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2021.09.22
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アルフレート・ハーファーカンプ(大貫俊夫他編訳)『中世共同体論―ヨーロッパ社会の都市・共同体・ユダヤ人―』
~柏書房、2018年~


 トリーア大学名誉教授で、中世社会史を専門とするハーファーカンプの主要論文7編を収録した日本オリジナルの論文集です。
 本書の構成は次のとおりです。

―――
序文

第I部 中世都市論の展開
 第1章 中世盛期・後期における「初期市民的」世界―地域史と都市社会の歴史
 第2章 盛期中世の「聖なる都市」
II部 共同体の諸形態と宗教性・公共性
 第1章 共同体における生活―12世紀における新旧の諸形態
 第2章 「大鐘を鳴らして知らしめる」―中世の公共性について
 第3章 1213世紀における兄弟会とゲマインデ
III部 キリスト教社会とユダヤ人共同体
 第1章 中世アシュケナジム空間におけるキリスト教徒とユダヤ人の「共同市民制」
 第2章 1090年までのオットー=ザーリア朝における司教とユダヤ人の諸関係

【解説】継承と革新―アルフレート・ハーファーカンプの中世社会史研究(江川由布子)
訳者あとがき(大貫俊夫)
略記号一覧
索引
―――

 印象に残った点をメモしておきます。
 I-第1章は、都市史研究の動向整理となっています。最終節で提示されるシステム理論、中心地理論、構造主義理論という3つの理論とそれへの批判と評価が興味深いです。
 I-第2章は、伝統的な修道士たちによる都市への批判的言説をとりあげた後、都市印象に描かれた「神聖な都市」のイメージを出発点として、中世における「聖なる都市」の位置づけを分析します。
 II-第1章は、12-13世紀の新しい宗教運動を共同体という観点からみていく興味深い論考。ベギンという世俗にいながらにして聖なる生活を志した女性たち、フミリアーティという聖なる生活を志した俗人たち、後に一部が異端宣告を受けるワルド派など、私が関心を抱いている人々が取り上げられ、勉強になりました。
 II-第2章は、公共性を醸成する大鐘の役割に関する、こちらも興味深い論考。様々な事例の具体的な分析から、「鐘なくして都市共同体なし」というテーゼを提示します。
 II-第3章は、本書で何度も登場する「ゲマインデ」という研究概念の定義、そして本章の死標題にある兄弟会の指標を提示し、それらの共通点と相違点を浮かび上がらせます。本章では、橋の建設・維持と並んでよそ者や貧者の世話を行っていた架橋兄弟会という兄弟会が紹介されているのが興味深かったです。
 第III部は中世都市(共同体)とユダヤ人の関係を論じる2つの論文からなります。特に第2章では、一部の都市の司教が、ユダヤ人に有利な条件を提示し、彼らの定住を促していたという事実が指摘され、それも単なる経済的な事情によるものだけではなかったということが示されます。
 江川先生による解説では、ハーファーカンプの研究の前史として、オットー・ブルンナーとカール・ボーズルの研究の流れが示されている部分が勉強になります。
 大貫先生による訳者あとがきでは、ハーファーカンプ氏がある研究書について、「あれにユダヤ人は一人も出てこないんだ!」と力説したというエピソードと、これが、「皇帝・国王の事績が権力者とのかかわりだけに終始していることに対する、歴史叙述上きわめて本質的な批判であった」という言葉が興味深かったです。(389頁)

 十分に理解しきれたとはいえませんでしたが、鐘の問題、宗教運動への共同体という視点、ユダヤ人へのまなざしと、興味深いポイントも多く、勉強になりました。

(2021.06.27読了)

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Last updated  2021.09.22 23:11:30
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