウングレードで基礎点が10点から7.3点に減らされ、さらにGOEでも減点されて6.7点にしかならなかった。

http://www.isuresults.com/results/wc2010/wc10_Ladies_SP_Scores.pdf

3回転を2種類しか入れないのに、メダルまで来てしまうなど、旧採点システムの後期にはなかったことだし、これはやはり、好ましいことではないと思う。

それもこれも苛烈なダウングレード判定が影にある。ほとんどちゃんと降りても、回転不足とスペシャリストが判断すれば、2回転のほうがマシな点になってしまう。それならば、苦手な3回転ははずして、2回転で無難にまとめたほうがいい。

実際には、無難にまとめても点が出ないこともある。だが、「ホーム」なら出る。それがわかっているのか、ヨーロッパ選手は北米・アジアでは露骨に力の入っていない試合をする。「どうせ頑張ったって、ここでは私の点は出ないでしょ」といわんばかりだ。

ダウングレード判定は、このようにジャンプの完成度を高めるのに役立つどころか、選手に苦手なジャンプを避けさせ、バランスよくジャンプを跳ぶ力を劣化させることにせっせと貢献しているのだ。

これはどのジャッジがどんなGOEをつけるかなどということよりもずっと深刻な問題だ。匿名性は廃止すべきだが、それは最優先の課題ではない。

もしやるとしたらランダムカットを中止するほうが先だ。ある選手に対して、7.5点の点をつけたジャッジの点が拾われるか、8.5点の点をつけたジャッジの点が拾われるかで、順位が変わってしまう・・・というようなこともありえる。多くのファンは上位選手しか見ていないが、中位から下位選手の間では、実際にそういう「運」による順位差は、すでに当然出ていると思う。これでは競技会なのかギャンブルなのか、わからない。

対して、匿名性はルールの根幹にかかわるほどの案件ではない。GOEで基礎点をないがしろにできるような加点がつく、あるいはちょっと失敗すると高難度のジャンプを跳んでも意味がなくなってしまうような減点をされる、という本末転倒な現象を、ダブルアクセル以上のジャンプのGOEの加点・減点割合を抑制することで防いでしまえば、誰がどんなGOEをつけたかなどということは、たいした問題ではなくなるはずだ。

トリプルアクセル以上のジャンプの基礎点を、2回転ジャンプの基礎点と一緒に上げる。そしてジャンプのGOEの反映割合を過小に抑える。

これが、ダウングレード判定に次いで重要なこと。

どちらも、すべての選手のためになり、バランスのよいジャンプ力の向上にもつながり、十分に理論武装ができる。同時にジャンプ以外のエレメンツの基礎点を上げれば、ジャンプ大会になることも(おそらく、ある程度は)防げるはずだ。

トリプルアクセルをショートに入れられるようにするとか、ボーナス点をつけるとか、そんなエゴイスティック――にしか見えないうえに、浅田選手に本当に有利になるかどうかわからないような改正案を持ち込むより、よっぽど優先して各国に働きかけるべき事柄だと思う。

世界選手権でジュニア、シニアとも完全制覇という偉業をなしとげた国だからこそ、ルール全体を見渡して、「バランスのよいジャンプを跳ぶ力」をつけるよう選手をうながす改定を行い(ダウングレード判定の廃止もしくは緩和――2分の1以上の回転不足、つまり途中で回転が終わってしまったような明らかな回転不足ジャンプにのみ適用するというように)、「高難度ジャンプへの挑戦」を過度にリスキーなものにしている現状を変え(ダブルアクセル以上のGOEの反映割合を過小にする)、同時に基礎点狙いの無謀な挑戦は防ぎ(4Tを回り切って転倒すれば3Tと同等の点になるなど意味不明だ。ジャンプは立ってナンボなのだ。転倒は回りきっていようがいまいが0点。ややこしい減点をする必要はない)、「ヒューマンエラーや恣意的採点」がなるたけ点数に影響しないよう、客観的で公平で、かつわかりやすいルールを再構築していくという強い意志を示すことが大事だ。

そして、むしろ・・・ジャッジの問題は、実は「ジャッジの待遇に悪さ」に原因があるのでは、というのがMizumizuの考えだ。

多少理想論になるが、ここまで難しい判定や、こまかな採点をさせる以上、本当ならもっと厚遇すべきなのだ。

ところが今は、ジャッジは派遣社員扱い。誰が実際に試合のジャッジングをするのかも、くじ引きで決まり、権威のカケラもない。

ボランティア同然の安い報酬でやっているのだから、ファンはジャッジを尊敬しろ、などと言う人がいるが、それこそ本末転倒だ。

報酬も安く、地位も低いからこそ、力のある誰かの意向にそって「えこひいき」をしたり、実際の競技をロクに見ずに、無難な実績点をトレースしたりするのではないだろうか? そう取るのが、むしろ世間の常識だと思うが。

 

 







最終更新日  2010.04.05 11:53:23


2010.04.03
カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

<続き> 

演技構成点での「上げ」「下げ」は、ルールで規制するのは難しい。だが、1ついえることは、9点が妥当か8点が妥当かという話ではなく、「選手間にあまり差をつけるのは、妥当ではない」ということだ。

つまり、世界トップの選手に対して、9.5点をつけようと9点をつけようと、そのこと自体に問題はない。問題は2位以下の選手に対して、どのくらいの差をつけるか。

一番よい選手に9.5点出したジャッジが、次に9.25点、次に9点と出すのなら、さほど問題はないのだ。むしろ、一番に9点をつけ、次に8.5点、次に7.75点とつけるジャッジのほうが問題がある。

基本的にジャッジができるのは、選手間の優劣をつけることだけなのだ。それを点数化することにそもそも矛盾があるが、そこで「理由のない差」を広げていくことで、採点は恣意性が高まってしまう。

現在0.25点刻みの演技構成点を0.1点刻みにして、かつ上位10人程度(人数はもう少し増やしてもかまわない。フリーの2つのグループに相当する数でもいい)の選手間にジャッジがつけられる「点差」を、もう少し狭く規定するという手もあるかもしれない。

そうすれば、ジャッジは0.1点刻みで、「差」はつけられるが、「大差」をつけられない。

もう1つ、諸悪の根源、ダングレード判定。

これについては、撤廃の方向で動く必要がある。

ダウングレード判定の問題は2つ。

点数が下がりすぎること。それと、判定に甘い辛いがあり、見逃しも起こりがちだということ。

人間が判定する以上、間違いは起こるが、女子の場合、ダウングレード判定があるなしで勝負が決まってしまうこともある。それだけ責任の重い判定であるにもかかわらず、試合によって、ジャッジによって、判定があまりに違いすぎる。

しょせん、4分の1以上の回転不足かどうかを、人間が判定するのは無理だったのだ。

回転不足は多いに考慮すべきだ。だが、それはGOEでやればいい。そもそも回転不足は、「質のわるいジャンプ」なのだから。

中間点などという新しい概念を持ち込むのは、まったく不合理だ。3回転ジャンプの回転不足が2回転と3回転の中間のジャンプだというのなら、その質は一体どう判断するのか。GOEの意味がなくなってしまう。

回転不足は質の悪いジャンプ、だからGOEで減点する。このシンプルかつ当然な原則に立ち返るよう、時間をかけてもISUを説得すべき。

説得するためには、現状のスペシャリストの回転不足の判断が、いかにばらばらか、きっちり試合後に検討する時間を設けるべきだ。トップ選手のフリーだけでもいい。今回のワールドだったら、浅田・キム・レピスト・安藤・コストナー・長洲選手あたりだけでもいい。回転不足が見逃されていないか。逆に足りていると認定していいジャンプが落とされていないか。

それは、公平性を担保し、向上させることにもなる。もし、すぐに撤廃できないのなら、「4分の1」という現在の規定を、途中で回転が終わってしまったような、誰にでもわかる回転不足、すなわち「2分の1」にまずは改定するという手もある。この「2分の1以上」規定はすでにコーチからも一案として出されている。中間点など筋のとおらない新しい概念を導入しては、ダメだ。

ダングレード判定の問題については、とっくにこちらのエントリーで指摘したが、広く認知されたのは昨シーズンのNHK杯で、浅田選手のほぼ問題なく見えるトリプルアクセルがダウングレードされたときかもしれない。これも昨日や今日起こった問題ではない。時間をかけて徐々に暴走し、今や歯止めがかからなくなっている状態なのだ。一番まずいのは、女子の3回転というのがそもそもギリギリにやりやすく、それゆえ、微妙なものを取ったり取らなかったりすることで、落としたい選手の点を落とし、落としたくない選手の点を落とさないようにしているように見えることだ。

そもそもジャッジとは裁判官だ。一定の基準を遵守すべきジャッジの判定が、こうも試合によって違い、同じ試合でもジャンプによって違うのに、「今回は厳しいジャッジでしたね」で済ませられるセンスがわからない。女子の場合は特に、ダウングレード判定は、勝敗にも大きくかかわってくるのに、こんないい加減なことで、なぜ内部の人間は気分が悪くないのか。

誰かをつるし上げるためではなく、より公平なジャッジングがなされるよう促すという意味でも、ダウングレード判定に対する検証は、必ず行うべきだと思う。

恣意的操作があるかどうかは問題ではない。あるにせよ、ないにせよ、できにくくするルールにする必要がある。

浅田真央を勝たせるためのルールなんか、提案しなくて結構だ。マトモに試合をすれば、浅田選手に勝てる女子などいないのだ。浅田選手は最初に世界女王になったときは、3Aで転倒している。今回は3Aは1度だけの認定。あとの2つはダブルアクセル扱いだ。それでも世界一の点を取った。

加点で基礎点がないがしろにされるような主観的な点付けではなく、あくまで難度に応じた客観点を柱にし、そこに質の評価を「加味」する。これこそ日本が提案すべき、ルールの基本方針だと思う。

基本的に日本人は、「自国の選手が勝てば満足する」国民ではない。あるボクシングの試合で、自国で自国の選手が判定勝ちしたときに、多くのファンは公平さに欠けていると憤ったではないか。

今、フィギュアファンが採点に対して怒っているのは、自国の選手が負けているからといより、採点があまりに不公平で、特定の選手を勝たせるために、無理矢理操作しているように見えるからだ。

さまざまな「採点テクニック」で長洲選手が落とされているのを見るのは、実に気分が悪い。同時に、なにかしらの思惑で、高橋選手が上がってきているように思えるプロトコルを見せられるのも、不快そのものだ。別にバンクーバーオリンピックの金メダリストを上回る今季最高点をいただかなくたって、今回のワールドで高橋選手ほど王者にふわさしい演技をした選手は他にいないのだから、それだけでもう十分だ。

