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2013.11.09
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池上俊一『世界の食文化15 イタリア』
~農山漁村文化協会、2003年~


 非常に多くの著作を刊行している池上先生による、「イタリア料理」からみるイタリア史といった著作です。
 以前紹介した『パスタでたどるイタリア史』は、本書の姉妹編にして、ジュニア向け版といえるでしょう。
 本書の構成は次のとおりです。

ーーー
はじめに
第一章 パスタのイタリア
 一 パスタ感覚とイタリア
 二 歴史の中のパスタ
 三 母なるミネストラ
 四 ポレンタの階級闘争
第二章 「イタリア」以前のイタリア料理
 一 基層としての古代地中海世界
 二 儀礼と身分―中世キリスト教の遺産
 三 豆・栗・茸に、喝采
 四 野菜の王国
第三章 国民料理の成立
 一 ルネサンス宮廷と大航海
 二 科学としての料理
 三 フランスとの交流
 四 アルトゥージのブルジョワ料理
第四章 家族・地域の絆としての食
 一 コンヴィーヴィオ―共生の食
 二 マンマの味
 三 飢餓の克服
 四 地方料理とスローフード運動
むすび―消滅するイタリア料理、進化するイタリア料理

あとがき
監修にあたって(石毛直道)
ーーー

 本書のキーワードは、なんといっても「パスタ感覚」でしょう。パスタが、イタリアの食文化を象徴する食べ物であり、またこの「パスタ感覚」により、たとえばジャガイモ、トマトなど、最初は忌避された外国産の食べ物が、イタリアでは比較的早く広まった、ということも説明されます。

 第一章は、そのパスタ(パスタ感覚)に焦点を当てます。パスタの歴史、地域性や多様性などが、ここで指摘されます。

 第二章は、古代ローマの遺産たるパン、オリーヴ油、ブドウ酒の意義、そして中世の食の身分による違いなどを論じる一~二節も面白いのですが、私は第三節も面白かったです。というのが、茸料理のおいしさを描写したあたり、とにかくおいしそうで、読みながらおなかが空いてしまったのでした…。

 第三章では、大航海時代により、アメリカ大陸原産の食材が入ってきて、最初は食べるのを避けられていたのに次第に広まっていく過程や、第四節の標題にもあるアルトゥージという人物の業績が面白かったです。
 たとえば、トマトは、最初はマンドラゴラなど毒性で知られる植物と似ているということから、エリートたちからは避けられていました。それが、17世紀末に、ある料理人のレシピのおかげで高級料理として使われるようになり、さらに1830年頃からパスタと組み合わされるようになったおかげで、一気にトマトの消費量が増えていった、といいます。
 アルトゥージは、イタリア各地を旅行し、各地、特に「都市」の料理をその著作にまとめ、国民に広く提示しました。著作の刊行は1891年。イタリアが、乱立する都市国家から、ひとつの国民国家へと動き始めていた頃です。そして、方言が強く、「イタリア人」同士でもコミュニケーションが難しかったという時代から、国語純化論の高まりが起こり始めた頃でもありました。つまり本書には、様々な地方料理の名称を「イタリア語に訳し」、「言語の合理化、平準化、統一化を達成しようとした」という意義もあるといいます。
 この関連で、第四章の中で面白かったのは、大戦期に、ファシズムの下で食生活改革が行われ、「国民食」が形成されていく過程が論じられることです。アルトゥージの著作の背景とあわせ、食と政治的な流れの関連性が強く感じられる指摘でした。

 また第4章やむすびでは、特色ある地方料理がイタリアの楽しい点でもあったのに、その地方料理が「ステレオタイプ化」していくことなどを、旅行してみても「郷土料理」を食べるのが難しいという感想もまじえながら指摘し、現代のイタリア料理の問題点も指摘します。

 料理を軸にして歴史をたどるのもとても興味深いということがあらためて分かりますし、また論じられる話題も豊富で、楽しい一冊です。





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Last updated  2013.11.09 21:34:30
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