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2024.02.19
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京極夏彦『鵼の碑』
~講談社ノベルス、2023年~


  百鬼夜行シリーズの長編第9弾です。


―――
 舞台は、昭和29年3月、日光。

 劇作家で、榎木津ホテルに逗留する久住加壽夫は、従業員―桜田登和子から人殺しの告白を聞く。外に出て、たまたま出会った作家・関口巽に状況を語る。2人は関口の部屋を担当するセツさんの話をヒントに、その日から休みが続いている登和子を探し始める。…「蛇」。
 御厨冨美は、勤め先の経営者・寒川秀巳の行方を捜すため、薔薇十字探偵社の益田に依頼した。寒川は、父の死の謎を追い、笹村の名をヒントに、日光に出かけたと思われたが…「虎」。
 長門の退官祝いの酒席で、昭和9年に日比谷公園で起った死体消失事件の話を聞かされた木場修太郎は、現在の上司が当時の状況を知っていることを聞かされる。上司の命令で、日光に向かうことになるが…「貍」。
 学僧の築山公宣は、中禅寺秋彦と学生の仁礼の手を借りながら、輪王寺の文書の調査を進めていた。そんな中、中禅寺は『西遊記』の写本を見つけ、その来歴を調べ始める。一方その頃、世話人から、付近に出現する怪しい男の話を聞かされて…「猨」。
 緑川佳乃は、大叔父が暮らしていた日光の診療所を訪れる。膨大のカルテの整理をしようと思っている中、何者かが診療所を覗き込んでいて…「鵺」。
―――

 蛇→虎→蛇→貍→虎→蛇→猨→貍→虎→蛇……という順番で、各章が語られます。目録をパッと見たときは驚きましたが、その規則性の美しいこと。そして、少しずつ関係者が重なっていくそれらの事件は、終章「鵼」にて真相が明らかにされます。
 いやはや、本編でいえば『邪魅の雫』から17年、中編集『今昔百鬼拾遺―月』ノベルス版からも3年ぶりの刊行ということで、本書の出版は相当話題になったことは記憶に新しいです。
 過去の物語を忘れてしまっていたため、本書出版を機に『姑獲鳥の夏』から全て再読してきて、本書を読むまでに時間がかかってしまいましたが、改めてシリーズの面白さを認識したのはもちろん、本書も抜群に面白かったです。

『陰摩羅鬼の瑕』​末尾あたりから、関口さんを素敵だと感じ始め、​『邪魅の雫』​でも格好良かった関口さんは、本書「蛇」の章でも格好良く見えます。しかし中禅寺さんが登場すると、いつも通りけなされてしまうのですが……。とはいえ、いまさらながら、中禅寺さんの関口さんへの毒舌は、少しずつ憑かれがちな関口さんの憑物を落としてあげているのだと気付けました。榎木津さんも関口さんのことをぼろくそに言いますが、榎木津さんなりに関口さんを大切にしているようにも思います。
 軽佻浮薄な益田さんが時折見せる暗い表情もぐっときますし、(詳細は伏せますが)緑川さんの役回りも素敵でした。
 昭和9年に起こったいくつもの不可解な事件はどのようにかかわっているのか、が本書のメインですが、あらためて憑物落としのシーンは素敵です。
 これは面白かったです。良い読書体験でした。

※私だけではないでしょうが、本書購入時にある意味一番嬉しかったのは、帯記載の「次作予定『幽谷響の家』」という文字でした。次作も楽しみです。

(2024.01.18読了)

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Last updated  2024.02.19 22:50:54
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