カテゴリ:本の感想(ま行の作家)
~徳間文庫、2017年~
麻耶雄嵩さんの、ノンシリーズの連作短編集です。
舞台は、坊ちゃんお嬢さんが通う私立ペルム学園。古生物部の部長神舞まりあさんは、化石への情熱はすごいのですが、テストでは赤点続きです。まりあさんと幼なじみの桑島彰さんは、彼女のお守りとして、ペルム学園に入学し、古生物部に入ることとなります。 古生物部は2人だけで、過疎部問題に直面していました。それまでの生徒会はまりあさんと派閥が同じなので大丈夫でしたが、今期の会長はそれまでの派閥とは反対の立場で、一定の成果をあげないと古生物部を廃部にするといいます。 そんな状況の中、ペルム学園でいくつもの事件が起こり、まりあさんが推理しては、彰さんがダメ出ししていくという、斬新なスタイルです。千街晶之さんの優れた解説にもあるように、ダメ出しされたまま物語が次に進んでしまうので、なんとも据わりの悪い感覚になります。 それでは、収録されている6つの事件について、簡単に内容紹介を。
――― 「古生物部、推理する」生徒会に過疎部問題の話をされた後、しぶしぶ勧誘活動にと部室を出た彰は、シーラカンスをかぶった男が疾走しているのを目撃する。その後、新聞部の生徒が殺されているのが発見される。古生物部のシーラカンスを盗んだ犯人の目的は?
「真実の壁」部室棟に体育館の壁が接近しているため、壁には部室内のいろんな情景が影で映し出され、「真実の壁」と呼ばれていた。生徒会の面々が古生物部に来てもめているとき、停電が発生。一瞬停電が解除されたとき、真実の壁には、殺人を行うような影が映し出される。直後、外には生徒が落ちていて、死んでいるのが確認された。
「移行殺人」叡電部に入らないかと、さして親しくもない同級生、八瀬に誘われた彰だが、叡電部の部長たちは、彰が古生物部に入っていると知り急に及び腰に。後日、叡電部で事件が起こる。八瀬が文化祭のために作っていた叡電の模型が壊され、八瀬自身も何者かに殴られて殺された。怪しい人物が、叡電部あたりを通っていたのが目撃されていた。
「自動車墓場」石川県まで化石掘りの合宿のため訪れたまりあたちだが、同じ宿に生徒会も泊まっていると知り、一気に険悪なムードに。翌朝、化石掘りに出かけたまりあと彰だが、道中に不審な車を発見。帰り道、車の中で何者かが死んでいた。それは、ニュースに出ていた、京都で事件を起こした犯人のようで…。
「幽霊クラブ」廃屋のような旧クラブ棟が解体されることになり、一つの問題が持ち上がる。旧クラブ棟でこっそりクラブ活動をしている幽霊クラブをどうするかという問題だった。前生徒会メンバーが、現メンバーに、幽霊クラブを黙認するのか、事故になっては危ないから実態を把握すべきと声をあげる。生徒会メンバーで「ガサ入れ」をしている最中、言い出した生徒が屋上から落下して死亡した。
「赤と黒」古生物部に新入部員!?と喜ぶのもつかの間、彼は生徒会のメンバーとも顔見知りのようで、とつぜん挙動不審になる。そんな中、密室状況の体育館内の倉庫から、新入部員の死体が発見される。 ―――
これは面白かったです。物語の概要は冒頭に書きましたが、探偵が赤点続きということで、探偵にダメ出しばかりする助手という設定が秀逸。個々の物語にも(一応の)解決があるので、もちろん謎解きミステリとしても楽しめます。 エピローグではなんともいえない気持ちになりました。
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Last updated
2020.02.16 22:05:07
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