乾くるみ『新装版 塔の断章』
~講談社文庫、2012年~
乾さんの単著でいえば3作目の長編にあたる、初期の作品にして、タロウ・シリーズ第1弾です。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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『機械の森』という小説がゲーム化されることになり、企画に参加することになった小説家の辰巳まるみは、室長の別荘に招かれた。複数のメンバーで過ごした翌朝、室長の妹が別荘の塔から墜落死しているのが発見される。
辰巳は、企画担当の天童とともに、事件の真相を解明してほしいと頼まれ、調査を進めていくこととなるが…。
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タイトルどおり、本編は「断章」として、色んな場面が時系列に沿わずばらばらに提示されるという、独特の構成です。その構成への先入観から、とっつきにくいというイメージがあり、初期の『Jの神話』や『匣の中』を読んでいた頃には手に取らずにいたのですが、あにはからんや、これは面白かったです。
辰巳さんが『機械の森』を書くきっかけとなったと思われるエピソードや、事件が起こるまでの様々な過程やメンバーの思惑など、断片的に描かれながらもそれらがつながっていき、結末に向かっていくのを、わくわくしながら読み進めることができました。
この度読めて良かったです。
(2020.07.29読了)
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