テーマ:TVで観た映画(3913)
カテゴリ:映画鑑賞記録
"AMISTAD"
監督・・・スティーヴン・スピルバーグ 出演・・・マシュー・マコノヒー、アンソニー・ホプキンス、ジャイモン・フンスー、モーガン・フリーマン、ナイジェル・ホーソーン、アンナ・パキン、他。 ・物語序盤・ 1939年。キューバ沖。 数十名の黒人奴隷を載せて航行中のスペイン船アミスタッド号で、囚われていた黒人達が反乱を起こし、乗組員達を殺害した。 彼等は母国アフリカを目指したが、結局二ヵ月後に、アメリカ沿岸で警備艇に捕獲される。 黒人達は捕らえられ、全員投獄された。 スペイン政府は女王の名の下に、所有物として船と奴隷の返還を要求。 当初、単純な検案の筈だった事件は、内外の政治的な問題に絡み、大きく取り沙汰されるようになる。 黒人側の弁護士ボールドウィンは、自慢の弁舌を奮い、裁判を有利に進めようとするが…。 アミスタッド号の名前は聞き及んでいたが、詳しい経緯については全く無知な状態で鑑賞。 まだ奴隷制度が合法とされていた時代である。 と同時に、各国で奴隷制度は非人道的であると、反対運動が起こり始め、非常に微妙な時期でもあった。 この作品の争点にもなるが、この時点で既に、アフリカから黒人達を拉致して奴隷として売買する事は、協定違反となっていた。 更に問題を複雑にする点が、反乱事件が起こったのが公海上であり、開廷地は第三国のアメリカという問題である。 こうして当初、単なる殺人事件もしくは財産の所有権争いと思われていた事件は、アメリカ、スペイン、イギリス間の国家的問題に発展し、更にアメリカ内部では、奴隷制度の賛否を通じて北部と南部との衝突の火種ともなる大問題となった。 作品は非常に重厚な雰囲気で、丁寧な作りとなっており好感が持てた。 奴隷制度という大きな問題を扱う中で、黒人一人一人を一己の人間として見詰めるという始点が良かったと思う。 とかく政治的な大事の前では、一個人の人格など無視されがちであるが、法廷に立つ黒人達には、それぞれの無視してはならない人生の物語がある。 この点を思い起こさせてくれた事を評価したい。 奴隷制反対の立場を取った元大統領役のアンソニー・ホプキンスの演説は感動的なものだった。 黒人ならずとも奴隷制度は何処にでもあるという点を根拠にする奴隷制度支持者に対し、アメリカの独立宣言の精神を思い出せと告げる。 アメリカこそ、かつてイギリスの隷属国として、自由を奪われ不当に収益を奪われてきた歴史を持つ国だったのである。 全ての人間は平等だと、イギリスに対して独立を宣言したアメリカが、同じ人間である黒人達を家畜のように扱う事は、独立宣言の精神に反していないのか。 非常に重いテーマの映画であったが、色々と考えさせられ、勉強になったと思う。 スピルバーグは軽めの娯楽映画から、今作や「シンドラーのリスト」のような重厚な歴史作品まで、様々な作品を作っているが、実際の所、どの路線が一番好きなのだろうか? 個人的には大作でない軽妙な小品も好きだが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Nov 17, 2004 12:33:23 AM
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