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テーマ:ニュース(99476)
カテゴリ:業界ネタ
アサヒビールが販売するイモ焼酎に、『三笠フーズ』が事故米を転売した『西酒造』の造った原酒が
使用されているということが判明した。 ただ、 <原料米について農林水産省は、「健康には問題のないレベル」としており、 また、原酒の弊社分析検査でも残留農薬は検出されないことを確認しており、健康への影響はない> (アサヒビールHPから引用) ということだ。 つまり飲んでもまったく問題はない商品なのだ。 しかしメーカーとして、 「ですから皆さん、どうぞ安心してお飲み下さい」などと言えるような状況ではなくなってしまっている。 同社は一斉に該当商品の回収を始めた。 何の問題もない商品を、だ。 この商品はアサヒビールが、自社ビールを扱う飲食店向けに大々的に売り込んだ商品なので、 特に業務用商材として、相当な数が市中に出回っている。 それを回収するための手間やコストたるや、大変なものである。 それに新聞広告やHP上で消費者向けに、 該当商品をメーカー宛に送ってもらえれば、商品代金を送付する旨の告知も行なっている。 この場合、「生産者価格」で出荷した商品を「小売価格」で買い取ることになり、 我々が得ている中間マージンの分までもメーカーが負担することになるわけだ。 いくら緊急措置だとは言え、そこまでしなきゃいけないものなのか、という気もするが、 消費者が販売店に返す手間も考えると、まあこれくらいは仕方ないだろう。 それもこれも、雪印乳業の一件以降、 「企業倫理」とか「製造者責任」ということが、ことさら重要視されている結果だろう。 これが商品の安全性にホンの少しでも疑惑のあるものなら、そんなことも言ってられないだろうが、 アサヒビールの場合にはキチンとした検査をした上で、メーカーとして安全宣言をしたのである、 胸を張って継続販売してもいいはずなのだが、現実はそういうわけにもいかないらしい。 確かに商品を回収してしまえば、消費者としての安心度は増すかもしれない。 ただしその代わり、メーカー側は何億円と言う大きな損害をかぶることになる。 これがアサヒビールのような“超”大企業ならまだいいが、 調査が進めば進むほど、まだまだ多くの酒造会社の名前が上がってくることは大いに予想される。 そしてごく小さな蔵元の商品で同じことが起こった場合、 やはり消費者はアサヒと同じく「全品回収」を期待するだろう。 しかしそのことは、その蔵元の「倒産」に直結しかねないのだ。 乱暴な言い方をすれば、我々消費者が安全性を“過剰に”求めようとすることによって、 逆に中小の酒造メーカーの社員や家族を、路頭に迷わすことになるかもしれないのである。 そういった犠牲の上に「安全神話」というものが成り立っているとすれば、 何とも皮肉としか言いようがない。 断っておくが、私は決してアサヒビールの措置にケチをつけるつもりはない。 蒼い顔をしながら、汗をかきかきウチの店にやって来た同社の営業マンの姿を思い浮かべると、 到底そういう気にはならない。 ただアサヒビールがそうせざるを得なくなるような「潔癖すぎる」国に、この国がなってしまったことに、 深い憂慮の念を抱いているのだ(決して潔癖症の方を個人的に責めるものではありませんので、念のため)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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