トドのつまりは・・・

2010/01/11(月)02:47

Skype搭載デジタルテレビの謎

AV(425)

→関連記事:Skype対応のテレビ Skype搭載デジタルテレビをどうやって実現しているのか、実はいくつか謎がある。まもなく、詳しく報道もされるだろうから、いずれ分かることだが、現時点でその謎だと思う点を取り上げておきたい。 Skype、TV向け組み込み版を提供 - パナソニックと韓LGが搭載TVを発売へ によると、今回、Skypeは、テレビ向けの組込み版Skypeの開発キットをテレビメーカーに提供している。 このことは、これまでもPCなしで使えるSkypeフォンを作るための開発キットを、Skype社が提供してきた経緯を考えれば、なんら不思議ではない。 しかし、PC版なんかと違って、ソフトウェアでHD画像のエンコード、デコードを並行して行うのは、デジタルテレビのCPUでは負荷が重く、実現できないだろう。 そのため、パナソニックで言えば、システムLSI UinPhierに搭載しているメディアプロセッサ(通常はデジタル放送をデコードしている)のSkype用ファームを開発して、処理を行わせているか、専用WebカメラにSkype対応のコーデックLSIを搭載して処理を行っているかのどちらかだと推測される。 パナソニックの技術力を持ってすれば、UniPhier用にSkypeのコーデックをファームウェアとして組み込むぐらいのことは、やってくる気もする。別にSkype専用のコーデックLSIを積むよりは、確実にコストを下げられるからだ。 ただ、メディアプロセッサ自体も、おそらくHD1chのエンコード(Webカメラ用)と、HD1chのデコード(相手のWebカメラ映像)を並行処理できなければならず、UniPhierのローエンドのシリーズだと処理しきれず、高価なレコーダー用のLSIを採用する必要が出るかもしれない。 もう一つ、Webカメラとテレビとの接続インタフェースだ。Webカメラで撮影した720P映像を秒30フレームで非圧縮で伝送するには、かなりの速度が必要だが、UniPhierにはそんな特殊なインタフェースはついていない。Webカメラ自体も、コストを考えると、特殊なインタフェースを採用したくない。だとすると、現実的には、テレビとの接続インタフェースは、USB2.0しかありえない。 しかし、USB2.0では、HD映像を非圧縮でテレビに送り込む性能はないため、テレビ側のUniPhierで、Webカメラからの非圧縮映像をエンコードする方式というのは、どう考えても非現実的だ。 このため、現時点で可能性の高い方式は、Webカメラ自体に720PのエンコーダLSIを搭載し、撮影した映像をエンコードして圧縮した上で、テレビに送るやり方だ。これなら、USB2.0でも全く問題がない。その代わり、Webカメラ側はエンコーダLSIの分がコストアップになるが、最近増えているPC用のHD解像度のWebカメラは、USB2.0で転送できるようカメラ側で圧縮するのは当たり前のようだし、これも最近よく見かける無名メーカーが発売しているHD動画が撮影できる激安ビデオカメラの値段を見ると、エンコーダLSIも、もはやそれほど高価ではないのだろう。 さて、Webカメラ側で画像や音声をエンコードしてテレビに送っているとしたら、テレビ側では、HD2chのデコードが行えなければいけない。 Skypeでは、自分側と相手側の圧縮映像を同時表示するモードがあるからだ。 これについては、先ほど書いたレコーダー用のUniPhierまでは必要ではなく、デジタルテレビで2画面表示や子画面表示が可能なミドルクラスのテレビ向けUniphierで、ファームを開発すれば実現できるだろう。 ただ、もちろん問題はある。 Skype社は、これまでもまるごとソースコードを提供していた訳ではなく、コーデック周りのソフトウェアは外には出さず、顧客のプラットフォームに合わせてコンパイルしたバイナリで提供していたようだ(これ自体はよくある話)。 しかし、UniPhierのSkype用ファームウェアを開発するには、Skypeが、細かなコーデック周りのアルゴリズムを公開するか、UniPhier用のファームをSkype社に開発してもらう必要がある(しかも、UniPhier上で動作する他のファームウェアと問題なく共存できる形で)。 これは、いずれも大変困難な道だが、おそらくパナソニックの技術力を考えれば、前者の道を選んだのだと思われる。 また、ニュースによれば、パナソニックは「VIERA CAST」という独自のウィジェット環境で動作するアプリとして、Skype機能を提供するらしい。 ということは、Skypeアプリのユーザインタフェースは、Skype側の開発キットには含まれず、ある程度ガイドラインだけが決まっていて、テレビメーカー側で開発する必要があるのだろう。 そのため、パナソニックは、SkypeのUIを、独自ウィジェット環境にSkypeの機能を扱えるような拡張を施した上で、そのウィジェットアプリとして開発したのだろう。 以上のようなかなり七面倒くさいステップを経ないとテレビにSkypeを組み込めない訳で、もしこの通りなら、パナソニックやLG電子って凄いな、と思う。 もちろん、コストアップにはなるが、もっと手軽な方式として、テレビ内に、Skype専用のボードを組み込んで、テレビ機能と切り替えて使うような実現方法もありえるので、パナソニックやLG電子はどのようなやり方で、Skypeを実現したのか、まもなく伝わってくるであろう詳しいレポートを楽しみに待ちたい。

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