|
テーマ:「屋業」の人々(234)
カテゴリ:業界ネタ
今回も統一地方選挙が終わった。
統一地方選挙は国政選挙と違い、私たちのごく身近な舞台で行なわれるから、 私たちの生活や仕事にも何かと影響がある。 今はもうそんなことはないが、県議・市議の選挙というのは、 かつては私たちの商売にとっては、これ以上ない稼ぎ時だった。 選挙事務所を開設すれば「祝・事務所開き」、告示日には「祈・必勝」、 当選が決まれば「祝・御当選」.....という具合に、 それぞれの節目にそういったのし紙を掛けたお酒(だいたい一升瓶2本)を大量に売り捌いたものだ。 こういうときには銘柄が特に問われることはなく、だいたいは酒屋サイドに任されるので、 特に縁起の悪い名前でなければ何でもオーケー、自分の売りたい銘柄を売ることが出来た。 中には地酒メーカーで、「必勝」と大書した包装紙にあらかじめ巻いてあるお酒を 出荷するところもあり、結構いい商売をしていたみたいだ。 もちろん今ではそういった需要は、ほとんどと言っていいほど無くなってしまった。 公職選挙法だったか政治資金規正法だったか、今はもう忘れてしまったが、 その手の法律の改正がキッカケだったようにも思うが、 候補者の方でもクリーンさを演出する手段の一つとして、そういったものを受け取らない、 ということを明言する人もいた。 ただこういうお酒の提供が本当に法に触れるのかどうか、というのが、 実際のところ私にもよく分からない。 以前ネットでいろいろと調べてみたことがあったが、 これがまた解釈がずいぶんバラバラに分かれていた。 陣中見舞はダメだが、当選後の御祝は良い、とか、 現金ならOK(もちろん収支報告所に記帳の義務アリ)だが、お酒はダメ、とか、 いろいろと言われているが、とりあえずヤバそうなことなら止めておいた方が無難、 ということなのだろう、みなさん自粛しているようだ。 もっとも「昔は良かったなあ」というノスタルジックな気持ちで、これを書いているわけではない。 確かに商売としてはかなりの旨みがあったが、お酒にとっては不幸なことだったと、今にしてみれば思う。 日本酒離れが加速していたにもかかわらず、こういうときのツールは相変わらず日本酒で、 誰もビールなどを贈ろうとはしない。 要するに“楽しむための”酒ではなく、単なる“モノ”でしかないのだ。 その結果、誰にも飲んでもらえないほどの量の日本酒が、市中に溢れかえることになる。 それらがその後どうなったか分からないが、受け取った候補者が有権者にバラまくと違法なので、 酒屋や飲食店に安価で引き取ってもらっていた、などという話も聞いたことがある。 なんとも可愛そうなお酒たちではないか。 量的に見ると一時よりもずっと日本酒の販売量は減っているが、 今は皆さん、自分で楽しむためのお酒を納得の上でおカネを出して購入されている。 かつてに比べればはるかに健全な状況だと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年04月26日 23時08分10秒
コメント(0) | コメントを書く
[業界ネタ] カテゴリの最新記事
|