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「あなたはコンピュータを理解していますか?」梅津信幸(サイエンス・アイ新書)
本書の前半半分は情報理論、後半はコンピュータの仕組について書かれている。比喩が多用されており、またそれらがとても小気味よく、効果的。ためになった。副題に「10年後、20年後まで必ず役立つ根っこの部分がきっちりわかる!」とあるけれども、羊頭狗肉では全くない。 P11 第1章のタイトルが面白い。「その味噌汁の塩分はいかほど?」そして「インスタント味噌汁が商品として存在可能な理由」をまず考えさせる。この比喩が本書の後半までずっと有効に働いているのが面白い。 P17 1進数についての記述。普通聞かない話なのでかなり興味を覚えました。 P31 著者がこの第1章で伝えたいことがここに濃縮されている。まず「データと情報は同じではありません。」そして「『データの中に、どれだけ情報量があるか』は、『味噌汁の中に、どれだけ塩分があるか』と考えることと同じです。」と続く。何故「味噌」ではなく「塩分」なのかは、本書を読めば分かるということで・・・。 P42 モールス信号は、ちゃんとアルファベットの出現頻度と相関をもっていて、頻度の高いもの程簡単な記号で表せるということ。そして日本がモールス信号を導入した時はABCの順番にいろはをあてがってしまったので、その相関が失われたこと。 P64 この周辺で、言葉のもつエントロピーについての考えが深まる。物理でのエントロピーと同様に、もしすべての文字(ABCでもいろはでも)の文章内での出現確率が同じであるなら、それがもっともエントロピーの高い状態。実際には出現頻度には偏りがありエントロピーを下げる。さらに単語、文法、意味を付与していくとさらに下がる。実際に英語一文字のエントロピーは最大4.75ビットにも関わらず実際には1.33ビットくらいの情報量にしかならない、日本語では13ビットに対して4.5ビット。表音文字と表意文字の違いについても言及。 P77 第2章「油田のパイプラインと伝言ゲームの連続」でも比喩が花盛り。チャネルの理解のために「油田のパイプライン」が引き合いに出される。一旦「細いパイプに入ったものは、あとで太いパイプに入れても細いまま」という理解が大事。 P92 何かが何かに伝達されるときチェネルを通る。ある人がメールを書き、それがインターネットを経由して別の人に伝わる時、一番細いチャネルが「文字にするところ」だという。何故なら上述のように一文字当たりのビット数に制限があるからだと。 P109 さらに実際のコンピューターでは「チャネルとしてのキーボードは、かなり細い」、「チャネルとしてのマウスは、想像を絶して細い」ということ。これは特に人間側から見たことではなく、コンピューター側から見た視点。コンピュータの気持ちになってみると、人間とキーボードやマウスでやり取りするところが一番チャネルが細いのだ。 P148 第3章では、自動販売機や人生ゲームを比喩に「有限オートマトン」の説明が続く。 P154 情報のエントロピーについて。「2進数で何桁になるか」が、イコール情報量なわけだけれども、「あるモノを特定するためにYes、No式の2択問題がいくつ必要か?」と言ってくれて、さらに理解が深まりました。 P200 第4章はメモリの使い方に関する部分。難しく言うと「参照の局所性」を利用した高速化の話題。ここは現在のコンピュータがそういうことになっていることを知らなかったので、それ自身「へー」だったのだけど、それが金持ちのお坊ちゃまと爺やの関係で上手に比喩されていた。 実は今朝本棚を漁っていたら、この本と同タイトルでもう少し分厚い本が出ていて、しかも持っていたことが判明。少し経ったらそちらを読んでみようと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年07月22日 09時45分19秒
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