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カテゴリ:小説
私はすっかりPCX160の走りにのめり込んでしまった。
自慢したいとか、誰かよりいい車やバイクに乗りたいとか、 そんなのはどうでも良かった。 気ままに、気負いなく乗れて、かつ便利。 ちょっとしたお買い物にも大きめなメットインが 役立ってくれる。 スタイリッシュで小さなスクーターなのに、 高速道路も走ることができる。 初めての高速道路、アクアラインも挑戦した。 ![]() 平日の空いているアクアラインをPCX160で飛ばすのは 車で走るのとは全く違う爽快感だった。 操作も簡単で車重も軽いので、女子でもツーリングの楽しさが 気軽に味わえる。 あんな高級車の自慢動画なんか作る位だったら、 PCX160の動画を作ればよかったかもしれない。 動画はいいか。 PCX160は誰かの為に乗るんじゃないから。 私は房総ツーリングの帰り、少し時間があったので、 気になっていた場所についでに寄ってみることにした。 最近、「ついつい寄り道」の回数が多くなってきた。 本当にこのマシンに乗っているのが楽しいからだろう。 目的地に到着すると、私のPCX160と同じ色の PCX160が駐輪されていた。 もしかして、あれはSさんのPCX160!? ![]() もしかしたら、Sさんがこの公園にいるかもしれない。 伝えたい。そして今までのことを謝りたい。 私はヘルメットをメットインにしまい、 海の方へ走った。 ![]() あっ、あれはSさん。 間違いない、無料で義理のお兄さんにもらったらしい GOLDWINのジャケットを着てる。 私は息を切らせて、Sさんの元へ駆け寄った。 雨「Sさーん。」 S「あ、雨音さんですよね?久しぶり。」 雨「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。」 私はそう言うと泣いてしまった。 高級車で虚栄心を満たすために、乗り物をただ道具として 使ってしまった。 自分が本当に愚かで小さい人間のように感じてしまった。 Sさんに代表されるように、小さなマシンで楽しむ男たちには 虚栄心なんて微塵もないのだ。 マシンや排気量は小さいのにこの堂々とした「男気」の ようなものは、一体何なのだろうか。 S「ど、どうしたんですか、雨音さん。座りましょう。」 ![]() 私はベンチに座ってからもただ 「ごめんなさい。ごめんなさい。」と泣き続けてしまった。 S「どうしたんですか。コーヒー買ってきますから、 ここで待っててください。」 私はSさんの買ってきたコーヒーを飲むと、 落ち着きを取り戻した。 雨「Sさん、私、他人の高級車に乗って、 偽りの自分を動画にして、本当に乗り物を愛する 男達を貶めてしまったって気が付いたの。」 S「おとしめる?いいんじゃないですか、 好きな車に乗れば。」 雨「舎学さんは、怒っていなんですか?」 S「怒る?怒ってなんかいないですよ。 俺は人それぞれ、好きなマシンがあると思っているから。」 ![]() すっかり公園の陽は暮れかかっていた。 明日晴れたら、またPCX160で走ろうと思う。 ![]() ハピネット 1/16 R/C NISSAN GT-R NISMO GT3(ニッサンGT-RニスモGT3) 16ニツサンGTRニスモGT3 [16ニツサンGTRニスモGT3]【NYAP】 ![]() タミヤ【プラモデル】1/24 スポーツカーシリーズ No.199 スバルインプレッサWRC ’98モンテカルロ仕様 H-4950344992942 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.01.04 10:18:27
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