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カテゴリ:観劇日記
今月アタマに国立能楽堂で聞いた山勢松韻さんと同じく、この高橋翠秋さんも、毎月歌舞伎を見ていると年に何度かは演奏を聴く機会はあるハズの方ですが…川瀬白秋さんの高弟である翠秋さんは、山勢さん以上に姿を見る機会がないです。胡弓が多いから、大抵裏からつけてるもんなぁ…
ご自身のリサイタルも開いてらして、去年は芸術祭賞を受賞したそう。私は全然知らなかったのですが、今年のこの会の招待券を貰いまして、出かけてきました。 いや、実は、招待券は地唄の師匠のところへ来たものなんですけどね、師匠はよんどころない事情で行かれなくなったために、譲り受けたんです。ほら、こういうのって、招待券だからってムリしても行かなきゃならんわけじゃないですけど(席が埋まるとかって問題じゃない)、お祝いは必須じゃないですか、プロ同士の場合(爆) 我ら素人と違って、プロ同士、客演したりお願いしたりする間柄では、お祝いも、まるで三人吉三の百両のようにぐるぐる回る因果なモノですなぁ… で、私の任務は師匠のお祝いを届けることにあるわけ。ついでに招待券も貰って、鑑賞できるのが役得ってもんよ。 内容は凝っていて(いつもそうなのかな)、古曲、創作、新作のそれぞれ。 古曲は「みだれ」で、米川敏子さんの客演によるお琴に、翠秋さんの胡弓がつく。胡弓が主役だからなのか、通常の演奏会で聞き慣れている「みだれ」よりゆったりした調子がとても新鮮。 「みだれ」は、国立劇場の公演でも、休憩中の緞帳披露でBGMに流れる曲で、お琴を習ってない方でも聞き覚えがあるんじゃないでしょうか。段モノの中では緩急鮮やかで劇的。昔の時代劇では、よく、思い迷うお姫様がお琴を弾いてるシーンで流れますね。思い迷う時が「みだれ」で、なんかお祝いとかお稽古とか気持ちが弾んでる状況だと「千鳥の曲」が多い(笑) 真山青果の「大石最後の一日」を映画化した作品で、たしか「琴の音」とかいうモノで、磯貝(藤十郎、当時扇雀)を想うおみの(扇千景)が弾いてたのも「みだれ」でしたねー でも菊之助がスケキヨだった時、稽古中にヒトゴロシした純子奥さんの弾いてたのは「千鳥の曲」だった… すっごく飛ばして弾く人もいる「みだれ」なので、じっくり聞かせる演出が面白く、私はこれが一番気に入りました。 2つ目は創作の「音音(ねおと)」で、客席が暗転したと思ったら、幕が開いた舞台上も真っ暗だったのでびっくり。しばらくして、中央の翠秋さんだけにスポットがあたり、薄暗い中で「ぼわわわわーん」と鳴りモノが響いて、徐々に始まった感じ。 真ん中に胡弓。下手に鳴りモノの藤舎呂英さん、上手に笛の福原洋子さん。 最初から最後まで幻想的。ゆえに、淡々と聞いてしまう。型のあるモノは、どこで盛り上がるとか、どんな構成だとか、心の準備があるのだけれど、こういうのはねー、突飛な驚きがない限りは、まるで尺八の本曲のように、淡々、淡々、淡々と聞いてしまうなぁ。 そして最後は新曲「補綴道成寺」なるもの。プログラムを読むと、長唄の「京鹿子娘道成寺」を三曲風にアレンジしているそう。編曲じゃなくて、あくまで長唄の譜を使って、琴と三絃と胡弓を持ちかえて、それぞれのシーンというかパートを、それらしく演奏する趣向なのかな。 地唄の道成寺…正確には地唄箏曲の「新娘道成寺」あるいは「鐘ヶ岬」は、詞章は同じでも唄も手も全然違う曲ですが、それとはまったく違ってました。っていうかね、長唄さんとの共演、合奏なので、どちらかというと歌舞伎の地方っぽい印象を持ちました。私は。 それより驚いたのなんの… 長唄の三味線は今藤長龍郎さんで、それしか見てなかったんですけども、幕が開いて唄方を見てびっくり。お?おお?! 慌ててプログラムを確認すれば、やっぱり…杵屋巳津也さん。菊五郎劇団音楽部の、イケメン唄方ですよ。 でも…今月この方、夜の部にどどーんと出てませんでした?あれれ、今、何時?8時?あれれ…「外郎売」の大薩摩と「道成寺」と、両方出てますよね。道成寺が終わってから駆け付けたってことか。へー 長唄の譜を三曲で…というコンセプトだから、唄はいつもの道成寺なんでしょうけど、たった今その道成寺を丸ごと歌ってきて、またここで歌うのは、なかなか、大変ですね、明日もあるし! それでも、真正面の至近距離で聞く美声ったら。 得したなぁ… 名代でお祝い届けに来て良かった(爆) この曲そのものは、最初のお琴との合奏パートが一番楽しめて、真ん中の三味線合奏パートが一番乗れなくて、最後の胡弓合奏パートはとっても地方っぽい「ありそう?」な感じ。変化があって聞きやすかったけど、やってみたい!って憧れるほどじゃないかな。 よーし、巳津也さん、明日もあなたの唄を聴きに、演舞場に行きますからねー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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