山本 周五郎 「逃亡記」
6つのミステリー時代小説です。権力闘争に巻き込まれる武士など、設定は命がけなのですが、どこか滑稽な物語もありました。そんな中「しじみ河岸」は、貧しい暮らしの市井物で悲しかったです。左官職人卯之吉を殺したと自首するお絹に不審を抱き再吟味する律之助。お絹に問いただしても自分が殺したと言うばかり…お絹と卯之吉は夫婦になる約束を交わした仲。なぜお絹は卯之吉を殺したと言うのか…・そこには暮らしに疲れたお絹の思いがありました…寝たきりの父親と薄弱の弟…お絹が殺しを自首した事で救われる事とは…律之助が再吟味し、本当の下手人が捕まりますが、お絹にとっては、果てのない辛い暮らしが、また続きます…事件が解決して、協力してくれた同輩と酌み交わしたお酒は、律之助にとって苦く悲しい味となります…悲しい物語でした・・・