長洲選手は、浅田選手に匹敵する能力をもった選手だ。ローリー・ニコルの振付に、あれほどの若々しいダイナミズムを持ち込むのは、浅田選手にだってできなかった。もちろん、浅田選手には浅田選手にしか表現できないものがある。この2人は、もっと競い合ってしかるべき選手だ。

誰もが公平に感じる試合というのは難しいかもしれないが、ある程度、客観性が担保された基準のもとで、たとえ浅田選手が長洲選手に負けたって、誰も今ほどのストレスは感じないはずだ。







最終更新日  2010.04.04 23:51:45
2010.04.02
カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

オリンピックでトリプルアクセルや4回転の基礎点の低さがクローズアップされ、そこだけに注目が集まっている感があるが、実際には、トリプルアクセル以上のジャンプの基礎点は、一度引き上げられている。

http://www.geocities.jp/judging_system/

こちらに詳しいジャンプの配点が書いてあるが、2008年度以降

3A 基礎点 7.2点→8.2点

4T 基礎点 9点→9.8点

だが、よく見ていただくと、同時に非常に「嫌らしい改定」もなされているのがわかると思う。それは、GOEの加点・減点の反映割合。

それまで減点・加点はジャッジがマイナス3からプラス3までつけたものが、そのまま反映されていたのに、基礎点が引き上げられると同時に、減点の反映割合が増やされている。

つまり、たとえば4Tの場合、ジャッジがマイナス1とつけた場合はマイナス1.6点減点になるというように、失敗したときのリスクを大きくしたということなのだ。

トリプルアクセル以上の超高難度ジャンプには、それだけで転倒→ケガの危険性がつきまとう。高難度のジャンプに挑むということは、それだけで身体的リスクを背負うということ。それだけで選手にはプレッシャーだ。

にもかかわらず、減点されれば、過剰に反映され大幅に点が下がってしまう。高難度ジャンプへの挑戦を逆にはばむ改正と言っていい。

実際に、基礎点が上がって以降、逆にジャンパーはどんどん勝てなくなってきているのだ。今回のバンクーバー五輪で、それが決定的になった。

それは一言で言えば、主観点である加点・減点および演技構成点のマジック。

GOEの加点を積極的につけるというのは、ジャンプ以外の要素では、基本的に好ましいと思っている。

以前ジャン選手のパールスピンが、キム選手のレイバックスピンとたった0.5点差しかついていないことに疑問を呈したことがあるが、ジャン選手、それに長洲選手の見せるパールスピンなどの独創的な技は、もっと評価されていいし、次第にそうなってきている。

http://www.geocities.jp/judging_system/

こちらにスピンやステップなどの配点もあるが、レベル4を取らなければ、加点でたとえ「3」をジャッジがつけても、3点として反映されない。レベル3ならば、ジャッジが加点で3をつけても実際には1.5点プラスにしかならないのだ。

ジャンプ以外の要素を重視したトータルパッケージでの評価を・・・と、言いながらレベル認定で4を取らなければ加点割合が過小なままというのは、まだかなりハードルの高い設定だ。

今シーズンはステップのレベル認定に不可解さを感じた。最初はステップのレベル4はほとんど出なかったのが、年明け以降はかなり出た。レベル3とレベル4で加点の反映割合が違う現状では、微妙な判定によってずいぶん点が違うということで、好ましくないように思う。

もし、ジャンプ以外の要素を重視するというなら、ステップやスピンなどのレベル認定が3でも、反映割合をレベル4並みにするという手もあるが、むしろ基礎点をあげて(レベル3と4を近い点にし、かつどちらでも3回転ジャンプ1つ分になる程度に)、レベル4のGOE反映割合を抑え、同時に3回転ジャンプのGOE反映割合を抑えるほうが整合性があるのかな、とも思う。つまり、スペシャリストの判断で、あまり極端な差がつかないように設定するということだ。

ジャンプ以外のエレメンツの得点の出し方にはいろいろ考え方があり、どれをとっても、そもそも数が少ないので大差はないのだが、むしろ今問題なのは、ダブルアクセル以上のジャンプの基礎点に対する加点の反映割合が、その他の要素の反映割合に比べると過剰であるということだと思う。

たとえば、キム選手はフリーでダブルアクセルを3つ入れ、苦手のトリプルループを入れていない。ダブルアクセルで「なぜか」気前のいい加点をもらえるので、点数はトリプルループに近い得点を得てしまう。

ダブルアクセルは基礎点も高く、加点の反映割合も過小におさえられている2回転ジャンプと違い、3回転ジャンプ並みになっている。

http://www.geocities.jp/judging_system/

こちらの「ジャンプの配点」を再度参照ください。

にもかかわらず、フリーでは3度入れることができる。3回転ジャンプ並みの扱いなのだから、挿入回数は2度に抑えるほうが適当だし、それによって、ジャンプの偏りがなくなり、バランスよく多種類のジャンプをフリーに挿入するよう選手にうながす効果もあるはずだ。

トリプルアクセル+ダブルトゥループがトリプルルッツ+トリプルループよりも基礎点が低いことに対して、海外の解説者が疑問を投げかけていたが、それは連続ジャンプが単純な足し算であることに原因がある。しかも、連続ジャンプでセカンドに2回転を入れた場合、その基礎点が2トゥループなら1.3点しかないのに、GOEでもし減点されるとなると、マイナス2がつけば、そのままの反映割合となり(連続ジャンプなので、3回転以上の反映割合が適応される)、逆に2トゥループをつけないほうがよかったような点になってしまうこともある。

つまり、連続ジャンプの失敗は多くの場合、セカンドがまずいために起こるのに、2回転のセカンドの失敗に対して、3回転以上のジャンプの失敗の減点割合が反映されてしまうということだ。

こうした矛盾は、連続ジャンプを単純な足し算とせず、なにかしらの調整を加えることでも解決できるが、むしろ、2回転ジャンプとトリプルアアクセル以上のジャンプの基礎点を少しあげ、かつ加点・減点の反映割合をダブルアクセル以上のジャンプでも、もう少し過小にすることで解決できるように思う。

今の採点の問題点は、加点・減点によって、客観的基準として定めたジャンプの基礎点がないがしろになってしまっている点。そこに「操作」が可能である点にある。

トリプルアクセル以上のジャンプの基礎点のことばかり言われるが、今の現状では、2回転ジャンプの基礎点が非常に低く、加点をもらっても3回転以上のジャンプの点にならないため、レベルの低い選手が、無理に3回転を跳ぼうとすることが多い。

たとえばダブルルッツにジャッジが加点3をつけたとしても、1.9点の基礎点に1.5点の加点が反映されるだけで、3.4点にしかならない。これがトリプルトゥループだと4点もらえる。

そうなると、踏み切りのエッジを含めて、ジャンプの跳び方を固めるべき時期に、無理に3回転ジャンプに挑戦しようとばかりして、基礎がおろそかになる可能性が高い。

ルールは、すべての選手の基礎力のアップに貢献しなければいけない。むしろ2回転ジャンプの基礎点を少し上げて、加点がもらえれば3回転ジャンプに「近い点」がでるようにし、同時にトリプルアクセル以上の、「世界でもトップクラスの選手しか跳べない」技に関しても基礎点をあげ、かつ3回転以上のジャンプの加点・減点の「反映割合」を2回転ジャンプ並みか、それより少し反映割合が多い程度に抑制して、基礎点で上のジャンプをあまり凌駕することのないように設定する。

こうすれば、たとえジャッジが、恣意的な理由で加点を大判振る舞いしても、ジャンプの点がむやみにインフレすることはなくなる。

質は大いに評価すべきだが、その反映割合を今よりも過小にする。そのことで、高難度ジャンプへの挑戦も自然にうながされることになり、かつジャンプの得点の客観性も担保されることになるはずだ。

ある少数のジャッジが失敗ジャンプに加点「2」をつけても、その反映割合が抑制されて「1点」にしかならないということであれば、ジャッジの恣意的操作を、防ぐことはできないにしても、点数上抑制させる効果をもつ。

同時に、トリプルアクセル以上のジャンプの減点の過剰な反映割合も、過小に変更すべきだ。高難度ジャンプへの挑戦を奨励し、ジャンプの技術を向上させる方向に行くなら、今のようなジャンパー罰ゲームは好ましくない。

そうすると、やたらとトリプルアクセルに挑戦する選手が出てくる・・・という人がいるかもしれない。だが、トリプルアクセル以上のジャンプは、転倒せずに降りることさえ難しい。今の採点の問題点は、認定されてしまえば、転倒ジャンプであっても、点になったり、逆にマイナス点になったりすることだ。

認定するかしないかではなく、転倒ジャンプは一律に0点とする。そうすれば、無謀なトリプルアクセル挑戦で基礎点を稼ごうとする選手はいなくなるはずだ。そもそも今、基礎点狙いで3Aや4Tに挑戦している選手はいないだろう。みな、自分の限界に挑戦している。トリプルアクセル以上の高難度ジャンプはそうした技だ。

むしろ、レベルの低い選手が、基礎点狙いで3回転を跳ぶほうが問題だ。

日本スケート連盟も、トリプルアクセルの基礎点アップとかボーナス点とか、「浅田選手1人のためにルールを変えようとしている」と突っ込まれることがわかっているような手法ではなく、もっと理論武装のできる、かつ選手全体のためになる改定案を出すべきだ。

数の多いヨーロッパ諸国の選手にとっては、キム選手が強かろうが浅田選手が強かろうが、自分たちに勝ち目がないことでは同じ。

「浅田選手が、あれほど難しいことをして勝てないのはおかしい」(オリンピック後の強化部長の言葉)は、そのとおりだが、ルールは政治、政治は数、多くの国が不満に思っていることをすくい上げなければ、数は集まらない。

世界選手権で、世界中を呆れさせたキム選手の高得点は、どこから来ているのか? 成功ジャンプへの過剰な加点と高めに設定された演技構成点からだ。これについては、アメリカ女子も不満をもっているはずだ。

そこをすくいあげて、賛同してくれる国を増やすべきであって、現状女子では浅田選手しか跳べないトリプルアクセルばかりをクローズアップしてルール改正を提案するのは、厳に慎むべきことだ。

キム選手はエレメンツの完成度が高いから高得点だという話は、ショートでエレメンツそのものが抜けてしまっても、エレメンツをきちんとこなしたフラット選手とほぼ同じ点が出たことで説得性を欠くことになった。フリーでは、ジャンプの転倒とパンクで演技の流れとが止まり、見た目の印象が悪かったにもかかわらずフリーだけでは1位という点が出て、「全体の完成度が高得点につながる」という説明も、結局後付けの辻褄合わせだということが逆に素人目にもわかってしまった。

