高城 実枝子 「浮世小路 父娘捕物帖 黄泉からの声」
味で評判の小体な料理屋。美人の看板娘お麻の父は、八丁堀同心の手先、治助。似た者どうしの父娘に、今日も事件が舞いこんで… 一日千両の商いという日本橋から入った横丁・浮世小路で人気の料理屋「子の竹(ねのたけ)」では、美人の看板娘・お麻が今日も大忙しだ。大店「赤倉屋」の主人・清衛門の一人息子が川に落ち、事件は始まった。清衛門は息子の命の恩人・元三に礼を言い、過分な謝礼を申し出るが、なぜか逃げられてしまう。元三は何かを隠している! お麻の尾行が始まった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・人情捕物帖なのですが、岡っ引きの父親ではなくて、出戻りの娘お麻の奮闘物語です。捕物帖と言うと事件のからくりや解決までの流れが中心になりがちで、簡潔で味気ない小説もあるのですが、高城さんは、文章表現が美しく色のある作家さんで、物語を安っぽくせず解決する為の流れだけにしない品のある書き方が深みを感じました。短篇五話は、どれも切なく優しい物語。このシリーズもまた続けて読みたいと思いました。