ある女の話:カリナ35<初めての男>(再)
今日の日記(「JIN~仁~」感想と師走な気分☆) 「ある女の話:カリナ35(初めての男)」出てきたオノダさんと入れ替わりに、慌ててシャワーを浴びに行った。ホントに逃げられない…って思った。バスタオルだけ巻いて出てきた私を、ベッドでオノダさんが待っていた。部屋も暗くなっていた。やっぱり、やめておけば良かったって、怖くなって後悔してきた。でも、今更もう逃げ出すワケにも行かなくて、私もおずおずとベッドに入る。オノダさんがバスタオルを剥がして、私の裸の体を眺めた。私は恥ずかしくて目をつぶる。触れた唇が口から体全体に移っていった。体中が熱くなっていくのを感じる。怖くなって私が言う。「子供…できちゃったら…」「できないようにするから…大丈夫だから、優しくするから…」男の人ってホントにこういうこと言うんだな…って、頭だけは緊張で妙に冴えてるけど、体は、されるがままになっていた。その指や舌の動きや扱いから、女の人を抱いた経験が豊富なんだろうな…って思った。「カリナ…好きだよ…」熱くなったオノダさんの体が私の体を押さえつけて、中に入ってくると、メリメリと骨と骨が剥がれるような音がした。同時に頭をバットで殴られたような衝撃が走って、あまりの痛さに声さえ出なかった。咄嗟にオノダさんの体を思い切り引き剥がそうとしたけど、しっかりと押さえ込まれていて離れてくれない。助けて!って思った。お母さん、助けて!って。子供みたいに。「やぁっ!だっ!」必死で抵抗する。私の目から涙が出てきていた。それでオノダさんが動きを止めた。何がどう優しくするんだかわからなかった。「もう…ムリ…ヤダ…」溢れた涙がこぼれるのを見ても、オノダさんは体を離さないで、私をジッと見ていた。手で私の涙を拭う。「もう少しこうしてたら気持ち良くなるから…」また泣きそうな顔をしていた。やめる気は無いらしい。それで、もうやめてって言えなくなった。気持ち良くなんてならなくていいから、早く終わって。そう思っていた。オノダさんの動きが止まるまで、ずっと我慢してた。オノダさんが私の体から離れると、やっと終わったと思った。そんな私の気持ちを察したらしくて、オノダさんはジッポーでタバコに火をつけて、フーって煙を吐き出した。白けた空気が部屋を包んでいるのがわかった。あまりの痛さに体がまだジンジンと傷んでる。「シャワーいっしょに浴びよう?」黙ってる私に気を使ったらしくて、オノダさんが優しい声色で言ってきた。私は呆然としたままオノダさんの言葉に頷いた。ベッドから出ると、シーツに出血が無いことがわかった。あんなに痛かったのに…って思った。バスルームでも呆然としてて、オノダさんにお風呂に入れてもらってるような状態だった。気を使っていたオノダさんは、何をしても私が無表情なことに疲れたらしい。だんだん不機嫌になっていくのがわかった。服を着替えて部屋から出る時に財布を見たオノダさんが手を出した。「いい?」一瞬、何のことだかわからなかった。「ホテル代、ちょっと出して。」そっか、遊園地や動物園といっしょで、ここも自分の分は出さなきゃいけないんだ?私は頷いて、お金を出した。それが私の体の価値な気がした。一瞬オノダさんは私の手にあるお金を見つめたけど、そのまま受け取った。オノダさんは、もう私と別れるつもりになったのかもしれない。そうじゃなきゃホテル代なんて要求しないよね…こんなとこ来なきゃ良かった…って思った。車に乗ると、ずっと無言だったオノダさんが言った。「オマエ…何でいかないの?」一瞬、何を言われてるのかわからなくて、頭が真っ白になった。「いくって…」「すごく気持ち良くなるって言うか…」「初めてだったし…」オノダさんはしばらく無言になって、ようやく口を開いた。「…嘘だろ?」その言葉が私の心を更に突き刺した。私はすぐに、出血してないからかな…って思った。「何でそう思うの…?」「だって…俺の前に付き合ってるヤツいるような感じだったし…体も…さ…。まあ、初めてだったのかもしれないけど…」泣いたことでも思い出したのか、オノダさんは言いにくそうだった。私は惨めな気持ちになった。私の体の痛みなんて、全くわからないんだと思った。あれが演技だと思ったの?何で?何のために?バカバカしい。「俺…初めての子としたことあるけど、ちゃんとイったよ?」この人は何を言ってるんだろう?久しぶりに宇宙人を発見したような気持ちになった。だから私がおかしいってことなの…?こんな会話したくない。もう笑ったらいいのか、泣いたらいいのか、ワケがわからなくなった。私が付き合うことにした人は、好きになりそうだと思った人は、こんなこと言う人だったんだ?って思った。「そんな…その人がおかしいんだよ…。初めてでイクとかイかないとか、そんなのムリ…」オノダさんは無言になった。私が言ってることは言い訳にしか聞こえないんだろうか?気まずい空気に、もうオマエの機嫌は取らないって、態度が語っていた。手を繋ぐことも無く、夕飯をファミレスで済ませた。オノダさんは私と目を合わせようとしなかった。することをしたからどうでもよくなったのか、私を家の側で降ろすと、じゃあ…って、去って行った。捨てられるって、こういうことかと思った。何で?何で?どうして?コレがそんなに大事なことなの?まだ体の中が鈍く痛い。でも体だけ?痛い。痛い。でも、コレが私の自業自得ってヤツなんだと思った。相手の好きに流されて付き合ってしまった私の…でも、でも、私だって、彼ならいいと思ったんだよ。それは間違い無い。自分に見る目が無かっただけ。でも、そんな言葉で割り切れる?まだ彼のぬくもりが残ってる。優しく抱きしめてくれた記憶が残ってる。なのに…もう、あんなふうに好きって囁いてくれないの?雨は、霧雨に変わっていた。でも私からは涙も出ない。前の話を読む続きはまた明日目次