|
カテゴリ:外来診療一般
さて、 たまには固く政治経済的な話題を一つお届けします。
先週、平成22年度保険改正があり、この4月から実施される新しい健康保険の点数が発表されました。病院で受ける検査・診察などの医療行為にはそれぞれ点数(その点数の10倍が価格)がつけられており、窓口ではその合計額の0~3割を保険の種類別に支払って戴くこととなります。
私は白内障手術を専門としているのですが、この白内障手術の点数は今まで12100点でした。最近の小児科・産科・外科・救急担当医などの不足・激務の解消のために、比較的楽とされている眼科や皮膚科の点数を削ってその予算を激務の科に回すという事前の方針があったので、この白内障の点数は今回かなり下げられるのではないか?という予想が多くありました。
ふたを開けてみると視力・眼圧などの眼科検査料の一部の点数が数%削減されましたが、白内障手術の点数は変化なく12100円のままでした。この点数には患者様の眼に入れる眼内レンズ(数万円します)、感染予防のために各々の患者様で使い捨てにするメスやナイフ類の代金も含んでいるので、実は今までも割りとギリギリで治療をしておりました。今回点数が大幅に下げられることになると、まさに「赤字覚悟」で手術に臨まなくてはならないところだったので(笑)、個人的には点数が下がらなくて良かったです。
この白内障手術点数の改悪問題(実際に過去にも点数は引き下げられています)が頻繁に話題になるのには理由があります。それは、
1.「白内障手術はすぐに済む簡単な手術だ!」、「白内障手術医はそういう簡単な手術ばっかりしていて、激務の外科医などに較べて御気楽なけしからん奴らだ!」というバッシングの論調がマスコミでは以前から支配的であること。
2.超高齢化社会を迎えた日本では必然的に白内障手術の件数が増加しており、この点数を削ると保険財政が楽になること。
などです。
このうち上記の1に関してだけはどうしても反論をしておきたいのですが、確かにうまくいった白内障手術は極めて短時間で済み、結果的に「簡単な手術だった」ということになるかもしれないのですが、私は現場で毎週手術をしていて「あぁ、白内障手術は簡単だなあ」と感じたことなど一度もなく、1例1例全身全霊を賭けて手術をしています。
何故かというと、大きな合併症が起こるような難症例が「突然に現れる」のが白内障手術だからです。例えば統計的に患者様の100人に1人はチン氏帯という水晶体をつなぐ部分が弱かったり外れたりしています。術前にはどうしても分からない場合が多く、手術を始めてから悪戦苦闘、ということが年に数回は必ずあります。
なので「白内障手術は簡単」というのは、我々白内障手術医の真剣勝負の戦いの結果であって、「やる前から簡単な手術というのは無い」というのが眼科専門医としての率直な感想なのです。
ま、何はともあれ、これからも安全な白内障手術を目指して頑張っていこうと思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.02.16 18:11:12
[外来診療一般] カテゴリの最新記事
|