武蔵小杉の老舗酒場で呑む
またまた武蔵小杉にやってきてしまいました。もうすぐどうしようもなく退屈な町に変貌するに違いない町の最後の煌きを求めてなんとか記憶に留めておきたいと考えたのでした。前回来た時に気掛かりでありながらすっかり酔っ払ってしまって入れなかったお店2軒に行ってみます。この2軒は再開発の波に呑まれずに持ちこたえることができるのでしょうか。 最初は「潮来」です。一見したところありきたりのどこにでもある居酒屋です。店に入ってもその印象は変わらずちょっと残念な気分になるものの品書きを見てちょっとびっくり。店の雰囲気とは異なりいずれもかなりお安め。それなのにこの入りの悪さはどうしたことでしょう。「文福」があれほど混んでいるのに、この比較的広いお店は3名ほどしかお客さんがいません。店は両親にその息子さんらしき3名でやっていますが、息子さんはちょっとよそ見が多いのですが、両親は居酒屋のオヤジとその奥さんというと想像してしまうそのまんまの雰囲気で安らぎます。ちょっとおっかないオヤジと優しげな奥さんという組み合わせは居酒屋という空間がそうさせるのでしょうか、それともこういう夫婦は居酒屋をやってみたくなる素質があるんでしょうか。これ以外ないという連れ合いに思えます。息子さんも両親のような連れ合いができたらそれらしい風貌と振る舞いが身についてくるのかもしれません。特別なところはありませんが、くたびれた金曜日の夜なんかにのんびり時間を掛けてくつろぎたくなるようなお店でした。品書:トリスハイボール:250,ホッピー:400,サワー:330,酒大:500,ビール大:550,焼とん:100,メンチカツ:380,レバー唐揚:420,煮込豆腐:500,じゃがバター:300 遠目から「(味)(マルミ)」を見掛けた瞬間にここは絶対好きな酒場だと予感しました。間もなく閑静かつ利便性のいい町に変貌しつつある武蔵小杉にとってこの店は過ぎたる贅沢とも思われるような酒場ではないかと直感しました。ところがこの店に酔っ払ったまま入ってしまってはもったいないとの気持ちが今回間をおかずに再訪した理由の一因です。店に入った途端にこの酒場の魅力にすっかりまいってしまいます。思いがけず広い空間は大げさに言えば王子の山田屋のような気軽さと大衆性を併せ持っていると感じます。品書きもまさに酒場らしくシンプルなものばかりで品数も少ない。でもまったく問題ありません。酒場は酒を呑む場所であって、肴を味わう場所では本来なかったはずです。とうふをお願いするとあったかいの冷たいの?とおばちゃんに尋ねられたので、この夜はめっきり冷え込んでいたため、迷わずあったかいのを。東京の酒場では珍しい温奴です。大振りの豆腐をゆっくりとゆで、豆腐としょうがを乗せただけの簡素ともいえるものがどうしてこうもおいしく感じられるのでしょうか。これは自宅でいくら上等な豆腐を使っても出せないうまさです。そこが酒場の不思議で魅力的な謎です。その謎に惹かれてついつい連夜暖簾をくぐるのでしょう。「潮来」と違う点、この酒場は毎晩でも訪れて軽く一杯引っ掛けて家路に着くというまさに王道の酒場と言えると思います。酒:280,サワー:320~,焼酎:280~,やきとり/とうふ:100,あじ干物/枝豆:250,ししゃも:160,じゃこ/もろきゅう/トマト/おしんこ/じゃがバター/あつあげ:210,おでん:300