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テーマ:ビールを語ろう(2279)
カテゴリ:業界ネタ
サントリーがイオンやセブン&アイに対して、
格安ビール風飲料(いわゆる“第3のビール”)PBの製造元として、商品を供給することになった。 これが発売されるようになると、ビール業界の勢力図は大幅に変わってくるかもしれない、 それくらいのインパクトはある。 何せ350ml缶で小売価格が100円というから、これはもう掟破りの価格だ。 いったいどこまで価格を下落させれば気が済むのだろう、というのが正直な感想だ。 ただウチとしては、このジャンル(=“第3のビール”)は「積極的に売る商材に非ず」というスタンスなので、 この顛末がどうなろうが個人的にはさほど影響はない。 ただ、一業界人としては、どうしてもこの行く末が気になる。 今回のこのPB商品販売に当っては、「消費者の強い要望を受けて」といったようなことが言われているが、 正直なところ、どれだけの消費者が具体的にこういった要望を掲げたのだろう? そりゃ、安ければみんな買うだろう、結果はおのずと出せるだろう、 しかしそれだけでは「後付けの理屈」でしかない。 要は、サッポロをシェアで抜き差って業界3位の地位を固めたいサントリーと、 古い商慣習の支配する酒類業界に風穴を開けたい流通大手の、それぞれの思惑が合致しただけのことで、 結果的にお客が喜べば、「消費者のため」という大義名分は立つ。 しかしその代償は限りなく大きいと思う。 まず間違いなく他の大手3社が、何らかの形で廉価に向けてのアクションを起こす。 とりあえず今は各社とも「追随はしない」方針のようだが、 なんのかんの言って「利益額」よりも「売上高」を最優先する業界だ、 このPB商品の影響が自社商品の売れ行きに及んでくれば、何らかの形で廉価な商品を投入してくるに違いない。 そうなると後は消耗戦に突入だ。 各社が廉売合戦に明け暮れることになれば、 当然ながら中間卸業者、運送業者、原料調達先、資材調達先などにシワ寄せが来るのは目に見えている。 また直接の競争相手でもある酒ディスカウントストアなどは、 スケールメリットではスーパーに及ばないものの、同程度の価格が求められるだろうから、 かなり厳しい状況に追いやられそうだ。 影響は各方面に及ぶことは必至で、それが廻りまわっていつか自分の身に及んでこないとも限らない。 100円だ、100円だと言って喜んでいる場合ではないのだ。 あと、私自身の感覚で最も気に掛かるのが、“本物の”ビールとの価格差の拡大だ。 言うまでもなく、「発泡酒」も「第3のビール」も、いわば「まがいもの」だ。 一応酒税法上では『ビール』を名乗ることは出来ないものの、 一般的な感覚では『ビール』と同列に捉えられていると言っていいと思う。 本来「ビール」に対して、「発泡酒」や「第3のビール」が“安い”商品でなければいけないのだが、 今や視点はすっかり逆転していて、 「ビール」がそれらに対して相対的に“高い”商品と思われるようになってしまっている。 いわば「基本的な商品」が「高級品」になってしまうわけだ。 今回のように「100円モノ」が登場し定着すれば、その感覚により一層拍車がかかるだろう。 何が本物か、何が基本か、その軸足をビール会社にはキッチリと押さえて欲しいところなのだが、 「販売数量至上主義」の前ではそんな思想はかすんでしまっているかのように見える。 日本酒の長期低落と同じ轍を踏んで欲しくはないと思うのだが..........。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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