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右には右島、左には左川、そして下には下本。見上げる勇気はないが恐らく壇上に腰掛けるのは上原、背後には後藤の気配。 見事に逃げ場はない。 「さて、中居さんよ」 右島が話し始める。いつも通り軽い口調の右島だが、こいつが笑顔のままブチ切れる時こそ要注意だということを俺は知っている。 「もう逃げないでよねー」 初めは小動物のように可愛く無害の象徴のように思えていた左川。全くそんなことはなかった。というか小動物のように気付いたら色々な罠を仕掛けている辺りこいつを無害判定したのは誰だと問い詰めたい。俺か。 「ちゃんと話しましょう」 丁寧な口調の後輩下本。ぶっちゃけ一番扱いやすいと思ってたけど、こいつは直情的でないだけとても厄介だとここ数日で思い知らされた。がっつり俺を捉えているその腕には全くと言っていいほど隙が無い。 「………」 いつも無口な上原。それでも人望が有り余っている、いつも澄ましている上原が俺の前でだけ照れたりするのがすっげえ可愛かったが今はその面影も無い。 「下本さん、そんなにぎゅうぎゅう抱き締めたら話すものも話しづらくなるかもしれませんよ。私も中居君が逃げないように注意しますから、少し力を抜いて下さい」 柔らかな物腰の後藤。思えば初めは後藤に告白する為にこの学校を選んだ筈だったんだが、どうしてこうなった。 右島とは趣味が合った。夢の話をよく出来たから俺はよくこいつに励まされた。 左川は、放っておけなかった。入学式の数日後に男に絡まれていたから、彼氏役をしてやろうかと提案して気付いたらなんか公認になっていた。 下本は今まで見たことの無い良く分からないタイプだった。だけど下本を助ける度、すごくうれしそうな顔で下本が笑うから、ついついお節介とか余計なお世話とか思いつつも何かある毎に追いかけてしまった。 上原は小学校の時憧れていた。付き合う人が出来たって噂があったから、俺は彼女を見るのをやめたけれど、 数日後別れたと聞いて、もやもやとした気持ちが燻っていた。 後藤は中学の時俺の近所に転校してきた。転校生特有の大人びた雰囲気、けれど転校生だから土地勘があまりすぐれないというアンバランスさに俺はひきつけられた。 皆違って皆好き。 だから、まあ、その、 「「「「「さあ、」」」」」 説明を。 「俺には…選べない……っ」 前門の虎後門の狼、両方選んじゃダメですか? 「「「「「……そっか」」」」」 結論。前門の虎も後門の狼も去って行きました。 真ん中の人間をぼろぼろにして。 そんな俺に後ろからかけられた声は――― 「右島のダチなんだけどー」 「左川の先輩だけど、君中居君だよね?」 「下本の弟だ」 「………中居、か」 「後藤の祖父だ」 俺の楚歌は、四面どころではすまないようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.05.01 00:14:20
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