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カテゴリ:映画鑑賞記録
"LOFT" 監督、脚本・・・黒沢清 出演・・・中谷美紀 春名礼子 豊川悦司 吉岡誠 西島秀俊 木島幸一 安達祐実 亜矢 鈴木砂羽 野々村めぐみ 加藤晴彦 村上 大杉漣 日野 ・物語序盤・ 春名礼子は賞も獲得した売れっ子作家だが、最近はスランプ気味だった。 軽く新しいジャンルをと、編集部長の木島が与えたのは、陳腐な恋愛小説の仕事だった。 精神的に来るストレスのせいか、礼子は体調を崩し、泥のような液体を吐くようになっていた。 礼子は何処か執筆に集中できる場所があれば、仕事も捗ると、木島に東京郊外の閑静な場所にある洋館を用意してもらった。 引っ越しの際、前の住人が置いていった荷物が残っていたが、その中には原稿用紙に書かれた小説もあった。 周囲は自然に囲まれ、最初は居心地の良い場所だと思っていた礼子だったが、深夜裏手にある廃屋に、人間の遺体のような物を運び込んでいる怪しい男を見掛けて、恐怖を覚える。 同僚のめぐみの調べにより、その建物が大学の研修所で、男は吉岡誠という大学教授だという事が判明する。 吉岡は最近池の底から発見された千年前のミイラについて研究しているらしい。 気味が悪いと思いつつも、どうしても吉岡と運び込まれた人間らしき物が気になる礼子は、研修所に忍び込んで、中の様子を偵察するのだった。 極力台詞を減らし、BGMも無い、静寂の世界が広がる、独特の雰囲気です。 最後まで観ても、これが真相だという結論は出ません。 ただ、ずっと薄気味の悪い空気が漂う世界を、観客にも共有させてくれます。 泥にはミネラルが豊富に含まれている為、若さと美しさを保とうと、昔の女性は泥を食べたという話が、この物語の中心的エピソードです。 泥を飲んだ事で千年以上も、水底で腐敗せずにいたミイラ。 そのミイラには曰くがあり、実は数十年前にも一度引き上げられており、理由は判らないが、再度沼に沈められたという経緯があります。 儀式の生贄とされたのか、自らの美貌を永遠にする為に泥を飲んで死んだのか、彼女が死に至った経緯は判らない。 だがミイラとなった高貴な女性は、永遠を手に入れたと同時に、消えない愛という呪いを残す存在となる。 吉岡は、この呪いに縛られている。 安達祐実演ずる亜矢という女性は、恐らくミイラの化身としての位置にあると推測される。 ミイラが生きていた時代の女性の平均身長と同じ位と思われる、身長の低い安達を起用したのも、ミイラとの同一視を引き出す鍵だろう。 そして彼女も愛の呪いを齎す女だった。 彼女は作家を志す女性だったが、どうやら木島と関係があった模様。 礼子が執筆に専念する為に宛がわれた洋館に、亜矢は以前住んでおり、その後失踪して行方不明のまま。 なかなか話が進展せず、何故、吉岡が亜矢の幽霊に悩まされているのか、その関連と理由が判りません。 徐々に謎解きはなされてゆくのですが。 全てが霧に包まれた世界のような、違う時間で支配されているような、不思議な空間で繰り広げられる物語です。 吉岡を地獄に連れて行くと言う亜矢。 愛の呪いから逃れようとする吉岡。 吉岡と惹かれ合い、彼を呪縛から解放しようとする礼子。 そして不穏な気配を漂わせる木島。 起承転結のあるストーリーではありません。 結局何だったのかという点も、観客に大いに推測の余地を持たせる作りです。 ただ、漂う空気はとても不気味で、謎めいたパズルのピースだけを与えられた観客は、何とも言えない怖さを感じ続けると思います。 最後まで淡々とした静かな時間が流れて、謎は謎のまま深い水底へ沈めてしまうという感覚なので、好き嫌いが分かれる作風であると思われますが、私は好きですね。 ↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Apr 27, 2008 09:50:19 PM
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