ファンに対して、「あなたは素人。ジャッジはプロ。採点の批判なんかせず、気楽に楽しみなさいよ」などと言っても、採点競技でそれは無理というもの。黒を白と言い含めようとしつづけたことが、今回のブーイングが飛び交うワールド(しかも、日本のテレビでは、ブーイングの音が抑えられていた)につながったということを、ジャッジもISU幹部も真摯に受け止めるべきだ。







最終更新日  2010.04.04 02:06:11
2010.03.31
カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

「最強日本女子」を徹底的にコケにするような度重なるルール改正と偏向採点。

これを打破すべく、日本スケ連が動き出した・・・かのような動きが新聞で伝えられ、浅田選手のファンには、「ようやく・・・」と好意的に受け止められているようだ。

フィギュアスケートの女子ショートプログラム(SP)で必須となっているダブルアクセル(2回転半)をトリプルアクセル(3回転半)でも認められるようにするルール変更を、日本スケート連盟が6月の国際スケート連盟(ISU)総会(バルセロナ)で提案することが29日までに分かった。現在、女子でただ一人トリプルアクセルを跳ぶ浅田真央(中京大)に有利に働く可能性がある。
 日本連盟の吉岡伸彦フィギュア強化部長は「(3回転半が)できる選手がいる以上、認めるべきだ。(得点が上がる)可能性が広がる」と話した。男子SPでは、アクセルジャンプは「2回転半か3回転半」と選択が可能になっている。
 世界選手権で2年ぶりに優勝した浅田は、SPでは連続ジャンプの中でトリプルアクセルを跳んだ。ルール変更が認められれば、ジャンプの選択の幅が広がることになる。

この変更が浅田選手にとってどう有利になるのかわからない方のために、一応説明しておくと、現在浅田選手のショートプログラムは、

(1)トリプルアクセル+ダブルトゥループ

(2)ステップからのトリプルフリップ

(3)ダブルアクセル

で基礎点の合計は、18.5点になっている。この(3)の部分を「ダブルアクセルもしくはトリプルアクセル」と男子並みにすると、浅田選手のジャンプの選択肢は以下のように広がってくる。

(1)トリプルフリップ+トリプルループ(もしくはトリプルトゥループ)

(2)ステップからのトリプルルッツ

(3)トリプルアクセル

もちろん、ジャンプの順番は任意。これによって基礎点は24.7点もしくは23.7点に上がる。

浅田選手には非常に有利、に見えるかもしれない。日本スケート連盟が提出するという改正案がこれだけなのかどうかよくわからないのだが、もしこの改正案を最重要と考えて活動するというなら、実にヘタクソな戦略だ。

ルール改正を提案するときには、2つの視点が必要だ。

(1)その改正が、選手全体のためになり、フィギュアの技術向上のきっかけとなりうるか。

(2)自国の選手に不利にならないか。

(1)はルール策定をするうえで、なにより大切なものだ。実際には(2)の思惑と絡み合っているが、「すべての選手のため」「フィギュアの将来のため」という理論武装ができなければ、単に「自国の選手を有利にしようとして、ルールを改正しようとしている」と、攻撃されることになる。

ショートに2Aだけでなく3Aも、という改正案は(1)の面で少し弱いように思う。高難度ジャンプへの挑戦を奨励し、男子並みのレベルに揃えるという意味では、筋はとおっているのだが、世界の女子を眺めると、3Aを安定して跳べるのは浅田選手だけ。

浅田選手の3Aが安定してきたこの時期に、日本がこの改正案を出したら、「浅田選手に勝たせようとしてルール改正を提案しているエゴイスチックな国」だと(特に韓国あたりから)クレームがつきそうだ。

こうした「攻撃」に日本人は非常に弱く、理論武装して粘る根性と精神力に欠けている。反論されると、すぐにひるんでしまう。

現状、ショートでキム選手と浅田選手がめいっぱいの演技をして、それで点差が5点だ7点だとつくから、基礎点をあげて対抗しようとしているのなら、それは過去に書いたように愚かなことだ。浅田選手が基礎点を上げれば上げるほど、キム選手の加点と演技構成点はインフレする。それが過去の流れではないか。

だから、たとえ基礎点が5~6点上がったとしても、加点および演技構成点で操作可能な今の採点の流れから言うと、すべてのジャンプを降りたとしても、加点がもらえない、演技構成点が低く抑えられるなどのもろもろの「採点操作テクニック」で、キム選手を含む他の選手に差をつけることができなくなる可能性のほうが高い。

それは、男子のショートの点の出具合を見れば予想がつくことだ。高橋選手にあるのは3F+3Tだけ(しかも、最近はセカンドジャンプの流れがやたら止まって・・・ゴホゴホゴホ)。少し前までは、ショートで4T+3Tを決めてくる選手の上にはいけなかった。ところがオリンピックでああした採点(他のエレメンツに対して、質のよいものを積極的に評価する)がなされ、世界選手権では、ショートで4+3を決めたジュベールの上に来た。

ジャンプの加点も難しいジャンプになればなるほど付きにくくなり、失敗したときの減点割合も大きく設定されているから、ジャンパーにとってはプレッシャーも大きく、それだけのリスクをしょって、世界でもほとんど跳べる人のいないコンビネーションを跳んでも報われなくなっている。

そうした状況のなかで、高難度ジャンプを入れられるようにルール改正することに、どれほどの意味があるのか。ルールの根源的な問題点はそこにはないし、実際になされる採点上の問題に目をつぶっている限り、また加点や演技構成点をいじって、「それでも勝てないように操作」されることは十分にありえる。

そして、ちょっと詳しいファンなら「おかしい」とわかる点を鵜呑みにしたメディアが、選手の欠点をクローズアップして叩き、選手を傷つけ、自信を失わせるという悪循環に陥る。

もう1つ、これが一番重要なことだが、ショートでの単独3Aの選択肢が浅田選手にとっても、必ずしも「有利には働かない」かもしれないということ。

浅田選手が個人的にかかえる課題は何だろう? ルッツのエッジとセカンドにもってくる3回転ジャンプの回転不足だ。

もしこの2つの問題がなければ、そもそも今でさえ、ショートにトリプルアクセルを入れる構成にする必要はない。

トリプルフリップ+トリプルループ

トリプルルッツ

ダブルアクセル

こちらのほうが、基礎点は20点で、今の浅田選手のショートより点数が高いのだ。

今季セカンドに3回転を入れず、ルッツも入れなかった浅田選手は、これからこの課題に取り組むことになる。どちらも簡単なようでいて、簡単ではない。

もっと言ってしまえば、今季浅田選手がショートで安定して跳べたジャンプはダブルアクセルだけなのだ。

そこに「ダブルアクセルではなくトリプルアクセルでもいい」というオプションが加われば、浅田選手はまちがいなくトリプルアクセルに挑戦するだろう。

決まれば難なく決めているように見える浅田選手の3Aだが、そもそもフィギュア女子の歴史においても、この大技を安定して跳べた選手はほとんどいないのだ。これから20歳を超えてくる浅田選手がいつまで3Aを安定して跳べるかわからない。

トリノ五輪の直前に浅田選手が颯爽とシニアにデビューしたとき、Mizumizuは、あのコマのように速く細い回転軸で回る浅田選手のジャンプのタイプを見て、「4年後、身体が大きくなったら跳べなくなるのでは」と思っていたのだ。

それを浅田選手は徹底したウエイトコントロールと訓練で乗り越えた。あの驚異的にすらりとしたスタイルを保っているからこそ、あれだけ背が伸びても、トリプルアクセルを跳べている。本人の栄養管理もあるだろうけれど、体形というのは自分で選べない。あの妖精のようなスタイルも、浅田真央が神様から与えられた贈り物だ。しかも、3Aという大技をジュニアのころからやり続けて大きなケガもない。これだけで奇跡と言っていい。

それでもトリプルアクセルをコンスタントに試合で決めるのが容易なことでなかったのは、今シーズン初めの大不調を見ればわかるだろうと思う。

安定して跳べているダブルアクセルを捨ててトリプルアクセルを入れ、さらにルッツのエッジ矯正をして、セカンドにもってくる3回転の回転不足を克服するなど、またも狂気の沙汰だ。

なぜそんな「十字架」を浅田真央に背負わせる必要があるのか。今回トリプルアクセル+ダブルトゥループを2つとも、ダブルアクセル+ダブルトゥループの基礎点にされながらも、世界一の点数を出した選手だ。

浅田選手の強みは、今はジャンプではないのだ。あまりに美しいポジションのスパイラルやスピン。動的で華麗で迫力あふれるステップ。そして、誰より過酷なスケジュールであっても、長いフリーを滑り切ってしまう驚異のスタミナなのだ。

ジャンプはむしろ、年齢とともにややほころびが見えてきている。浅田選手はずっとショートが弱い。連続ジャンプを連続ジャンプにできず、リカバリーもできないというパターンが多い。これが浅田真央の大きな欠点だ。それを克服することが一番大切なことで、ショートでまたもリスクの高い大技に挑戦することには到底賛成できない。

むしろ、ショートは「失敗しない」だけでいい。なんといっても浅田選手は、ショートでの自爆が多すぎる。そしてフリーがあれほど強いのだから、トリプルアクセルも1つでいいのだ。そのかわりルッツは絶対に入れる。たとえワンシーズンを棒に振っても。

今季ルッツを外すという選択は、浅田選手の現状と不可解な判定(特定の選手には甘く、特定の選手には辛い・・・ように見える)を考えると、結果として十分に理性的なものであり、かつ最後に世界女王奪還という素晴らしい果実を手にしたのだから何も言うことはないが、やはりルッツを入れずにトリプルアクセルを2つというのは、順番が間違っているし、それゆえリスクも高くなる。

日本のファンは基本的に賢い。浅田選手の本当の強みも弱点も、メディアの「洗脳報道」にもかかわらず、きちんと理解していると思う。

派手な大技だけに注目するのではなく、足元の小さな欠点の克服を。それがさらに浅田真央を輝かしいスケーターにすると思う。

 

 

 

 

 







最終更新日  2010.03.31 21:59:03
2010.03.30
カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

 <続き>

それがルール運用の変更によって、武器どころか、バクチ技になってしまった。

浅田選手は今季セカンドから3ループをはずしたが、安藤選手はオリンピックで入れてきた。

なぜそれまで徹底した回避策で2ループを確実に決めることでミスを防いだ安藤選手がオリンピックでいきなりセカンドの3ループに挑戦したのか? 不確実なことをやらずに結果を残してきたモロゾフが安藤選手に挑戦を許可したのはなぜ?

