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カテゴリ:業界ネタ
少々前の話になるが、テレビ東京系の『ガイヤの夜明け』というテレビ番組で、
日本酒業界の新たな取り組みについて報じていた。 その中のひとつに、ある大手コンビニチェーンが大手日本酒メーカー数社とタイアップして、 各社バラバラに造らせた商品を、統一感のある斬新なパッケージの容器に入れて、 共通したコンセプトで売り出すというものがあった。 ビール類や低アルコール飲料のカテゴリーでは、もはや他チェーンとの差別化は困難だとするコンビニ側と、 何とか若い世代に日本酒を手に取ってもらいたいと切望する、メーカー側の思惑が一致してのプロジェクトだ。 ただ私はこの番組を観て、言い様のない違和感を感じた。 確かにここまで日本酒が低迷している現在、「何とかしなければ」という危機感が募るのはよく分かる。 しかしだからこそ、「より深く長く定着させるための仕組みづくり」が必須だと思う。 ところが先日の番組で紹介されていた試みは、言っちゃ悪いがあくまでも「小手先の手段」でしかない。 その商品を飲んで「美味い!」と思ってもらえば、とりあえず当面その商品は売れるかもしれない。 しかしその商品のユーザーが、そのまま「日本酒ファン」になっていく可能性は低いとみる。 なぜなら同じような試みは、もう10年も20年も前から行なわれてきているからだ。 確かに今回のように、コンビニを巻き込んだ(というより、コンビニが仕掛けた)施策ではないにせよ、 大手酒造メーカー各社は今まで、既存の日本酒のイメージを打破すべく、 味や容器からネーミングや広告に至るまで、とにかく斬新なイメージで若者にアピールしようと、 躍起になって商品を作ってきた経緯がある。 中にはそこそこ当たった商品もあったかもしれないが、 それが「真の日本酒ファン」の拡大に至っていないのは、今日の状況を見れば明らかだ。 何故か?........それはそういった商品があくまで“亜流”に過ぎないからだ。 そして日本酒の“本流”は、とみると、これが相変わらずのお粗末振りなのだ。 低価格のパック酒などは言うに及ばず、それ以外の商品群にしてもある一定のライン以下の商品になると、 如何に低コストで大量に造るかということしか考えていないような、そんなお粗末な造りが横行している現状だ。 こんなことでは、せっかく一部の商品が新しいユーザーを日本酒業界に引っ張ってきても、 そこに長居する可能性は低いだろう。 ここでちょっと焼酎業界に目を転じてみよう。 本格焼酎、特にイモ焼酎に関しては、一時のブームは去ったとはいえ、完全に安定期に入っている。 ほんの10年も前、誰も見向きもしなかった時代を思い出すと、隔世の感がある。 しかし考えてもみて欲しい、イモ焼酎がここまで来るのに、 業界として何らかの「奇をてらった」手段を講じてきただろうか? 私の記憶の限りでは、そういうことはほとんど無かったように思う。 今売れている銘柄だって、ごく普通のビンに入った、ありふれたネーミングの商品がほとんどではないか。 イモ焼酎ブームというものが、確かに一部の商品や一握りの仕掛け人によって 牽引されてきたことは否めないだろう。 しかしそれが今日のように定着するためには、 「業界全体のレベルアップ」というものが必要不可欠であったことも、また無視できない。 実際今どこのメーカーのイモ焼酎を飲んでも、昔のような 「ただ臭いだけの」イモ焼酎(これはこれで好きな人もいるが)というものにぶち当たることは少なくなった。 「ハズレ」が少なくなれば、特定の銘柄を飲んで気に入った人は、 次々と新しい物にチャレンジすることが出来る。 その積み重ねが、現在のイモ焼酎の地位を築いているといってもいいだろう。 そう、つまりイモ焼酎の隆盛の要因は、業界全体のレベルアップにあったといえるのだ。 ここのところを、日本酒業界は学ばなくてはいけないだろう。 日本酒復権のために今しなければいけないことは、 消費者に媚を売ることではなく、いい加減な商品を一掃することだ。 極端なハナシ、税制上「清酒」を名乗れるカテゴリーの水準を、今以上にうんと引き上げるのだ。 例えば「醸造用糖類」や「酸味料」を添加した物は認めないとか、そういうことだ。 諸外国の酒に関する法規制に鑑みれば、個人的にはもっとハードルを上げてもいいと思うが。 確かに当座の売上を確保したいメーカーにとっては、あるいはこれは厳しいことかもしれない。 あるいはそういうお酒を日常的に使用している飲み屋さんでは、 結果的に酒の価格が上がってしまうということになるだろう。 しかし少なくとも、粗悪な日本酒を飲んで、 「日本酒ってこんなに不味いものなのか」などという誤解をされることだけは、絶対に避けなければいけない。 飲み屋さんサイドでも、今一度日本酒に対する認識を変えて欲しいと思う。 料理にはとことんこだわるのに、 日本酒なら何でもいいという程度の認識のお店があまりにも多いのは、非常に残念なことだ。 とにかく日本酒にお客を呼び戻すには、「とにかく良い物を造る」という“王道”しかありえない。 “早道”には、即効性はあっても、持続力は無いのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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