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カテゴリ:🔗少プリ
そこは王の面前。
我こそは一番良い商品を提供してみせると豪語する流れの商人リョウとビバリーは、少し古びたつづらから次々と品物を取り出していきます。けれど、なかなかどうして王・安田や、隣の直は厳しい目付きを緩めません。 確かにリョウの持ち込んだものは、それまで国に流通していない、それなりに需要のありそうな物品ばかりではありましたが、怪しげなお薬だの過激な服だの……この国で扱うには少々問題があると考えられるものが幾度も登場するのです。 一見問題の無さそうな物にも何かあるのでは?と思わせる胡散臭さがどうしても付き纏います。 けれど安田と直は怪しいとは思いながらも、好奇心に負けたので目新しい商品を興味深げに見ていきました。 観察されども一向に買うという声がかからない状況に苛立ちを感じたリョウは、とある悪戯を思いつきました。 勿体ぶった身振りで取り出された最後の品物は「特定の人にしか姿を見せない服」。 勿論真っ赤な嘘ですが、いかにもその服があるのだと言うように振る舞うリョウの手は、その上に空気だけでなく本当に布が載っているかのような動きをします。 「特に直様には良くお似合いになるかと思われます」 王の親馬鹿は有名でしたし、その子である直の毒舌に対して短い時間で苛立ちを感じていたリョウは、標的を決定しました。 研究者気質の2人に検証されないように、『特定の人』の条件をはっきりと言わないリョウ。「まさか王族たる者これが見えないということはありますまい」などと宣い、異国の誰それは見えたと偉人の名前を挙げて誤魔化します。 安田も直も、見えないとは言い出さないままその特定の人について推理しようと試みましたが、当然のことながら分かる筈もありません。 リョウは信憑性を増すべく、これぞ最高の魔法の服だ、ある特殊な物質を使って特殊な製法で織りあげられた、などとそれらしい話を即興で作り上げていきます。それを手に入れるまでの苦労や、どこで手に入れたのだという話はそれだけで薄い本が書けそうな程です。 だがしかしというべきか、それとも当然というべきか、安田と直には全くそれが見えません。 とうとう2人は口を開きました。 「……一応訊くが、それは「どんな人間」になら見えるんだ?似合うと言われても、自分に見えるものでなければ判断のしようがない。王族に相応しくないと言われても結構だ、僕には見えない」 「……それがもし『世界中の誰に見せても見えない』商品ならば、事と次第によっては王の権限を行使するが」 直と安田が胡散臭そうな目で、そして可哀想な子を見る目で自分を見始めている事に気付いたリョウは背中に一筋汗を垂らします。 「どどどどうするんですか、どんどん追い込まれていくじゃないですか」 「しっ、ちょっと黙っててよビバリー!」 ある意味リスクの一番高い、性能についての説明を意図的に省いていた彼は相棒の焦り切った目線を斜め後ろから感じながら口を開きました。 「ご説明が遅れまして申し訳ありません。……これは、「高潔な者には見える服」です。面白いでしょう」 しかし、その言葉が決定打になり、リョウとビバリーはお城から追い出されました。 何故なら、 「直の裸を下衆に見せる気か」 直と安田が何か言う暇も無く、傍で置物の如くじっとしていた騎士のサムライが地獄の底から響くような声を出したからです。 「……確かにそうだな、そんなものを直に着せる訳にはいかない。ところで君には見えるか」 「…………見えん」 何故か悔恨を滲ませた様子でサムライが言います。 お城中で一番高潔そうなサムライの言う「見えん」。 サムライに見えないならこの国どころか世界中の大抵の人には見えないだろうと断定した直は、この胡散臭い商人達を城から追い出すか国から追放するかを安田と相談しはじめました。慌てたリョウとビバリーは、これ以上怪しませないように精根尽くしながら城から退散することにしました。 お城には平穏が戻りました。 さて、ここは城下町の大通り。 「……あーあ、王様達のケチー!せっかくあいつらのお墨付きもらえるとおもったのに、時間と気を使うだけ損しちゃったよ!」 「まあまあ、ある程度のリスクは承知だったじゃないですか」 ビバリーが宥めても、リョウは悔しそうな顔をしたままです。 「あの親子、頭良いけど変な所天然だっていう噂だったしちょっとはいけるかなって思うじゃん。だから城まで足伸ばしたのに、とんだ無駄骨折っちゃったよ……ま、それにしても、あの布が本物だったとしても、誰にも布は見えなかったかもしれないよね。あの眼光コワいサムライとかいう奴も表面上潔癖に見えるけど、世の中そういう奴ほどムッツリスケベさんだって言うしさ」 「世の中みーんな何かかんかブラックな所ありますもんね。設定違う方が良かったんじゃ……」 「あれでも短い時間で考えたんだけどなー……「天然じゃない人には見える」とか「バカには見えない服」にでもしとけばプライド高そうな2人には効果あったかな……あ、でも『僕に見えないならば城下町の殆どの人間に見えないに決まっている』とか言われそうか」 「そもそもありもしないモノ紹介してる時点で危ない橋渡るリスクありありじゃないスか。それに『もし布が本当にあった』としてもさっきの高潔云々の設定じゃ問題発生しますよ。そもそも売ってるリョウさんに見えないんだから、いつの間にか風で飛んでっちゃってても気付かないかも」 「ひっどいビバリー、僕は結構ピュアな所だってあるんだから!」 「はいはい、分かってますって」 「もー……あ、ここらへんイイと思わない?騙しやすそうな奴らがゴロゴロ」 「……そういう所がブラックなんですって……」 2人は商売に丁度良さそうな場所を見付けました。 リョウとビバリーはその国に居つき、張三李四ら相手に訴えられないギリギリの商売を続け、 時々捕まりかけながらもなんだかんだ楽しい毎日を過ごしましたとさ。 ●●●●● 「バカには見えない服」 ・王様ロン→「……」突っ込むか突っ込まないか迷う ・王様凱→「……見えねえ。俺が親バカだからか」「大丈夫です、俺にも見えないです凱さん!」「俺も見えません!」「子分どもに見えねえんならいらねえ。他に何かねえのか」 ・王様サーシャ→着る。「それは見たところ上着のようですね。中に先日買った新しい服を合わせればよくお似合いになるでしょう。……そこの商人、後で話がある」アルセニーが居る場合はやんわり止められる。 ・王様道了→酒以外どうでもいい ・王様サムライ→「……直……愚かですまない。見えん」「君が鈍感で騙されやすい事はとっくに知っている。……ところで僕にも見えないが、商人、君達はさぞかし「バカではない」のだろうな?」 但し商人が静流の場合は力押しで着せられる様子 ・王様レイジ→パンツ一丁でも様になる ・王様暴君→周りの人間をからかう為に愉しんで用いる お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.03.09 10:42:27
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