カテゴリ:西洋史関連(日本語書籍)
河原温『中世ヨーロッパの都市世界』 ~山川出版社、1996年~ 山川出版社の世界史リブレットの一冊として刊行された、中世ヨーロッパ都市史研究で有名な河原温先生による概説書です。 河原先生による単著として、次の文献を紹介したことがあります。 ・河原温『都市の創造力(ヨーロッパの中世2)』岩波書店、2009年 2009年の『都市の創造力』の方が、当然、より最新の研究動向が踏まえられており、またより内容が詳しい(そもそもページ数が違いますが)ですが、本書は、リブレットということで、エッセンスが凝縮されていると同時に、図版も多く、貴重な概説書であることに変わりはないと思います。 本書の構成は次のとおりです。 ――― [序] 都市イメージの再考 1.中世都市の生成 2.中世都市のコスモロジー 3.中世の都市空間 4.中世都市生活の枠組みと人的絆 5.中世末期の都市と社会 参考文献一覧 ――― 第1章は、初期中世(5世紀~10世紀)から盛期中世(11~13世紀頃)までの中世都市の歴史的概観を提示します。都市の類型や、コミューン運動について論じられます。コミューン運動については、「都市領主の支配からの一定の自立と領域的平和を求め、住民同士で結ばれた誓約を通じて都市住民の共同体を形成した運動」(15頁)と一般にみなされてきていましたが、本書では、この運動が「多くの場合、少数の有力者層による寡頭政的性格を当初からもっていた」(17-18頁)と、一般的な見方を相対化してくれます。 第2章は、聖なる都市、悪徳の場としての都市という、中世都市に同時代人がいだいたイメージに焦点を当てます。 第3章は、市壁や広場、教会といった都市の空間自体の紹介や、都市が決して清潔ではなかったこと、飲酒による暴力が多かったことなど、生活の一端も紹介されます。 第4章は、より都市での生活にあり方に焦点をあてます。同職組合(ギルド)、兄弟団などの人的つながりとその役割、大学などについて紹介されます。 第5章は、中世後期の都市の様子を描きます。行列や祭典の様子や意義、中世末期の都市の変容などが論じられます。 以上、簡単に本書の内容をメモしました。本論自体は全体で90頁弱で読みやすく、冒頭にも書きましたが、中世都市史のエッセンスがまとめられた貴重な概説書だと思います。 ・西洋史関連(邦語文献)一覧へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.12.20 22:00:29
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