関田涙『名探偵宵宮月乃5つの事件』
~講談社青い鳥文庫、2008年~
マジカルストーンを探せ!シリーズの主人公、小学5年生の朝丘日向さんと宵宮月乃さんが活躍する短編集です。
日向さんのいとこは、大学生で、推理小説研究会に入っていますが、先輩の出したミステリの真相が分かりません。日向さんが月乃さんを紹介しますが、その探偵としてのすごさを信じてくれません。そこで日向さんは、月乃さんのすごさを示す5つのエピソードを語ります。
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「Case1 2時56分の暗号」『マジカルストーンを探せ!月の降る島』で出会った榊さんのジュエリーショップにやってきた怪しげな男は、指輪を買った後、謎のメモを残していた。また、男が2時56分に「ジャストだ」と言った意味とは…。
「Case2 密室から消えた少女」片本くん、そして『怪盗ヴォックスの挑戦状』で出会った片本くんのいとこといっしょに、4人で遊園地に行った日向さんたち。迷子を捜している婦人と出会い、特徴を聞いて迷子を捜す日向さんたちですが、女の子は密室状況の更衣室からいなくなってしまい…。
「Case3 あばかれなかったアリバイ」『夢泥棒と黄金伝説』で出会ったリズさんと再会した日向さんたちは、リズさんの依頼で彼女の学校を訪問します。バザーの模擬店などで手伝っていたリズさんたちですが、2回目に教室に入ると、リズさんの習字だけがゴミ箱に捨てられていたというのです。当日バザーを手伝っていたクラスメイトには全員にアリバイがあるようで…。
「Case4 南風町の名探偵対決」『怪盗ヴォックスの挑戦状』で出会った大学生にして名探偵・瞳さんに誘われ、日向さんたちは瞳さんのマンションを訪ねます。瞳さんによれば、金庫に入れていた木彫りの精霊の1つがなくなってしまったというのです。瞳さんを訪ねた人たちの状況を聞きながら、月乃さんは真犯人を推理します。
「Case5 謎の魚拓」『亡霊島の地下迷宮』で出会った都土夢くんが日向さんに魚を届けてくれました。彼はすぐに帰ってしまうのですが、魚拓のような謎の絵が描かれた紙が残されていました。
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刊行順ではPart4『亡霊島の地下迷宮』のあとに刊行された本書ですが、本編をすべて読んだあとに読んでみると、また違った感慨があります。
さて、この中ではCase3が好みでした。ちょっとした言葉から真相にたどり着いたり、思いやりのある解決をみたりと、素敵なエピソードでした。
暗号、密室、アリバイと、謎のバラエティも豊かな短編集です。
(2023.08.27読了)
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