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2007.07.18
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筒井康隆『馬は土曜に蒼ざめる』
~集英社文庫、1978年~

 筒井康隆さんの短編集です。8編の作品が収録されています。簡単に内容紹介しながら、感想を書くとしましょう(感想の中でネタにふれることもあるので、未読の方はご注意ください)。

「横車の大八」は、ご隠居さんが、自分の父と懇意にしていた、江戸時代に活躍した名大工、横車の大八さんの話をするという話です。大八さんは、先見の明があり、しかもとても賢い方なのですが、いちいち人に反対するので(そしてそれが理に適っているのです)、嫌われ者でもありました。当時から既に、建物を建てるときは、壊しやすさを考慮しなければならないと考えていたというのですね。そんな大八さんにまつわるあれこれが語られます。

「息子は神様」。生まれた息子に、後光がさしていた。妻は、自分がマリアさまになったかのようにふるまい、息子が神だと疑わない。けれども、父親である「おれ」は、それに半信半疑だ―そういう話でした。いたずらするときに後光の光が強くなり、丁寧なふるまいをするにつれて光が弱まっていくというのが印象的でした。

「空想の起源と進化」。これは面白かったです。若手作家が、文壇酒場で、大御所たちの批判をするのですが、彼が、原始時代の語り部でもあり、現実の話を巧に話すことばかりの老人たちを批判します。原始時代と現代がぐちゃぐちゃになっていて、その奇妙な感覚も、彼が語る空想のお話も、思考も、とにかく面白く読みました。

「混同夢」。タイトルでなんとなくそれが出てくる予感がしましたが、主人公はコンドームを作る会社につとめるサラリーマン。ところが、経口避妊薬が普及し、商品が売れなくなる。倒産の可能性もあり、彼は重要な企画をまかされます。しかし彼は、企画書の作成が途中でありながら、十分に働いた(たしかに働き者なのです!)、これから家族サービスをしなければならないと、定時に帰宅しようとします。仕事を離れたら完全に仕事のことを忘れたいというサラリーマンと、会社のために残業も頼む上司の対立です。ドタバタですが、労働のありかたについては考えさせられます。
「逃げろや逃げろ」学生運動を繰り広げる学生と機動隊の対立を見物していた「おれ」が、いつのまにか学生と間違えられ、機動隊に追いかけられる話です。こちらもどたばたですね。

「人類の大不調和」万国博に突如現れたソンミ村館では、ベトナム人が米兵に殺されていく。館を包囲すると、中には誰もいなくなるのだった。次いで現れたのは、「ビアフラ館」。飢えた難民たちが、館からぞろぞろと出てくる。諸外国は不快感をあらわにし、協会本部の多くのスタッフがノイローゼになった。「おれ」は、この事態を解決する方法を知っているという―こちらも、インパクトの強い話でした。ラストでは震えてしまいました。これはすごい。

「肥満考」こちらもどたばたもの。肥満に悩む女性作家が、夫にからかわれ、同業者にもからかわれ、次第に復讐の気持ちを燃やしていきます。

 最後に、表題作の「馬は土曜に蒼ざめる」。交通事故で大脳以外をだめにした男性が、生前(?)の言葉から、その大脳を自分の馬に移植してもらい、馬として生きていきます。所有者とともに、大会で大穴を出すべく画策するのですが、あらぬ妨害が入ってきて…という話。競馬(というか、賭け事やらスポーツやら)に興味のない私ですが、レースのシーンでははらはらしながら読んでいました。

 案外、痛烈な毒舌の少ない短編集でした。最初に収録されている「横車の大八」など、どちらかというと温かい話で、良かったです。そして、感想の中でも書きましたが、「空想の起源と進化」、「人類の大不調和」が特に印象的でした。





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Last updated  2007.07.18 06:52:21
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