安藤選手は、オリンピックのインタビューで「今回はニコライが(安藤選手の判断に)まかせてくれた」と言っていた。

直前の練習では必ずしもセカンドの3ループの調子はよくなかった。安藤選手が世界女王になったときは、ショートではこのセカンドの3ループが鉄壁といってよく、シーズンを通して高い確率で決めていたのだ(当時は、今のようにダウングレードが暴走、もとい厳密化されていなかった)。

オリンピックの大舞台で、バクチとも言える3ループに安藤陣営(決めたのが本人であっても、あえて「陣営」と書くが)が挑戦したのは、その前に滑った浅田選手の出来もあると思う。

つまり、こういうことだ。すでに書いたが安藤選手の演技構成点は昨シーズンあたりから、変に上がったり下がったりする。

今季のグランプリファイナルではキム選手に迫った。だが、安藤選手が「上がる」のは、必ずといっていいほど、日本での1番手である浅田選手がショートで自爆するか、あるいは出場していない場合に限られている・・・ように見えるのだ。

1番手仕分けの選手が自爆する(あるいはいない)場合、2番手仕分けの選手が上がってくる。逆に言えば、1番手の選手がいい演技をしてしまえば、「メダルは1国1名様限定」の思惑によって、2番手の選手は点が出ない。

オリンピックのショートでは、メダル仕分けのキム・ロシェット・浅田の3選手がそろっていい演技をした。ということは、たとえ安藤選手が3回転+2回転(つまりそれは、ロシェット選手と同じレベルのジャンプ構成ということだ)をきれいに決めても、メダル圏内には入れないのだ。

実際、安藤選手のジャンプには「驚くほど加点がつかない」のだ。

これが質の悪いジャンプというならわかる。だが、安藤選手はいわゆる「ディレイド回転(跳びあがる前から回転するのではなく、しっかり跳びあがってから回転を始める)」の質のいいジャンプなのだ。

キム選手ほど大きさはないかもしれないが、放物線を描く高さと飛距離のバランスの取れたいいジャンプだ。

ところが、加点を見ると、1点以上プラスになったジャンプがほとんどない。せいぜい基礎点の低いダブルアクセルかトルプルトゥループに1点以上つくかどうか。

世界選手権で、解説の八木沼さんが、「安藤選手のジャンプは質がよかったので、加点1点以上つく」と話していた(常識的にはそう思うのが当たり前だ)が、オリンピックでの安藤選手のジャンプへの「加点抑え」が頭にあったMizumizuは、それを聞いて、

プッ

となってしまった。こちらがワールドフリーのプロトコル。

http://www.isuresults.com/results/wc2010/wc10_Ladies_FS_Scores.pdf

案の定、安藤選手のジャンプの加点はとっても少ない。

ハア? なんで?

これがまあ、普通の感覚だと思う。

だが、普通の感覚がまったくとおらないのが今のジャッジが出してくる加点・減点なのだ。

もちろん、例によってあとから辻褄合わせをすることはできる。「ちょっと着氷のあとの流れがなかったですからね~」とか、「スピードがなかったですかね~」とか、「回り方が強引ですかね~」とか、「安藤選手は着氷時に前傾姿勢になってしまうんですよね~」とか。

「安藤選手のジャンプに加点がつかない」ことに八木沼さんは、まだ完全に気づいていないらしい。気づいたら、どんな苦し紛れの言い訳・・・もとい、解説をすることやら。

結局、こういう状態だと、選手は基礎点の高いジャンプで勝負に出るしかなくなるのだ。メダルを獲るという意志があるのなら。

オリンピックのショートでは、安藤選手はセカンドジャンプをできるだけ遠くにもってきて、回りきろうとしていた。実際には回りきっていたようにも見えたが、降りたあと詰まってしまい、ダウングレード。しかも、このときに流れが止まったので、スピードが出ず、続くフリップもうまくいかなかった。

最初の連続ジャンプでなにかアクシデントがあり、流れがとまると、スピードが出ずに次のジャンプを失敗しやすい。しかも、安藤選手の次の単独3回転は、エッジ矯正をしたフリップだ。エッジ矯正というのは、本当の意味では、ある程度の年齢以降に完全に矯正するのは不可能なのかもしれない。

安藤選手はフリップでエッジ違反こそ取られないが、回りきれずに少し着氷が乱れることが非常に多い。

すでに2年がかりでルッツを矯正したというロシェット選手も、やや不安定だし、キム選手のフリップも、世界選手権ではやはり完全に中立だった(Eマークのつくwrong edgeだとまでは思わないが、!マークのアテンションもつかないというのは疑問だ。ファンが騒ぐまではエッジ違反を取らない気なのか?)うえに、回りきれなかった。オリンピックのキム選手のフリップも中立に入っていたように見えた。

浅田選手は今季ルッツを避けている。

安藤選手の3ルッツ+3ループに話を戻すと、オリンピックでセカンドの3ループが不完全だった安藤選手は、ワールドで今度こそ決めようとしたのだと思う。

気になっているのは、ルッツではない。セカンドの3ループだ。

するとどうなるか?

浅田選手の後半の3フリップからの連続ジャンプでしばしば起こる失敗と同じことだ。過去の試合で、セカンドのジャンプが足りなくて失敗した場合、選手は次の試合ではファーストのジャンプを多少セーブして、セカンドジャンプを跳ぼうとする。すると、元来単独では問題ないはずのファーストジャンプが回転不足のまま降りてきてしまうことになる。

オリンピックで4+3をつけられなかったジュベールが急きょルッツを連続ジャンプにしようとして、ルッツそのものを失敗してしまったのも、同じ理由。「なんとかセカンドを」と思うと、ファーストをセーブし、結果失敗になる。

安藤選手の1つの失敗は、シーズンからの流れである程度、説明ができる。ジャンプはあくまでも確率なのだ。過去の試合の確率はどうかで、起こるであろう失敗はだいたいが予測できる。

そして今回のワールドのショートで、安藤選手の点が思いのほか出なかったのは、「(限りなく)恣意的に抑えられた(ように見える)」部分と「ルール上、当然そうなる」部分とがからみあっているのだ。







最終更新日  2010.04.02 11:11:37
2010.03.29
カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

オリンピック、その直後の世界選手権で、「フィギュアはオリンピックイヤーにしか見ない」ファンにも現行採点(あえて、ルールとは言わないでおく)の異常さが認知されたことは、基本的に好ましいことだと思っている。

人間のやることに絶対はない。主観の入る採点競技が誰にとっても公平に思える結果になることもない。だが、だからといって無批判に結果を鵜呑みにしていては、どんどん採点が腐ってくる。

今回の世界選手権で、どんな素人でも鵜呑みにできないほど、非常識な点が女子シングルの銀メダリストに与えられたことは、採点の問題点が明確に顕在化したという点においては、よかったのだ。

もちろん競技としてはまったくよろしくない。今回のキム・ヨナ選手の演技は銀メダルにはふさわしくない。2位という順位は完全に間違っている。

素人の感覚は非常に素直で、逆に的を射る場合も多い。スゴイものは誰が見てもスゴイ。その単純さこそが、すべての「感動」の出発点だ。逆もまた真なり。ショート、フリーともミスが目立ち、演技の流れが何度も止まってしまった選手がなぜ2位なのか。

以下の中国メディアが伝えたという論評が、一番素人にも納得しやすいのではないか。

中国新聞網は「キム・ヨナの銀メダルは意外だった」とし、ジャンプの転倒と回転不足があったにもかかわらず、ほぼノーミスの浅田真央選手(129・50点)より高い130.39点という全選手中最高の得点を獲得したことに疑問を呈した。

続けて記事では、「完璧な演技を見せた浅田真央選手の点数がキム・ヨナ選手よりも低かったとき、会場からはため息が聞こえた」とし、表彰台でキム・ヨナ選手に送られた拍手は、金メダルを獲得した浅田真央選手はおろか、銅メダルのラウラ・レピスト選手よりもずっと少なかったと報じた。

また、キム・ヨナ選手が獲得した点数に対し、記事では「ジャッジから何らかの配慮があったのは明らかだ」と指摘し、「フィギュアスケートにおける悲哀と言わざるを得ない」と報道。

さらに、「ジャッジが見せた『えこひいき』はフィギュアスケートというスポーツの公平性をさらに失わせることとなった」とし、今回のような事件が今後のスポーツ競技で起きないことを希望するばかりであると報じた。

キム選手に対する点数が発狂していることは、別に浅田選手のファンでなくとも、ここ数年の採点の動きを見ている、普通のファン(つまりキム選手ならどんな高得点でも「妥当」に見える大のファンとか、ジャッジと交友関係や利害関係のある人間ではないという意味)ならわかっている。

キム選手が全部ジャンプを(そこそこ)決めれば、バカげた高得点も「演技がよかったから」で納得させられないわけでもない・・・というだけのことだ。

それが今回の世界選手権のように、エレメンツそのものが抜けてしまったり、激しい転倒で演技が止まったり、あからさまなジャンプのパンクがあったりすると、「それでも、ほとんどの選手の自己ベストを上回る点? おかしいだろう」ということが明確にわかるというだけのことだ。

ただ、キム選手のことはさておき、オリンピックで初めて採点の異常さに気づいたウルトラ・ニワカのファンの皆さんには、採点について物申す前にほんの少しルールについて勉強をしてください、と言いたい。

技術審判による回転不足・エッジ・レベル判定の疑わしさ、演技審判の「勝たせたい選手にはつけ、勝たせなくない選手にはつけない」GOE(ジャンプ・ステップ・スピンなどのエレメンツの質を評価する演技審判による加点・減点)のデタラメぶり、さらにダメ押しとなる(演技審判による)演技構成点の「カラスの勝手でしょ」の点付け。どうにもならないフランケンシュタイン採点には違いないが、それとは別に客観的基準として設けられたジャンプの基礎点から点の低さを説明できる部分もある。

つまり失敗したジャンプが基礎点の高いジャンプだったか低いジャンプだったか。それによって減点も違ってくるので、一概に「転倒したのに点が高い」「転倒したにしても点が低すぎる」と糾弾するのはファンのほうの知識不足だ。

たとえば、安藤選手のショート。転倒は1度だけだが、この転倒はショートではもっとも「痛い」部分での転倒だった。

安藤選手は女子で唯一、トルプルルッツ+トリプルループが跳べる選手だ。これはキム選手のトルプルルッツ+トリプルトゥループより難しく、基礎点も高い。だが、今回安藤選手は、トリプルルッツでコケてしまい、もう1つの三回転をつけることができなかった。

しかも、トリプルルッツが回転不足のまま転倒したと見なされ(この判断自体は間違っていないと思う。問題はほかにも回転不足のまま転倒したとしか見えない選手がいるのに、その選手に対してはダウングレードがなされなかったこと。これは安藤選手への採点とはまた別問題)、ダウングレードで基礎点がダブルルッツのものになってしまった。

