山内志朗『中世哲学入門―存在の海をめぐる思想史』
~ちくま新書、2023年~
著者の山内先生は慶應義塾大学名誉教授。
西洋中世研究などでそのご論考は拝読しているものの、正直私には難解という状況ですが、「入門」の一言に惹かれ本書を手に取った次第です…が、私には「入門」もできないくらいに難解でした。
本書の構成は次のとおりです。
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はじめに
第1章 中世哲学の手前で
第2章 中世哲学の姿
第3章 存在の問題
第4章 存在の一義性への道―第一階梯
第5章 スコトゥスの基本概念についての説明
第6章 存在の一義性―第二階梯
第7章 個体化論の問題
第8章 普遍論争
第9章 中世哲学の結実
終章 中世哲学の構図
あとがき
事項索引
人名索引
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本書は、こういった入門書で想像されるような、有名な思想家の略歴とその思想を紹介して中世哲学の概略を描く…というスタイルをとっていません。
山内先生の「個人史」にも触れながら、中世哲学の主要なテーマである「存在」「普遍」といった論点にしぼって、特にドゥンス・スコトゥス(1265頃-1308)の思想や主要概念をたどっていく、という構成になっています。
本書の中心的な主張は、普遍論争(普遍は実在か名のみか)という図式では中世哲学は説明できない、という点であり、また普遍は名のみとする(とされる)唯名論が「憎まれ」てきた図式を批判する立場をとります。そのために、その前提となる「存在」とは何か、というところから、関連する哲学用語の豊富な解説もはさみながら論を進めていきます。
先述のとおり、曲がりなりにも西洋中世史の勉強を続けてきているので、中世哲学にもあらためて触れておこうと本書を手に取った次第ですが、今の私には非常に難解でした。
(2024.07.05読了)
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