カテゴリ:西洋史関連(史料)
~ちくま文庫、1987年~ (Geoffrey Chaucer, Canterbury Tales)
上巻に続き、巡礼参加者の話が繰り広げられます。 簡単にメモしておきます。
――― 「郷士の話」武者修行のため外国に行った夫の帰りを待ちわびて悲しむ女のため、なんとかしたいと言い寄ってきた男に、女は無理難題を吹きかける。しかし男は奇術家の力を借りて、その難題を解決してしまい…。 「医者の話」邪な裁判官に引き取られた娘を守るために、その父親がとる行動とは。
「チョーサーの話」メリベウスという金持ちの男と、プルデンス[思慮分別]という名の妻の話。二人の娘とプルデンスが悪漢に襲われ、仲間とも相談の上で敵を相手に戦争をしようと考えるメリベウスだが、プルデンスは多くの聖書の逸話などを引きながら、夫の考えをあらためようと説得する。
―――
赦免状売りの前口上は、以前紹介したClaire M. Waters, Angels and Earthly Creatures. Preaching, Performance, and Gender in the Late Middle Ages, University of Pennsylvania Press, 2004でも取り上げられています。本書解説でも、中世の説教のあり方に言及しており、「この点で実際的な文献として大切」(419頁)と評価されています。 「第二の尼の話」で紹介されるセシリヤの言葉が印象的です。「あなたの権勢など少しも恐れるに足りません。と申しますのは、人の権力などは本当にいずれも空気でふくらんだ膀胱みたいなものに過ぎません。それがすっかりふくらんでも、その偉そうな様子は、針一本でぺしゃんこにされてしまうことでしょうからね」(240頁)。無駄に偉そうな人間の前で毅然とした態度、とてもかっこよいです。
上巻の記事に書いたとおり、訳語はいろいろ気になるところもありましたが、全体として読みやすく、良い読書体験になりました。
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Last updated
2019.05.26 21:57:35
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