トリプルルッツの基礎点は6点、ダブルルッツの基礎点は1.9点。このダングレードで安藤選手は4.1点を失う。さらにGOEですべてマイナス3となり、このジャンプの点は0.9点(2回転ジャンプのGOEはジャッジがマイナス3とつけても、そのままマイナス3点になるわけではない。基礎点がそもそも1.9点しかないのだから。ダブルアクセル以上のジャンプとはGOEの反映割合が違い、過小な割合になる)。さらに、転倒ということで、最後にマイナス1点を引かれて、実際にはマイナス0.1点。

http://www.isuresults.com/results/wc2010/wc10_Ladies_SP_Scores.pdf

つまり、3ルッツを回転不足のまま転倒してしまうと、実際の点はマイナス点になる。意味不明のルールだが、この条件は他の選手も同じだ(だからMizumizuは以前から、転倒ジャンプは一律に0点とすべきと主張している。同じ転倒なのに、点になったり、マイナス点になったりするのは不合理だ)。

さらに安藤選手の次の3フリップは、着氷時にエッジがグルッと回ってしまい(ジャンプが足りないときに起こる現象だ)、これでGOEがマイナスに。5.5点の基礎点に対して4.7点の得点にしかならなかった。本当のことを言ってしまうと、このジャンプ、ダングレードされなくてよかった。もし、回転不足と判定されていたら、2フリップの基礎点1.7点になってしまい、そこからまたGOEで引かれると点がなくなってしまう。もしあれがダウングレードだったら安藤選手のショートには3回転ジャンプがないことになり、点にならない。

あとはダブルアクセル。基礎点は3.5点と低いので、加点1点を得ても4.5点にしかならなかった。

逆に、ダブルアクセルで転倒に近い失敗をしたレピスト選手は、3トゥループ+3トゥループと3ループの3つの3回転を入れ、加点も得たために、点が下がらなかった。また、何も知らないファンには、転倒と同様に見えたかもしれないが、採点上は転倒ではないので、最後のマイナス1がなく、GOEだけの減点に留まっている。

ジャンプの難度は、アクセル→ルッツ→フリップ→ループ→サルコウ→トゥループの順。

3ルッツ+3ループ+3フリップを跳べる安藤選手は、もっているジャンプの基礎点はレピスト選手より高いが、ルッツで失敗して、ループを入れることができず、しかもフリップが不完全だったために、ルッツとフリップを入れることのできない(したがって安藤選手よりもっているジャンプの基礎点が低い)レピスト選手以下の点しか取ることができなかったのだ。

さらに、安藤選手が「なぜルッツで失敗したか」も、今シーズンの試合の流れから説明できる。ジャンプというのは確率。過去で安定して跳べているジャンプは、調子が多少悪くても跳べる。

安藤選手はシーズン前半、苛烈なダウングレード判定を受けないために、徹底してセカンドジャンプを2ループにする、いわゆる「回避策」を取ってきた。心ないファンやメディアが、例によって、「なんで3ループに挑戦しないんだ」などと煽ったが、異様に厳しいダウングレード判定を受けてしまえば、最初から2ループをきれいに跳んでおいたほうがGOEプラスがもらえる分、点になるからだ。

セカンドの3ループについては、ダウングレード判定に容赦はない。セカンドの3トゥループは甘く感じることもあるが、世界のトップ選手のうち安藤・浅田・フラットしかやらない3ループに関しては、認定(ダウングレードしないこと)は非常に狭き門だ。たまに安藤選手が認定されたら、キム選手のコーチのオーサーが、大クレームをつけてきた(これについても過去に書いているので、興味のある方は読んでください。証拠の動画はもう削除されたかもしれないが)。

セカンドに3ループをもってきて、「完全に回りきる」のは非常に難しいと思う。今シーズン浅田選手はセカンドに3ループを跳んでいない。フラット選手は3トゥループに切り替えている。

今回のワールドでは、フラット選手はセカンドに3トゥループを跳ばなかった(オリンピックでは入れていた)。これは日本女子およびアメリカ女子にとっては「天敵」とも言える天野真がスペシャリストだったため、ダウングレードを警戒して回避したのだと思う。

実際に、国別対抗でのアメリカ女子選手に対する天野真(をスペシャリストにおいた技術審判団)のダウングレードは信じられないほど厳しかった。

こちらが当時の技術審判の顔ぶれ。

こちらがショートのプロトコル。

http://www.isuresults.com/results/wtt2009/wtt09_Ladies_SP_Scores.pdf

<マークがダングレードで、ジャン選手とフラット選手が出場したが、2人ともセカンドの3回転がダウングレード。解説の荒川静香が、「こちらからは回っているように見えた」と言ったジャンプもダウングレードだった。

セカンドに3ループをつけるのは、3トゥループをつけるより(通常は)難しい。

だが、その難しい3回転+3回転をやっても、わずかにブレードがグルッと回ってしまったら、もうセカンドの3ループは2ループ扱いになってしまい、基礎点が5点から1.5点になり、一挙に3.5点失うことになる。

それでは簡単なトゥループに替えればいい、と思うかもしれないが、それが天才ジャンパー安藤美姫の、ジャンプに関してはほとんどない弱点の1つ。

つまり、セカンドにループをつけるのは得意だが、トゥループをつけるのは得意ではないのだ。この傾向は浅田選手にも言えることだ。

もっとも安藤選手はダブルアクセル+3トゥループを決めたこともあり、絶対にセカンドに3トゥループをつけられないわけではない。だが、ルッツに3トゥループをつけることは、無理だったようで、試合では一度も使っていない。

これは仕方のない面もある。昔から練習していればできたかもしれないが、ダングレード判定が「厳密化」される前は、トゥループより基礎点の高いループをセカンドにつけられる安藤選手や浅田選手は、わざわざトゥループをつける必要はなかったのだ。ループを確実に入れられるように(そもそもセカンドにループをつけるためには、一度ジャンプの回転を止めなければならない。ファーストジャンプの勢いを一度消す分、跳躍力が必要になり、難しいのだ)、集中して磨いてきた。

ループは単独でも苦手で、セカンドにつけるなどもってのほかのキム選手に対して、セカンドに3ループを入れることのできる安藤・浅田選手は、絶対的に有利だったのだ。

ダングレード判定が暴走、もとい厳密化する前までは。

<続く>







最終更新日  2010.03.31 07:07:21
2010.03.28
カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

フィギュアの現行採点の非常識さを世界に知らしめたバンクーバーから1ヶ月。

他のバンクーバーメダリストと違い、年が明けてから4大陸のあった浅田真央にとっては、心身ともにきつかった試合だったと思うが、土壇場でまたも、その女子のレベルを超えたタフネスさを見せ付けた。

今では女子では彼女しか試合に入れることのできない大技トリプルアクセルを3度も入れるという過酷なプログラムを、シーズン最後にきてミスなく滑るなど、並みの精神力・体力ではない。トリプルアクセルは着氷するだけでも難しいのだ。それを1つの試合で3度もやって、年明け以降は一度も転倒がない。素晴らしいことだ。

フランケンシュタイン度を増すデタラメ採点のなか、トリプルアクセルが2つダウングレード、つまりそこで基礎点だけでマイナス4.7点X2つ=9.4点を失うという大幅減点をくらいながらも、世界一になってしまう。そこが浅田真央の凄さだ。

2度目の世界女王――これはジャンプの天才・伊藤みどりも滑りの超優等生・佐藤有香も成し遂げられなかった快挙だ。

今回は特にスピンの美しさに見惚れた。なんとまあ、すらりと長く、美しく、天に向かって伸びる脚であることか。

他人がどうあれ、採点がどうあれ、自分のやるべきこと、できることに集中して、クリーンな最高の演技をする。それを今回浅田選手はやりきった。

だが一体、ここまでファンに呆れられる採点をして、ISUとジャッジは今後どうするつもりなのか。

これではあまりに選手が気の毒。

考えてみよう。トリノ・オリンピック当時の採点。あのときも新採点システムだった。プルシェンコが他の選手に大差をつけて圧勝したときに、今のようなルール&ジャッジ批判があっただろうか? 大きな点差に素人が納得できたのは、誰にもできないと誰が見てもわかる高難度の連続ジャンプをショート、フリーともに成功させたのが、プルシェンコだけだったからだ。

今回の世界選手権女子の「仕分け先にありき」の演技構成点を見て、「これでは試合をやる意味がない」と何度もMizumizuが指摘してきたことが、だいぶ実感として一般のファンにも浸透してきたのではないかと思う。

今回の女子のダングレード判定を行った技術審判は、「例の」カナダ在住日本人スペシャリスト天野真氏を筆頭とする3人だが、同じ選手に対してすら、回りきっているとしか思えないのにダウングレードしたり、足りていないように見えるのにダウングレードしなかったり、判定の不可解さを露呈していた(あえてどのジャンプとは、ここでは書かないが)。あるいは単に天野氏がスペシャリストとして未熟なだけかもしれないが、それにしてもオリンピックとあまりに基準が違いすぎる。

「4分の1以上足りなければダウングレード」のはずが、肉眼で見ても足りていない典型的回転不足がダウングレードされなかったり、演技審判の多くが回転不足と思っていない(らしく、GOE減点していないのに)のにダウングレードされたりと、こうした甘辛自在の判定を続ければ、さらにファンの不信を招く。今のファンは審判があまりに信頼できないため、回転不足判定に特に目を光らせている人も多いのだ。

「見る角度によって違って見えるから」などと解説者が苦肉の策で言っているが、そもそもそんな曖昧な主観で、ここまで点を落とすのは公平性の面からも妥当ではない。今季、ダウングレード判定を演技審判に知らせず、GOEを各演技審判に委ねた結果、ダウングレードされているのに、GOEでプラスをつけるジャッジがかなりいるということがわかった。そこまでわかりにくい多少の回転不足で、点をその下のジャンプの基礎点に落としてしまうなど、むしろ暴挙ではないか。

そのうえ、判定そのものも一貫性がなく、解説者を困らせている。

「回転不足を厳しく取るジャッジ」と「厳しく取らないジャッジがいる」とファンのほうが気を利かせて(?)辻褄合わせをしているが、それがそもそもおかしい話だ、。

スペシャリストの判断をそのまま是とせず、他のスペシャリストも参加して、過去の試合のダウングレード判定を検証する場を設ける必要があるのではないか。それが無理なら、今大会のトップ選手のジャンプ、特に転倒しながらダウングレードされたなかったジャンプだけでもきっちり検証すべき。なぜなら、転倒というのは「回り切れていないから」起こることが多いからだ。今回は回りきれずに転倒したようにしか見えないジャンプがダウングレードされていない。ちぐはぐな判定は誰かがそれを指摘しなければ、いつまでたっても是正されない。ファンの方は、Mizumizuが過去に、「足りなくなってきている」と指摘した誰かの後半の単独ジャンプに注目してスローを再度見て欲しい。

ダウングレードを取られるか取られないかによって、「スペシャリストの勝手でしょ」では許されないくらい点が違ってきてしまうのだから、そのくらいの努力をするのが選手に対する礼儀ではないか。

このまま「中間点」を設けてお茶を濁し、スペシャリストによって、また試合によってバラバラな基準でダウングレードを続ければ、それは「特定の選手を落とすため」だと思われるのが関の山。

ルールには理屈が何より大事だが、中間点のジャンプというのは筋がとおらない。仮に中間点という新しい概念を作ったとして、そのジャンプの質をGOEでどう評価するのか?

