カテゴリ:本の感想(あ行の作家)
浦賀和宏『八木剛士 史上最大の事件』 ~講談社ノベルス、2006年~ 松浦純菜・八木剛士シリーズ第四作。あらすじはなんとも書きにくいのですが…。 以下、ざーっと話をなぞるので、先入観なしに本書を読みたい方はご注意ください。 河野くんがDVDを買ったので、いつもの四人―河野、松浦、小野、八木―で観よう、という話になります。しかし、八木さんは興味がなく、いろいろ考えたあげく、約束をすっぽかすのです。そんな八木さんに、松浦さんから電話。その後、思いがけないことに、松浦さんが八木さんのところに遊びにくるのです。自分のお気に入りのDVDを持って。二人は、楽しく時間を過ごしますが、八木さんは松浦さんに嫌われているのではないかと、不安で不安で仕方ない。そしてついに、自分の気持ちが伝わるような発言をするのです。 その夜、八木さんは松浦さんを彼女の家まで送ります。ところが帰り道、八木さんをいじめる人たちと出くわします。さんざん悪口を言われますが、松浦さんは彼らに言い返します。その後、彼らとは別にちょっとしたアクシデントがあるのですが、それを見ていた彼らは、二人に中傷の言葉を浴びせるのです。 数日後、八木さんはクラスで、これまでにないほどのいじめを受けます。その日、松浦さんからかかってきた電話。彼女は意を決して、ある提案を八木さんにもちかけるのでした。八木さんは、とても喜びます。松浦さんも、八木さんに同意してもらって、嬉しそうです。しかし―。 本書の中でも、八木さんは妹のお見舞いに行くのですが、そこで、以前彼と妹を撃ったあの外国人が現れます。スナイパーは八木さんを狙いますが、ここでも八木さんには銃弾一つも当たりませんでした。 松浦さんとの約束の当日。待ち合わせの少し前。瀧先生から電話がかかってきます。スナイパーに、人質にされているというのでした。そして、ガールフレンドの命が危ない、と八木さんに伝るのです。 まず、あれ、目次がないな、と思いました。章題も、「一週間前」「三日前」という感じ。最後の方は、「六時間前」「三時間前」といった感じで、どんどん気を引きつけられます。本当にわくわくしながら読みました。それはひどいいじめの描写もあり、不快な気分にもなりますが、いったい「史上最大の事件」とはなんなのか、気になってたまらないのです。どんなオチになるのか、と。 …気の毒でした。そうとうテンション下がりますね。 他のことについてもいくつかふれておきましょう。 前作で、ちょっとした伏線が描かれていましたが、それがどうつながってきているのか、まだはっきりとは明かされていない感じです。本書の中でも、「私」の一人称によるパートがあるのですが、その「私」が「八木剛士」とどういう関係があるのか、やはりよく分かりませんでした。 面白かったのは、南部さんが松本楽太郎を読んでいることですね(松本さんは、前作『上手なミステリの書き方教えます』に登場する作家です)。 とまれ、楽しい読書体験でした。わくわくしながら読めるのって素敵なことだと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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