古処 誠二 「ビルマに見た夢」
第二次世界大戦下のビルマ。兵站作業遂行の責任者である西隈軍曹が主人公。安穏に暮らすビルマ人は働く事自体が日本人と大きく異なり、戦時下とは思えない安穏で暮らしに行き詰まりがない。・・・・・・・・・・・・・・・悲惨な戦闘描写はなく西隈と地元ビルマ人との人間関係が描かれている。・・・・・・・・・・・・・・・作中に登場する10歳の少年が面白い。西隈の前任者である中津嶋少尉より学んだ日本語が軍隊用語や会話でクスっと笑える。「貴様は誰ダ。俺は貴様など知らんゾ」「どこの馬の骨とも知れヌ兵隊にそんなことヲ言われる筋合いはナイ」などなど・・・強気の発言も人一倍働き者のモンネイ少年と西隈軍曹の交流が一時癒やされます。・・・・・・・・・・・・・・117ページ~120ページの3ページビルマ人の旧態依然の価値観と戦争への危機感への説得の言葉がシビア。・・・・・・・・・・・・・・・・ペスト感染予防接種を地域のビルマ村民に強要するも村の長老が反対する場面。感染源であるネズミを駆除することは生き物を無駄に殺生してはいけないとの宗教的観点から否定する長老に対する雪谷士官の言葉・・・・・・・・・・・・・・・・・「いいか長老、そして取り巻きども、耳の穴をかっぽじってよく聞け。そもそもネズミの生死ごときに君たちが騒げるのは呑気に暮らしてきたからだ。未来の不安に目をつむり、国家の危機から目を背け、そして紙一重の安寧をむさぼってきたからだ。はっきり言う。ビルマ人は怠惰である。・・・・・」・・・・・・・・・・・・・・・・・ここからの怒涛の畳み込みの雪谷士官の言葉が圧巻でした。・・・・・・・・・・・・・・・・・最後、モンネイ少年が尊敬する中津嶋少尉の遺言が・・・「すなわちビルマは滅びぬ。人類はやがてビルマ人の心の持ちようがこの世における理想と気づく。人類がビルマの人々を見習うとき地球からは戦がなくなる・・・」