3回転の回転不足は、「質の悪い3回転」なのだ。「2回転と3回転の間のジャンプ」ではない。だったら、3回転ジャンプの基礎点からGOEで減点すればいいことだ。GOEはジャンプの質を評価するものなのだから。

今回トリノの観客はだいぶ採点にブーイングを浴びせていた。イタリアというのはああいう国で、イタリア人はオペラでも気に入らないとすぐにブーイングを浴びせる傾向がある。ルールと採点について知識がないのもあるかもしれないが、それゆえ、彼らは素直な目で演技を見ている。一般の素人の常識的な感覚をないがしろにしては、スポーツはなりたっていかない。

それと、匿名の演技審判のGOEと演技構成点の出し方のデタラメぶり。GOEでは、着氷が乱れた質の悪いジャンプに加点「2」をつけるジャッジがいる。何度もいっているように、一見客観的に見える加点・減点要件がズラズラ細かく並んでいるから、逆にどうつけようと、後から辻褄が合わせられるようになってしまった。それが問題なのだ。

演技構成点の5コンポーネンツにしても、実際に演技を見てるのか疑いたくなるような、「事前の仕分け感」ありありの採点だから、いざ総合得点が出てきたとき、明らかに出来のよくない選手が出来のよかった選手の上に来たり、あるいは点差がほとんどなかったりして、素直に演技を見ているファンが驚くことになるのだ。

こんな採点をしておきながら、「目の肥えたジャッジが出した点だから信頼しろ」などという無茶を、いつまで言い続けるつもりなのか。とても目のある人間が出しているとは思えない点が出てくるから、ファンは怒っている。こんな当たり前のことが理解できないようなら、ジャッジはプロフェッショナルとはいえない。報酬をもらって仕事をするプロは、あくまで結果がすべて。結果で皆を(内輪のおえらいさんではなく)納得させられなければ、容赦なく残酷な非難が浴びせられる。逆にコツコツときちんと仕事を続けていれば、(内輪からだけではなく)必ず評価してもらえる。そんなことは、普通の「プロ」ならわかっているはずだ。

ルールに大鉈が振るわれることはほぼ確定している。採点競技に誰もが100%納得できる結果はないにしろ、今季いろいろと問題が噴出した点をきちんと検証して、多少なりとも公平になるように、ルール策定者は皆で努力してほしい。







最終更新日  2010.03.30 01:35:48
2010.03.26
カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

ようやく、高橋大輔選手がその才能にふさわしいタイトルを手にした。

世界選手権優勝。日本男子初。オリンピックの金・銀メダリスト、それに4位・6位が出なかったのだから、高橋選手は優勝候補の筆頭。だが、そうした状況になればなるほど、ニッポン男子の得意技「ジャンプの自爆」が出てきやすい。

オリンピック以降体重も2キロ増え、モチベーションも上がらず、トリノに入ってもトリプルアクセルの調子が悪かったと伝えられるなか、あれだけ演技をまとめたのは凄い。

ジャッジのデタラメ採点はハッキリ言って相変わらず。だが、高橋選手の優勝は文句なし。この順位に間違いはない。

高橋選手が他の選手と違うのは、卓越したスケート技術と表現力もあるが、なんといってもトリプルアクセルの力だ。

現行ルールで勝敗を決めるのは最高難度の4回転ができるかできないかではない。トリプルアクセルをショートで1度、フリーで2度決められるかどうか。これが一番モノをいうのだ。

織田選手と小塚選手は、4回転に挑戦しはじめてから、トリプルアクセルがどうしても安定してくれない。これは、ごくわずかな例外的選手をのぞけば、世界の男子トップ選手に蔓延している「怪現象」なのだ。

つまり、4回転が試合で決まりはじめると、トリプルアクセルが乱れる。4回転はそもそも難しい技なので、なかなか安定しない。跳べたり、跳べなかったり。そして同時に、これまでは跳べていたトリプルアクセルがダメになる。1度ならなんとか入る(今回のフリーで小塚選手は1度も入らないという最悪のシナリオになってしまったが)。だが2度は決まらない。

このパターンにはまる選手の例は枚挙に暇がない。ベルネル選手、ウィアー選手、ライザチェック選手、織田選手、小塚選手。ひろい意味では、大きな試合では4回転を入れていないものの、今季プログラムに入れようとしてもともと不安定だったトリプルアクセルがさらにダメダメになったチャン選手もこのパターンに入れることができるだろう。

ジュベール選手は今回、4回転2度、トリプルアクセル1度にして、ミスはなかったが、そうなるとルッツ(トリプルアクセルの次に難しいジャンプ)で失敗するというパターンが待っていて、またこれにはまってしまった。

高橋選手の勝利を確定づけたのは、4回転フリップで転倒しなかったことも大きいが、なんといっても後半にもってくるトリプルアクセルを見事に決めたこと。

フィギュアスケートのジャッジというのは、基本的に頭がよくないのか、滑稽なほどわかりやすい「辻褄合わせ」をする。オリンピックで批判と疑惑の対象となったキム選手のジャンプに対する加点「2」。これをあとから辻褄合わせをするなら、高橋選手のトリプルアクセルだろうとMizumizuが書いたら(3月1日のエントリー参照)、ヤッパリ。フリーの後半にクリーンに決めたトリプルアクセルが9.02点(トリプルアクセルの基礎点は8.2点なのだが、後半にもってくると1割増しとなる)に加点「2」がつき、11.02点という大量点を稼いだ。

オリンピックでも同様にクリーンに決めたのだが、加点は「1.8」点で「2」までは行かなかった。

チャン選手との最終的な点差が10.48点だったから、このトリプルアクセルで回転不足のまま(つまりダブルアクセルの基礎点のまま)転倒したりしていたら、演技構成点にも影響が出て、金メダルは、あの「怪奇現象上げ」のパトリック・チャンに行っていたかもしれない。

ふざけた話だ。

つまり、チャン選手に対して、これをオリンピックでやろうとしていたということ。それがチャン選手がショートでトリプルアクセル(基礎点が高いジャンプなので、これを1つ失敗すると大きく点を失う)を失敗し、フリーでも失敗したためにできなかったのだ。

おまけに、オリンピックでは高橋選手に金をやるつもりはなかったのか、後半の単独ルッツのエッジ判定で「!」(アテンションマークのこと。これがつくのは、踏み切り時に間違ったエッジに入った時間が短かった場合、もしくは中立だったとみなされた場合)がつくと、ここぞとばかりにGOE減点したのに、今回はGOEで減点したジャッジ、加点したジャッジ、0にしたジャッジが入り混じり、最終的に基礎点そのままの6.6点(オリンピックでは6.6点に対し、GOE減点で6点になった)。

プッ。

失礼。

しかし、思わず噴き出したくなるほど露骨だ。

もちろん、GOEの点付けは不正行為ではない。「!」マークの場合は、減点MUSTではない。たとえ「!」がついても他にそのマイナス要素を補うだけのプラス要素があると見なせば加点してもいいし、減点しない(加点もしない)こともできる。そのあたりはGOEをつける演技審判の自由裁量に委ねられている。

高橋選手のフリーのスピンとステップのレベル認定がすべて最高難度の「レベル4」というのも・・・

まあ、日本人としては有り難いが、はっきりいって相当に萎える。高橋選手に対するスピンとステップの認定は、今シーズン初めはやたらめったら厳しかったのだ。ステップもレベル2が多かったし、スピンも・・・(以下、自粛)。

それが、プルシェンコがステップでもスピンでもレベルを安定して取ってくる、ジャンプも決まるとわかったシーズン後半、つまりオリンピックでは・・・(以下、自粛)。

高橋選手がそこまでレベルを上げてきたということですね、はいはい。スピンの回転数、足りていたんですか・・・いたんですね、はいはい。フォアアウトで回ると軸がだいぶ広がって・・・いえ、気のせいでしょう。フォアアウトのスピンは難しいですし。

最後の連続ジャンプもオリンピックでは3ルッツ+2トゥループ(基礎点8.03点)だったのをダブルアクセル+2トゥループ(基礎点5.28点)に替えて、だいぶラクに・・・いえ、ルッツでエッジ違反を取られて減点されるのを防いだってことですね。なんといってもトータルバランスですから。

フリーの総加点もオリンピックでは、たったの3.2点だったのが、今回7.8点にまで増えたのは、女子の誰かの爆加点への多少の辻褄合わせ・・・ではなくて、高橋選手のエレメンツの質が急に上がったせいなのですね。オリンピック後で疲労していたにもかかわらず、たいしたものです。どちらにしろフリーの総加点が17.4点などというのがいかに異常か、男子トップ選手に対する加点を見ればわかろうというもの。

この高橋大輔優遇政策は、キム選手の謎の爆加点や発狂演技構成点に不満を募らせている日本人ファンを黙らせるためでしょうかね?

