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2015/03/10
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モーゼルの試飲エリアは川沿いの、窓から差し込む陽光で会場で一番明るい場所にあった。とりあえず、一番手前のテーブルにいたDr. フィッシャーから試飲を始めた。

リストを見ると辛口とファインヘルブがそれぞれ1種類で、残り4種類は甘口だった。これは手っ取り早い。最初は辛口からファインヘルブだけ試飲して回って、時間があれば甘口の予定だったからだ。私はいつもそうしているので、大抵の場合は甘口まで辿り着けない。日常的にも甘口は飲まない、飲む機会がないので、あまり関心がない。ドイツワイン好きの中では少数派かもしれない。

例えば、マインツのこの試飲会に毎年日本から訪れるJ氏は甘口しか嗜まない。アルコールに弱いのだそうだ。日本で今も売れているドイツワインは甘口がメインらしい。先日Foodexで、とあるインポーターから聞いた話では、2013年産は生産量が少なかったのでシュヴァルツカッツ-あの黒猫がエティケットに描かれている-が在庫を切らしてしまい、大手顧客からクレームがついたそうだ。ドイツワインの日本でのシェアは現在約2%だが、2012年, 2013年と生産量が少なかったため、2013年度の輸入量は前年比92.8%にダウンしているのは、主にこうした大量生産の甘口の供給不足が原因らしい。

一方、ドイツで生産される高品質ワインの約65%は辛口かオフドライである(2013年)。高品質ワイン(Qualitätswein, Prädikatswein)はドイツワイン全体の96.2%を占めるので、少なくとも6割は辛口系が占める。そしてドイツ国内ではもっぱら辛口系が飲まれ、甘口は輸出が多い。昔のドイツ人は友人と集まっておしゃべりを楽しむためにワインを飲んだ。その頃は高度成長期で、戦後ようやくケーキやデザートなど甘いものを楽しむ余裕が出て来て、ワインに限らず口当たりの良い甘口が好まれた。しかし1985年の不凍液混入事件を契機に甘口人気に陰りが出て、辛口の需要が高まった。90年代の赤ワインブームも手伝って食事とともにワインを飲む機会が増え、次第に辛口の消費が増えて行った。同時に辛口醸造のノウハウも向上し、果汁糖度による品質等級以外の、辛口における格付け制度が模索され、それがVDPが主導するドイツのグラン・クリュからの辛口として実を結ぶのが2001年。もっとも、ラインガウでは独自に1999年から同様の格付け畑からの辛口を認定する制度を始め、やがてエティケットに土壌の名前を表記することがちょっとしたブームになったりと、ドイツワインは21世紀に入ってからすっかり辛口系が注目を集めるようになっている。

にもかかわらず、日本では甘口が未だに最も売れているとはどういうことか。ドイツワインならではの魅力のあるワインであることはわかる。あのフルーティで優しい、アルコール濃度の低い味わいはドイツならではだし、何より親しみやすい。それのどこがいけないのか?いけなくはない。ただ、それしか目に入らないのではもったいないと思う。甘味と酸味のバランスのとれた、畑と生産者と生産年の個性が刻印された、ドイツの職人的な業の光る手作り感に満ちた高品質な辛口系ワインが非常に数多くあるというのに、工業的に量産された手頃な価格の品質もそれなりの、口当たりが良いだけの取り柄の甘口ばかり売れているというのでは、やはりどこかおかしいし、何かが間違っているし、歪んでいると言わざるを得ない。

話をVDPのDr.フィッシャーのワインに戻すと、その日試飲に出ていた6種類のうち4種類が甘口であったところからも、この醸造所が輸出に力を入れていることが見て取れる。ただ、試飲した辛口とファインヘルブは、なかなか魅力的だった。3年前の印象から一皮むけて、垢抜けた感じがした。果実味が磨かれた感じで濁りがなく、柑橘系のスッキリした辛口にオレンジのアロマティックなファインヘルブと、ずいぶん良くなっていた。

後から知った話では、2013年産からザンクト・ウルバンスホーフのニック・ヴァイスと、南ティロルのWeingut J. HofstätterがDr. フィッシャーの共同経営者に加わったそうだ。納得である。ただ、その日ワインをサーヴしていた若者はそれをはっきりとは教えてくれなかった。私の聞き方がよくなかったのかもしれない。

とにかく、モーゼルは変化を続けているようだった。





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Last updated  2015/03/11 12:18:20 AM
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李斯。@ お久しぶりです。 御無沙汰しております。 何時も拝見してい…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その64(04/05) 「ムスカテラー辛口」は私も買おうかと思…
mosel2002@ Re[1]:ひさびさのドイツ・その54(03/14) pfaelzerweinさん >私の印象では2013年…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その54(03/14) 私の印象では2013年からは上の設備を上手…

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