テーマ:試写会で観た映画の感想(680)
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2/7より全国東宝系にて公開。
監督・・・降旗康男 出演・・・常盤貴子、伊勢谷友介、香川照之、布袋虎泰、他。 ・物語序盤・ 昭和20年、満州・牡丹江。 満州でも有数の造り酒屋である森田酒蔵に、関東軍の兵士が詰め掛けてきた。 開門せよと怒号を飛ばす兵士達に従って、女主人の森田波子は彼等を庭内に入れる。 兵士達の目的は、森田家の家庭教師をしているロシア人女性エレナだった。 エレナはロシアのスパイだという事で処刑される事に。 彼女の首を撥ねたのは、波子の知人で関東軍の諜報員・氷室だった…。 時を遡る事、十一年前。 波子は夫・勇太郎と三人の子と共に、新天地である満州にやってきた。 見渡す限り地平線しか見えない広大な台地。 案内してきた陸軍中佐・大杉は田舎過ぎて驚いただろうと言うが、波子は地の果てとは素晴らしいと目を輝かせる。 その後、勇太郎と波子夫妻は、かつて誓い合ったように、満州の地で造り酒屋として大成する。 しかし徐々に日本の戦況は悪化し、彼等の安泰な生活にも過酷な時代の波が押し寄せてくる…。 なかにし礼氏が実体験を基にして書いた小説の映画化です。 撮影を中国東北部で行った事もあり、満州の広大さ・圧倒的な大陸の風景が堪能できました。 主人公のモデルとなるのは、なかにし氏の母親ですが、非常に逞しい女性です。 それと共に、とても進歩的で開放的な婦人でもあります。 日頃贔屓にしてもらっている関東軍への慰労の為の園遊会で、真紅のドレスを纏いワルツを踊る波子。 多くの女性が、もんぺ姿でお洒落など許されない時代です。 ハイカラな女性だったのでしょうね。 恋愛にも奔放で、かつての恋人である陸軍中佐と怪しいムードだったり、若い諜報員の氷室にも惹かれたりと、自分の意志のままに生きてゆきます。 でも厭味は全く感じませんでした。 時代の荒波に立ち向かい、子供達を守りながら、懸命に生きようとする強い意志があったからでしょうね。 守ると言っても、一方的に保護するのではなくて、「子供でも母親に頼りきるな。自分で生きようと強く思うんだ」と教え込む厳しさが、生温い時代の母親にはない凛々しさを感じさせました。 一人一人精一杯生きていなければ、すぐに死んでしまう時代だったんですものね。 彼女に関わる男達が全て潔い死を選択してゆく中で、人間の価値は生き抜く事にあると執念を燃やす波子。 贖罪と言って死を選ぶ事は逃げでしかない。 生きてこその勇気・強さであるという彼女の信念を強く感じました。 映画は波子達が満州を去る所で終わりますが、この後も壮絶な人生があったのだろうなぁと想像してしまいます。 なかにし氏の別の小説「兄弟」では、凄絶な兄弟関係が描かれていますが、それがこの作品の途中で出征した兄であると考えると、感慨深いというか、戦争の重々しい傷跡を思わずにはいられませんね。 氷室役の伊勢谷さんですが、途中で阿片中毒になります。 それがとても顔色の良い艶々とした中毒患者で(笑)。 モデル出身で顔が命なのかもしれませんが、患者を演じる時は窶れる位のプロ根性は見せてほしかった。 あと中国人役で出てきた大杉漣の、中国訛りっぽいけどとても流暢な日本語には苦笑しました。 何故普通に中国人俳優を起用しなかったのか謎です。 全体的にはなかなか良かったと思います。 でも波子って、実は結構悪い女なんですよ。 それくらいの根性が無いと、生き抜けないですけどね。 エンディングのテロップ、俳優や関係者の名前が全部手書きでした。 それぞれ筆跡が違うので、多分全て自筆なのでしょう。 細かいけれど、お洒落だなぁと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jan 29, 2004 11:26:43 PM
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