もっともそれは、高橋選手には何の責任もないし、彼が金メダルにふさわしい演技をしたのは確かだ。

あえて自国の選手のことを書いたが、チャン選手への採点は、ハッキリ言ってもっと、相当に酷い。あれを来季も見せられるとしたら、Mizumizuは憤死するかもしれない。そもそも来季Mizumizuがフィギュアスケートを見るかどうかもわからないが、日本人選手にこれだけ素晴らしい才能がそろっている時代に、完全にフィギュアに背を向けるのも難しい。

今回の2位の選手は、明らかに彼ではない。オリンピックの5位だって、彼ではなかった。チャン選手のスケート技術は確かに世界屈指だが、決してアナウンサーが安直に請合うように、「間違いなく世界トップ」ではありえない。

小塚選手もチャン選手に引けをとらないスケート技術をもっているし、単にエッジ捌きというなら、チャン選手よりも上だと思う。それはストイコも言っている。「タカヒコのエッジは世界トップ」だと。ところがところが、フリーのスケート技術の点は、チャン選手が8.35点、小塚選手が7.5点と0.85点「もの」差がある。いい加減にしてほしいわ、まったく。

チャン選手はワンストロークでトップスピードにのる技術は世界トップだし、確かに難しいことをしている。だがモーションがあまりにパターン化していて、繰り返しが多すぎるのだ。確かにスピードを落とさずに、難しいターンや回転動作をするのは素晴らしいが、リピートばかりなので、平板な印象になる。メリハリのきいたスケート技術の多彩さでは、高橋選手にはまったく及ばない。

だから、チャン選手に対する解説者の賞賛も常にワンパターンだ。

その1.スケートの伸びが他の選手と違う。ひとかきでトップスピードにのる。

その2・ 簡単そうに見えて難しいステップを踏んでいる。しかもスピードが落ちない。

終わり

以上。

<本文は続きます>







最終更新日  2010.03.26 19:40:15
カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

<続き>

 今回の小塚選手のショートは素晴らしかった。彼がショートでは1位だったと思う。3回転+3回転のセカンドジャンプで例によって若干流れが止まった高橋選手ではなく。

小塚選手とアボット選手のショートはテイストが似ている。佐藤有香が振付師とコーチとしてかかわっているので、彼女の趣味なのかもしれない。どちらもモダンで非常に洗練されたプログラム。シーズン初めは、アボット選手の表現力のほうがはるかに成熟して勝っている印象だったのが、ここにきて、小塚選手が追い抜いた感がある。難度の高いプログラムをシーズンかけて徐々に完成していく――これがフィギュアの王道だし、それを小塚選手はやってのけた。

なのに、点数は・・・(以下、自粛)。

今回はショートの点の出方を見ても、「金メダルはチャンか高橋にしか、やらないもんね」採点だったと思う。

ショートの点の出方でMizumizuが泣きたくなったのは、アボット選手のトリプルアクセルに対するGOE評価。確かに着氷時に前傾姿勢になってしまったが、あのターン&ステップからのトリプルアクセルの入り方は非常に難しいのだ。世界トップ選手といえど、助走をほとんど取らないあの入り方でトリプルアクセルを跳べるのはアボット選手だけなのだ。

着氷したあとも一瞬エッジをピタッと止めて、すぐにこぶしを握り締めての回転動作に入る。一瞬、「オーバーターン?」と思わせるような演出だ。モーションでありながら、感情表現も含めた、インテリジェンスと独創性にあふれた出方。

ジャンプも幅はそれほどではないが、高さと幅のバランスは文句がないと思う。それなのに、着氷が若干前傾姿勢になったためなのか、ほかにマイナス要素があると見なされたためなのか、加点したのはたったの1人。それも「1」。逆にマイナス1をつけたジャッジも1人いて、あとは「0」。だから、基礎点そのままの8.2点。

「金メダル仕分け」されているチャン選手の幅跳びトリプルアクセルは気前よく加点がついて9.2点に。

これでは、難しいことをしている選手が報われない。逆にアボット選手のほうが、フリーのダブルアクセル(同様の難しい入り方・出方)で転倒してしまい、点が伸びなかった。見ているほうは、「なんでダブルアクセルなんかでコケるの?」と思うかもしれないが、非常にリスキーな難しい跳び方をしているからだ。

誰にもできないジャンプのエントリーを見せても報われない。これでは、こうした高度なことをやってくれる選手がいなくなってしまう。とりあえず遠くに跳んで、流れのある着氷をしたほうが点が出るというなら、皆そうするだろう。個性を評価せず、1つのパターンにあてはまったエレメンツばかりに点を出す。こうやってどんどん「その選手にしか出せないスポーツの美しさ」がなくなっていく。

アボット選手のフリーのトランジション(技と技のつなぎのフットワーク)は、どの選手よりも高度なものだ。見ていただければわかると思うが、常に腕を含めた上体を動かし、しかも深いエッジにのって(つまり、上体が傾いた上体で)、スピードを均一にして滑っていく。ゆったりした滑りだから、逆にスピードを一定にしてポジションをキープするのが難しい。

ジャンプのための助走もほとんどない。ジャンプきりぎりまでモーションを入れる。かつてのランビエールの「ポエタ」を彷彿させるような構成だ。ここまで難しいことをしているのに、演技構成点の5コンポーネンツの「トランジション」はさっぱり上がってこない。

「金メダル仕分け」された高橋選手とチャン選手の5コンポーネンツが軒並み8点台なのに対して、アボット選手のトランジションは7.45点。

もし、仮にジャッジがマトモに採点しているなら、たとえジャンプの2度の転倒があったにしろ、あれだけ高度な構成にしたアボット選手のトランジジョンだけは、高橋・チャン選手同様の点を出すはずだ。

ところが演技構成点の5つのコンポーネンツは、ただの「最初に結論ありきの振り分け」。トランジションは他のコンポーネンツより多少低くつけているだけ。

点が出ないと、「ジャンプを跳ぶために、つなぎを単純にしたから」と後付けで説明しているライターもいるが、実際には、つなぎはかなり単純でもトランジションが変に高い選手もいる。つなぎを濃くすることで点がもらえている選手もいるが、もらえない選手もいる。アボット選手が今回、後者の典型だ。

http://www.isuresults.com/results/wc2010/wc10_Men_FS_Scores.pdf

上のプロトコルを見ても、演技構成点で、高橋選手・チャン選手の演技構成点は軒並み8点台。3位に入ったジュベール選手がそれに準じ(でも2人を上回ることはない)、この3人が総演技構成点で80点台。それ以下の選手との仕分けラインがくっきりだ。

プルシェンコが指摘したように、誰にでもわかる、そして習得の難しい高難度ジャンプを重視せず、「トータルパッケージ」という、どうにでも解釈できる、したがってファンにはさっぱり理解不能な(実際には元トップ選手のような目のあるプロにも理解不能)主観部分に重きをおけば、ジャッジ(実際には彼らをコントールしているISU)が勝たせたい選手が勝つようになり、完全に競技会はショー化する。

いや、もうほとんどそうなっている。

ジャッジに愛されている(これはキム選手を表現したオーサーの言葉だが)高橋選手にとっては好ましい状況だが、他の日本人選手にとってははなはだしく不公平だ。

Mizumizuがジャッジをもう少し信頼できれば、高橋選手への高評価は素直に嬉しいと思っただろう。実際に、高橋選手ほどスケーターに求められるすべての能力を高いレベルで兼ね備えた選手は稀有だからだ。

「表現力」は曖昧で、嗜好にも左右されるが、スケート技術に関しては、ある程度客観的に説明できると思う。

高橋選手が素晴らしいのは、まずはスケートの伸び。単に滑っているとき、特にバッククロスで滑り始めたときの、スピードと姿勢(頭の先までピシッとモノサシでも入れたように伸びている)は卓越したものがある。

それにエッジ遣い。ステップ時のメリハリのきいたシャープかつ素早いエッジ捌きはすでに定評があるが、深いエッジにのって大きくゆったりとしたモーションを見せるときの身体の使い方も文句のつけようがない。

身体を回転させる動作1つとっても、しっかりエッジにのったゆっくりした回転でも、ゆっくり回転に入ってそのあとスピードを突如上げたりでも、最初から超速のモーションでクルッと回ったりでも、とにかくバリエーションが豊富で、自在なパターンを見せてくれる。その間に首のモーションを入れることもある。頭を動かすと方向感覚を一瞬失うので、バランスを保つのが難しいのに、身体の軸がまったくブレない。回転動作が全部ワンパタなチャン選手とは雲泥の差だ。

表現力に定評がある他の選手でも、スケート技術に関しては、少し物申したい部分がある。たとえば日本女性に大人気のランビエール選手は、よく見ればストロークがさほど伸びない。だから素早いターン&ステップで、別の技術を見せてその欠点を補うようにしている。エッジ遣いも高橋選手ほど深くない。

ウィアー選手もライザチェック選手も、スケートがあまり伸びず、氷をエッジでつかむ能力が低いのか、ステップが速くなるとブレードが安定しない。アボット選手のように深いエッジと上半身の動きがピッタリ一致したモーションができず、足が動かずに上体だけが動いている。ウィアー選手とライザチェック選手はスケートの技術に関して同様の欠点をもっているが、ウィアー選手は華麗な身体のラインと腕の動作で、ライザチェック選手は長い腕を大きく使うダイナミックな動きで、その欠点を観客に気付かせないようにしている。

高橋選手の滑りに関しては、欠点を見つけるほうが難しい。これほど全方位で欠点のないスケート技術をもつ選手は、長くフィギュアを見てるMizumizuもちょっと記憶にないくらいだ。

そして、ジャンプ力。特にもっとも大事なトリプルアクセルの地力、これが何度も高橋選手を救っている(だが、相変わらず3回転+3回転のセカンドがまずい・・・)。

4回転フリップ挑戦に関しては、本人も言っているように、「無謀」。ダウングレードされてGOEでも減点(マイナス1が3人、マイナス2が4人、マイナス3が2人)でなので、点は3.9点。点から考えれば、単純なトリプルトゥループ(3回転の中でももっとも基礎点の低いもの)をやっておいたほうがマシというような点だが、ただ転倒しなかったのがよかった。

こうしたあからさまな仕分け採点がいつまで続くのかはわからないが、選手にできることは自爆しないこと。自分の世界を精一杯表現することだ。

今回まさかの自爆になってしまった織田選手も、気持ちを切り替えて来季に向かってほしい。長い競技生活の中で、そういうこともありますよ。多くの場合、こういう大自爆の原因は1つではありえない。コップに少しずつ水がたまり、最後の一滴でとうとう水が溢れてしまうようなものだ。

今回ワールドに背を向けたジョニー・ウィアー選手が、インタビューで冷静かつ率直に、今の「政治的採点」について語っている動画がある。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm9857947

Mizumizuがこれまで書いたこととまったく同じことを言っている。要するに、現場の選手はこうしたことはすべてわかっているということだ。

ウィアー選手が偉大なのは、金を獲ったライザチェック選手を称えつつ、自分のアピールも嫌味にならない程度にしっかりと怠らず、プルシェンコ選手のジャッジング批判も、「あれは(ライザチェック批判ではなく)ルール批判。意見は聞くべき」と理解を示し、自分にメダルが来ないことはわかっていたとしながらも、「観客を旅に連れて行きたかった」と表現者としての本質を見失なわない発言をしていること。そしてなにより、彼のできる最大限のレベルでオリンピックの舞台でそれをやりきったことだ。

高橋選手もトリノでそれをやりきった。しかも、イタリア人ニーノ・ロータの曲、イタリア人監督フェリーニの映画、イタリア人カメレンゴの振付。

今季なかなかまとまらなかった「道」だが、最後の大舞台で感動のフィナーレを迎えることができた。すべてはフィギュアの神様の粋な計らいということにしておこう。

 

 

 







最終更新日  2010.03.26 19:47:37
2010.03.11
カテゴリ:Figure Skating(2009-2010)

またもレア物ビデオのオークション出品のお知らせです。

アメリカで販売された(当然日本未発売)、1994年リレハンメルオリンピックのフィギュアスケート競技のダイジェストとエキシビションがそれぞれ1本ずつ、2本1セット(65分x2本)になったビデオ(DVDではありません)を楽天オークションに出品しました。

