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2019.05.26
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チョーサー(西脇順三郎訳)『カンタベリ物語(下)』

~ちくま文庫、1987年~

(Geoffrey Chaucer, Canterbury Tales)

 

 ​上巻​に続き、巡礼参加者の話が繰り広げられます。

 簡単にメモしておきます。

 

―――

「郷士の話」武者修行のため外国に行った夫の帰りを待ちわびて悲しむ女のため、なんとかしたいと言い寄ってきた男に、女は無理難題を吹きかける。しかし男は奇術家の力を借りて、その難題を解決してしまい…。

「医者の話」邪な裁判官に引き取られた娘を守るために、その父親がとる行動とは。


「赦免状売りの話」三人の道楽者が、他人の宝物を盗む。しかし、それぞれが宝を独り占めしたくなり…。


「船長の話」ケチな商人と贅沢な女房の話。


「尼寺の長の話」聖母マリアの功徳を説く話。

「チョーサーの話」メリベウスという金持ちの男と、プルデンス[思慮分別]という名の妻の話。二人の娘とプルデンスが悪漢に襲われ、仲間とも相談の上で敵を相手に戦争をしようと考えるメリベウスだが、プルデンスは多くの聖書の逸話などを引きながら、夫の考えをあらためようと説得する。


「修道院僧の話」アダム、サムソン、ネロなど、多くの人物の没落の物語。


「尼僧侍僧の話」雌鶏の言葉を聴いて、占いにさからい野原に降りた雄鶏と、雄鶏をだます狐の話。


「第二の尼の話」聖女セシリヤは、兄弟を説得しキリスト教徒に改宗させるが、地方長官アルマキウスは二人を殺してしまう。しかしセシリヤは、地方長官の前でも信仰を貫き通す。


「僧の従者の話」錬金術師の弟子をしていた従者が、錬金術のひどさを力説する。


「大学賄人の話」カラスが黒くなった由来の話。太陽の妻が、太陽不在時に不倫をしていたことを白いカラスが太陽に伝え、太陽は怒りカラスを黒くしてしまう。(参考:オウィディウス『変身物語(上)』岩波書店、77-82頁)


「牧師の話」贖罪についての説教。贖罪は、痛悔、告解、罪償完済の三つの部分からなる。痛悔についての話の中で、七つの大罪と、各々にまつわる小罪、そして各々の薬となる美徳について詳述。

―――

 

赦免状売りの前口上は、以前紹介したClaire M. Waters, Angels and Earthly Creatures. Preaching, Performance, and Gender in the Late Middle Ages, University of Pennsylvania Press, 2004でも取り上げられています。本書解説でも、中世の説教のあり方に言及しており、「この点で実際的な文献として大切」(419)と評価されています。

「第二の尼の話」で紹介されるセシリヤの言葉が印象的です。「あなたの権勢など少しも恐れるに足りません。と申しますのは、人の権力などは本当にいずれも空気でふくらんだ膀胱みたいなものに過ぎません。それがすっかりふくらんでも、その偉そうな様子は、針一本でぺしゃんこにされてしまうことでしょうからね」(240)。無駄に偉そうな人間の前で毅然とした態度、とてもかっこよいです。


 「牧師の話」は、説教の構造も内容も、私の研究関心からとても興味深く読みました。


 本書にはチョーサー年譜も付されており、有用です。それによれば、チョーサーは1340-43年頃に生まれ、1400年に亡くなっています。また、『カンタベリ物語』は、30人の巡礼が、カンタベリへの往復でそれぞれ2つずつの話をするという、合計120の話が構想されていましたが、24の話を遺したのみで未完に終わりました。


 本来はこういう作品は大学生のうちに読んでおきたかったのですが、不精者だったので今いろいろと読んでいる次第です。

 上巻の記事に書いたとおり、訳語はいろいろ気になるところもありましたが、全体として読みやすく、良い読書体験になりました。

 

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Last updated  2019.05.26 21:57:35
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