ヒトヒラノ ハナビラ ACT9-4
夜、私はいつもの『異界』へ翔んだ。このときばかりは、筋肉痛のきしみもない。 足元のもやを蹴散らかしながら、足早にいつもの『闘技場』へ向かう。 「あ…?」 シャロンともう一人女の人がいた。うっすらとその女性に感覚を感じた。「きたわね」「シャロン…いろいろごめんね、私…」「もういいって」もうわかっちゃってるんだ…私の記憶が、大体戻った事。そのうえで許してくれている…。「自己紹介していいかな、マイスイート」「どうぞ」シャロンの肩に腕をのせて、その女性が言った。それに…シャロンに”マイスイート”?「ちゃんと会うのは初めてよね。リルハニー。アタシ、猪ノ鹿蝶子って言うの。よろしくね」(ね)のところで、投げキス。ど、どんな性格なんだ?それに、”リルハニー”って、私の事?ちょっと困惑する。この人がここにいるってことは、私達が知らなかった”ナイトウォーカー”の仲間ってこと?「あ、さきに言っとくけどぉ、アタシ、”妖しハンター”なの。”ナイトウォーカー”じゃないからぁ、そこんとこ、ヨ・ロ・シ・ク・ねん♪」い、いちいち色っぽい人だな。その色っぽくて背の高い”蝶子さん”は、すいっとシャロンの後ろから出てきて、私の前にずいっと来た。手を膝にあてて、私の目線にあわせる。ふわっといい香りがする…。「んー、やっぱ、背の低い子はかーわいい♪」「むぐっ」言うなり蝶子さんは私をぎゅうっと抱きしめた。張りのある弾力性の肉弾に、息が苦しくなる。「蝶子さん…アタシの時とえらい違いだわ…」「あらー、ちゃんと”小娘”から、昇格したでしょお、”マイスイート”」「も、も、も、もういいですからあっつ」私は焦ってじたばたと離れた。「あらぁ、残念」な、何者よ、この人☆「じゃ、リルハニーとマイスイートのお手並み拝見といこうかしら」蝶子さんは、にっこりと嫣然に笑った。その背後の先から、扉が開く気配がした。私とシャロンは反射的にそちらの方を向いて、走り出した。この感覚…久しぶり。身体がわくわくとしてくる。 裕那と一緒に駆ける。この感覚、久しぶり。やっぱり、アタシ達はこうでなきゃ。アタシは喜びにあふれていた。気合が入るのがわかる。そして扉から、影が飛び出てくるのがわかる。数は…2、3…まだ満月前だから少ないな。でも、裕那のリハビリにはちょうどいいか。「行くよ!」「はいな!」裕那の声も弾けていた。これはいい傾向だ。 影と対面。2人でざっと互いに背を向けて、自分達のまわりをぐるぐるまわる影に備えていた。