こちらです。

http://auction.item.rakuten.co.jp/10896449/a/10000008

興味のある方は、入札ください。

アメリカではオリンピック後にフィギュアスケート関連ビデオが発売になるのが恒例だったのですね。

当然字幕はありませんが・・・まあ、たいしたことはしゃべってません。

残念ながらアメリカ選手中心の作りで、日本選手はまったく登場せず。佐藤有香がショートの連続ジャンプで失敗しなければ、あるいは彼女が入ってきたかもしれませんが、エキシビションのほうにも、入っているのは1つ上の順位だったスルヤ・ボナリーまで。

<競技のダイジェスト>

ナンシー・ケリガン殴打事件があった直後のオリンピックなので、トーニャ・ハーディングとケリガンの練習風景を追いかけた、貴重な映像・・・というか、余計なお世話ショットが入っています。競技はほとんどダイジェストで、比較的長く録ってくれている選手と、本当にジャンプ1つだけしか入っていない選手と、大きな差があり。

男子:

金メダリストになった若きウルマノフの衣装と奇妙なクラシック音楽の編集にビックリ。衣装はたっぷりとしたスリーブ、両肩にタッセル(色のインパクトではピンクのジョニーには負けるものの、2つくっついてるところで勝ってるな)、首もとにフリル、胸にフリル、手首にフリル・・・すごい・・・ミスター・フリルと呼んであげましょう。今ここまでのコスチュームを着たら、返ってお笑いかと。

音楽の編集は・・・なんなんだろう、これ? つながりがサッパリわからない。「これでいいのか? ロシア!」と思わず突っ込みたくなるプログラム構成。いや、よかったんでしょう、当時はこれで。エキシビションのペトレンコ(←バンクーバーでジョニーの隣りに座っていたロシア人のおじさんね)の音楽編集も、ひどいものひどくシュールだった。

銀メダリストになったのは、今やカナダの良心と化した(?)エルビス・ストイコ。なんと、「この1週間で初めて見た」と解説者が驚いたトリプルアクセルのパンクを演じてしまったあと、ジャンプ構成を替えて、トリプルアクセル+トルプルトゥループ、後半に単独トリプルアクセルを決めたところが、さすが。

銅メダリストになったフランスのキャンデロロのフリー演技「ゴッドファーザー」は、かなり長く収録されている。技術的には、この人は、たいしたことはやっていないのだが・・・たいしたことやっていないにもかかわらず、非常に雰囲気があり、華がある。2度のトリプルアクセルは、最後の最後にもってきた単独が大失敗。

トリプルアクセル2度は、本当に男子でも大変なのだなあ・・・

途中、「お休み」しながらのよくわからないポーズには、アナウンサーも、「アッハッハ」。

そのほか、プロからアマチュアに復帰して参戦したカート・ブラウニング、ヴィクトール・ペトレンコ、ブライアン・ボイタノが次々にジャンプで失敗するシーンが・・・

特にカートのインタビューでの涙、「どうしてオリンピックは、ぼくを好きになってくれないんだろう」には、しんみり。カートのショートプログラムは、小塚選手が今年演じたプログラムの源流のような現代的で洒落た作品。解説のスコット・ハミルトンも、「ぼくの意見では、このショートがベスト」と言っていた力作だったのに、難しい連続ジャンプを決めたあと、フリップジャンプでコケ、ダブルアクセルがパンクするという信じられない連鎖ミス。

ボイタノもイーグルのあと、すぐに片手をあげてトリプルルッツを跳ぶという難しいエントリーのジャンプを決めたあとに、ジャンプミス・・・ しかし、この人の男性的な力強さは凄い。

女子:

金メダルはオクサナ・バイウル。なんと公式練習でドイツのシェフチェンコ選手と激突して、脚を縫うケガを負ったのだが、その衝突直後の流血映像が入っている。アクシデントにもめげずに、まとまった演技を披露して金メダリストに。

ジョニー・ウィアー選手が感銘を受けたという、バレエ的な表現はさすが。これだけバレリーナに迫る腕の表現ができる選手は、その後ほとんど見た憶えがない・・・ コーチのガリーナさんも映っている。さほど今と変わらないような?

ついさきごろ、バンクーバーでジョニーとの2ショットを見たあとなので、16年も前のオリンピックのビデオにも映っているというのが、不思議な感覚。

ナンシー・ケリガン。バンクーバーの直前に、親族の事件がニュースになってしまった人。この選手は・・・スケートの基礎は非常にしっかりしています。ジャンプもクリーンに降りて、しっかり「キメ」のポーズ入れてます。ますが、しかし・・・おもしろくもなんともない演技。これでショート1位、総合でも銀メダルまで行ってしまうのだから、フィギュアというのは評判と国力が昔からモノを言う世界だったのだな。

銅メダリストはルー・チェン(陳露)。ほんのちょっとしか出ず。アジア系はどうでもいいって扱い(アメリカ恒例)。

カタリナ・ビットも一瞬映っている。音楽はロビン・フットのよう。バンクーバーではランビエールがショートで使った。

ペア

金メダルはゴルデーワ&グリンコフ。演技に出て行く前に、ゴルデーワさんの髪を直してあげているグリンコフの姿に感動。愛が溢れていますね。ああ、それなのに・・・(以下、自粛)。

演技が始まる前の2人の見詰め合いだけで、もうあてられっぱなし。誰も入れませんね~。誰も勝てませんね~。本当に2人だけの世界です。ああ、それなのに・・・(以下、自粛)。

フリーの演技のあと、ゴルデーワが何か言っているのは、ジャンプミスが気になってグリンコフに確かめていたそうな(これは後にゴルデーワ選手自身が話していた)。でも、グリンコフの手を優しくにぎって話しかけている様子は、とてもそんなテクニカルな話をしているように見えない。本当に容姿端麗な理想のカップル。ああ、それなのに・・・(以下、自粛)。

ミシュクチョノク&ドミトリエフ

なんとなんと試合の前の練習で、リフトを失敗し、ミシュクチョノクが臀部をしたたか打つというアクシデントがあったとか。コーチのタマラさん(バンクーバーで川口ペアのコーチだったロシア人女性)がインタビューで、「もう大丈夫、彼らの準備はできたわ」と答えてるシーンが入っている。

タマラさん、ガリーナさん、そしてもちろん我らがタチアナ・タラソワ・・・ロシアの女性コーチは、本当に長くフィギュアスケートの世界に貢献している。

追記:先ほど入ってきたニュースでは、ドミトリエフの息子さんがジュニア世界選手権で7位に入ったとか。1位は羽生選手。

銅メダルはカナダのブラスール&アイスラー。アクロバチックな演技が素晴らしい迫力。ただ・・・やっぱりペアはロシアでしょう、滑りの美しさが格段に違います。

アイスダンス

一番の目玉は、アマチュア復帰したトービル&ディーン。絶大な人気を誇ったイギリスの最強ダンスペアに挑んだのは、ロシアの(当時)若手グリシュク&プラトフ。タラソワが出ないかな、と思って見ていたのだが、残念ながら姿なし。

この2組の採点については・・・トービル&ディーンに反則技があったことになってしまった。あれはロシアの陰謀だったのか?(←冗談ですよ)。

<エキシビション>

こちらのビデオは、エキシビション演技がかなりちゃんと入っている。今ほどショー化しておらず、照明も明るいので、見やすい。リレハンメルのエキシビションを、これだけまとめてきちんと見られる機会は、もうほとんどないと思う。その意味で、このビデオは貴重。

キャンデロロ・・・なぜか氷上で上半身裸に・・・技術的にたいしたことやってない、意味不明のパフォーマンスにもかかわらず、何をやっても会場は大ウケ。こういうスケーターが新採点システムになってからいなくなったなぁ・・・

ペトレンコ・・・ううう、このペトレンコは・・・ややメタボになりかけている。さらに、いったんプロになってエンターテイメント性を取り入れたのか、明るいダンスを披露しているのだが・・・なんというか、変な動き。氷上のニワトリと言うべきか? プルシェンコの奇妙な動きを少しスローにして重たくしたというべきか・・・

ウルマノフ・・・ううう、なぜにこの袖?? まるでウミウシを腕にくっつけて踊っているよう。ヴェルディからムソルグスキーまでゴタ混ぜの、変な音楽編集は競技と変わらず、いや競技以上。シャンプーハットを首に巻いてるのも・・・中世の貴族のイメージでせふか? 

このおそろしく時代がかったロシアン・センスと、モダンでシャープなブラウニングやボイタノが一緒に競技したってのが、本当にシュールな大会だ・・・どうやってアーティスティック・インプレッションに順位をつけるの? いや、幸いなことに、この大会ではジャンプのクリーンさが重視されたので、採点に特に不公平感はなかったのだ。「勝つために確率の悪い大技は跳ばない」なんて選択肢は、誰も考えていなかった時代。

バイウル・・・サンサーンスの「白鳥」は、素晴らしい。彼女はこのころが人生でも、演技の面でもピークだった。アメリカでのその後の生活は・・・(以下、自粛)。

ケリガン・・・これが銀メダリストかあ・・・きれいに滑ってはいるものの、あまりに単調。ジャンプも決まらない(試合で力を使い果たした?)。ワンパタなポーズを何度も繰り返すのは、バンクーバーのあの選手やこの選手のよう・・・

トービル&ディーン・・・なんと名作「ボレロ」を披露している。

ミシュクチョノク&ドミトリエフ・・・ペアなのに、アイスダンスのよう。独創的な世界観には、見ているこちらも完全陶酔。

デススパイラルに入るときのミシュクチョノクの神秘的な表情にも目が釘付けに・・・ペアとしては、ミシュクチョノクがややオーバーウエイト気味なのだが、独創的な音楽使いといい、ムーブメントといい、芸術性が抜きん出て光るエキシビションナンバー。まさしく永久保存するにふさわしい傑作。

ドミトリエフはこのあと、パートナーを若くスリムなカザコワに換えて、長野で金を獲った。技術的には長野での演技のほうがキズの少ない正確な演技だったけれど、作り出す雰囲気でミシュクチョノク時代を凌ぐことはなかった。カザコワ&ドミトリエフは「ペア練習用模範演技」のようだった。

ゴルデーワ&グリンコフ・・・何も言えません。ベストオブベスト。ペアに3回転ジャンプ、要らないでしょ。この人たちを見ていると、シングルでやればいいそういう技は、ペアにはむしろ邪魔に思えてくる。

氷の上に瓢箪形のトレースを描きながら、2人が交差したり離れたりする場面がある。このスケーティング、バンクーバーの金メダルペアもフリーでやっていたのだが・・・ハッキリ言います、雲泥の差。

ブラスール&アイスラー・・・ペアのアスレチックな魅力を存分に味わわせてくれる。ブラスールの思いっきりのいいパンツのラインも・・・ゴホゴホ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







最終更新日  2010.03.14 15:07:23

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