テーマ:ワイン大好き!(30915)
カテゴリ:ワインプローベ
東京の(株)ラシーヌが今年から新しく扱うドイツ・オーストリア試飲会が開催された。 「従来、フランス・イタリアの小規模生産者のスペシャリストとしてやってきたので、去年の夏まで、ドイツワインを扱うことになるとは思っていないかった」と、代表取締役の合田さんは言う。「日本のドイツワインのイメージは20年前で止まってしまっている。本当はドイツは生産者の世代交代が進むなど大きく様変わりをしているし、産地が様変わりしているのに、それを誰も日本に伝えないのはおかしい。インポーターとして、今のドイツから選りすぐってワインをお届けするのが私達の仕事ではないかと思った」と、新たにドイツワインを始める抱負を語った。 今回紹介されたのはラインガウのエヴァ・フリッケ、モーゼルのA.J.アダム、クレメンス・ブッシュ、ザールのファン・フォルクセン、バーデンのシェルター・ワイナリー。今後扱う予定のラインナップの一部だ。同社では扱いを決める前に、昨年9月から5回ドイツに渡り、各地の醸造所を訪問している。その際基準となったのが1. 灌漑をしていないこと。2. 野生酵母による発酵か。3. 二酸化硫黄の使用を瓶詰前の一回だけに抑えているか。4. 上級キュベには大樽を使って熟成しているか。などだったという。だが、「有機農法で栽培していても、野生酵母での発酵と、発酵前のSO2の非使用は、ごくわずかの造り手に限られていて、皆無に近い」という現実に直面したそうだ。しかしそうした中でも、急斜面の葡萄畑の厳しい労働環境を受け入れ、理想とするワイン造りに邁進している生産者が、今回紹介する醸造所であるという。 エヴァ・フリッケはラインガウのライツ醸造所で働きながら、2007年頃から自分で趣味のようにして栽培・醸造をはじめた女性醸造家。大きな醸造所でワイン造りに携わっていながら、なおかつ自分でもワインを造ろうという意欲あるいは野心は素晴らしい。ワインにもそれが現れていて、購入した葡萄で醸した2011ラインガウ・リースリングからフローラルで桃の香りがしてミネラル感に富み、素晴らしくチャーミング。2011クローネは深みと凝縮感、エレガントさはあるものの若干まだ閉じている。 モーゼル中流で2000年に醸造所を立ち上げたA. J. アダムは2011年産がもうリリースされていることに驚くが、ワインとして一応仕上がっていた。奥行のある澄んだ香りにミネラル感が詰まって、甘口のカビネットとシュペートレーゼはしっとりとした甘味で肩肘はらずにリラックスして飲める。オルツリースリングのドーロナー、ピースポーター、ホーフベルクはテロワールを表現したモーゼルの辛口リースリングの一つの到達点。まるで石をなめていようなミネラル感とバランス、奥行があり、中でもホーフベルクにその印象が強かった。 アダムの後はファン・フォルクセンのザール・リースリング2011は若干かすむ。実直でザールらしいミネラル感。食事のときに飲むべきワイン。2010シャルツホーフベルガー・ペルゲンツクノップは奥行があり、丸いボディに均一に様々な要素が詰まっている感じ。まだ若々しく、本領発揮まであと5年は待ちたい。 クレメンス・ブッシュはまさにモーゼルらしいリースリング。酸とミネラル感が明瞭で、まるで火を通していない生野菜のような印象を受ける。その分鮮烈で個性的。2010フォン・ローテンシーファーと、とりわけ2010ローテンプファードGGの、赤色シーファーに由来するというハーブのニュアンスとフラワリーな甘味がエレガントに感じられた。参加者からは赤色シーファー、灰色シーファー、青色シーファーのワインの個性の違いがしばしば質問に上がり、土壌とリースリングの明快な関連性を知りたいという意見が多かった。 バーデンのシェルター・ワイナリーは2010シュペートブルグンダーとピノ・ノワール。前者の方が廉価だが、私はとりわけ前者の香りに品質の高さを感じた。味はさほど複雑ではないが、でしゃばることなく非常に快適な飲み口。参加者の中にはバーデンのピノはブルゴーニュを追いかけているばかりでつまらない、ラインヘッセンやファルツにあるように、肩の力の抜けたピノの方が面白い。ラインガウやアールの甘味のあるピノは、四川料理に素晴らしく合うという意見もあり、なるほどと思った。 この他オーストリアからセルナー、ピーター・マルベルク、ピヒラー・クルツラー、エルンスト・トリーバウマー、ビルギット・ブラウンシュタイン、セップ・ムスターが出品されていた。私はなかでもセップ・ムスターが素晴らしいと思ったが、ピヒラー・クルツラーの緻密なアロマも捨てがたい。ピーター・マルベルクは異端児と聞いていた割にはまっとうなワインであった。 いずれにしても、こうして新しいドイツワインに本腰を入れて取り組もうというインポーターが現れているのは心強い限りである。これが刺激となって、ドイツワインを新たに扱おうという会社が増えてくることを望みたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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