少し前から白石一文という作家にはまっています。
最初に読んだのは「不自由な心」という本でした。
身近な、どこにでも起こりうるテーマを、深く掘り下げて
抜群の文章力で読者をグイグイ惹きつけていくところが気に入りました。
そしてこの2日間で
私という運命について
という作品を読んだのですが、とても考えさせられる内容でした。
というのもどちらの作品にも共通しているのですが
ガンという病気が大きく関係しているのです。
(どちらの本も、読み始めるまではガンの話題が出てくる本だとは
全く知りませんでした。)
実は一作目を読んだとき(病気がネタにされているみたいで
嫌な感じだな…)とチラッと思ったのです。
ところが今回読んだ「私という運命について」は
フィクションだとわかっているのに
(この人はどうしてここまで病気の人の気持ちがわかるのだろう)と
ある意味ショックに近い感動を覚えてしまいました。
主人公の女性の、20代後半から40代前半までの人生を描いたストーリーです。
当時付き合っていた彼からのプロポーズを断るところから始まり
あとになって(自分は実は選択を誤ってしまったのではないか…)と思ったり
その後、その彼が自分の知り合いの別の女性と結婚をして
少なからず憔悴してしまったり…。
主人公の弟は、顔立ちの美しい、20代の女性と結婚します。
義妹にあたるその人は、未婚の主人公に向かって
「私は命がけで恋愛をしているんです」という発言に
(命がけだなんて大袈裟な…)と思うのですが
実はその義妹は心臓に重大な欠陥を抱えていて
発作の起きる頻度も増えてきている。
出産には耐えられない体だから
主治医からは妊娠を止められていたのに
彼女は妊娠してしまいます。
そして生む決断をする。
・・・実際に生んだのかどうかはここには書きません。
このあと、主人公の元彼が30代半ばでガンを発病してしまいます。
そして一度は縁が切れたはずのこの元彼と
後半意外な展開でストーリーは進んでいきます。
今日は仕事帰りに珍しく電車で座れたので
もう(これ幸い!)とばかりに読書の続きをスタート。
最後まで目が話せないストーリー仕立てで
まさに最後の2ページあたりでは
目がうるんでしまうのを止められませんでした。
元彼が病気で亡くなる・・・とかそういう展開ではありません。
ただ、久々の読後に爽快感を味わいました。
それにしてもこの白石一文という人は
もしかすると身近に闘病中の人がいるのかもしれませんが
ガンという病気についてかなり勉強しているなと思いました。
中途半端な知識で書かれた小説を読むと
ときどき頭がクラクラしてくることがあるのですが
今回はそういうこともなく、心に残るいい作品に出会えたと思いました。