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プリティかつ怠惰に生きる

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May 31, 2007
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カテゴリ:創作


 彼の感情が高ぶる。彼の血液が沸き立つ。何故自分が沈んでいたかなど、考える意味も必要も無い。人を残忍に殺すという目的さえ忘れなければ。
 生き甲斐かと問われれば、彼は違うと答えるだろう。生きていく理由だのというものではない。強いて言うならば、この行為こそが彼自身。やるべきこと。やらねばならぬこと。
 死をもたらす事そのものが、彼が生きるということなのだ。




 コテージの持ち主は、わがままでケチなクソアマが溺れたなどという、俺にとってはどうでもいいことを大声で喚きながら飛び込んできた。またいつもの冗談だろ、とわざわざ言うのも面倒で、無視を決め込む。
「また冗談? 今度はそんな面白くないわよ。彼女はどこに隠れているの?」
 気だるそうに答える、この場でただ一人の女性。笑顔ではあるが、少しばかりの不安に顔を曇らせている。
「違うんだよ! 本当に溺れたんだ! そこの湖だよ! 早く来てくれ!」
 しかし、必死そうな顔は変わらない。これで演技ならばたいした役者だと言えるところだろうが、残念ながらこいつの本業はたいした役者なのだ。親のすねかじりとは言うものの、決して技がないわけではない。我が劇団でも、一二を争う実力者だ。俺は変わらず、我関せずを決め込む。
「よし、行こう」
「やめとけよ。時間の無駄だぜ」
 筋肉質な体を動かし、機敏にロープと浮き輪を用意する大道具係に一声かける。どうせ嘘なのだから、行く意味などない。クソ真面目に付き合っても、痛い目を見るだけだ。
「嘘ならそれでいいけど、本当だったら大変だ。実際、彼女の姿は見えないしな。行くだけ行ってみる」
「おーお、優等生だこって。だけどよ、あいつ泳ぎは得意なんだぜ」
「ジタバタもがきながら沈んでいったんだよ! きっと、つったんだ!」
「だ、そうだ」
 胡散臭いことこの上ない。どうして行く気になれるのか、俺には不思議だ。
「あいつがどうなろうと知ったこっちゃねえよ。仲のいい連中だけで集まるって話だったのに、勝手にくっついて来やがって。別に、死んだって俺は構わねえぜ」
「なんてこと言うんだよ!」
「おーおー、怒った怒った。そうだよな。お前はあいつ目当てだもんな。まったく、あんなんのどこが良いんだか。あいつ、お前の金しか見てねえぞ」
 やつが泣きそうな顔になるが、思い当たるところがあるのだろう、何も言い返さない。
「ちょっと、それは言い過ぎよ」
「何も言わなかったり、言い過ぎとか言ったり、お前らどっかで認めてるんだろ? 言っちまえば楽になるぜ。私はあいつが大嫌いです、ってな」
「……その辺でやめとけ。この辺りにはいないみたいだぞ」
「みたいだねぃ」
 辺りに隠れているだろうあの女に、カマをかけていたことに気づいていたらしい。相変わらず、あいつには隠し事が出来ない。見た目は馬鹿そうなのに、中身は至って鋭い男だ。
「準備が出来た。行くぞ。案内しろ」
「う、うん……」
「私も行くわ」
「そうだな。人手は多いほうがいい。おい、お前はどうする?」
「遠慮させていただきます。水死体が見れるっつーんなら行くがね」
「そうだな。彼女が俺たちと行き違えたら、掛け金を外すことは出来ないからな」
 本当に、何でもお見通しだ。




 三人が小屋から出るのを待ち、落ちていた石を投げて窓にぶつける。中でくつろいでいた男は、訝しげな顔をしながら窓に近づいてきた。私は窓の横に張り付き、息を潜めて待つ。窓を開けた瞬間、男の顔をわしづかみ、引きずり出した。勢いがついた体は、そのまま私の手を離れ、強かに背中を打ち付ける。しかし、もともと丈夫に出来ているのか、すぐに起き上がり、何が起こったのか理解していないのだろう、目をぱちくりさせながら辺りを見回した。
 男は、ゆっくりと歩を進める私の姿を確認した瞬間、顔を引きつらせて腰を抜かした。歯の根が合わないようだ、ガチガチと音を鳴らす。腰を引きずりながら情けなく後退する男を見て、私の胸は高鳴った。
イ イ ゾ
ソ  ノ チ  ョ  ウ シ   ダ
モ   ッ  ト  モ   ッ   ト
キ   ョ  ウ  フ ヲ ミ セ   ロ
 溶けた金属が腹の中で暴れまわっているようだ。高揚感に促され、失禁する男にゆっくりと近づき、髪の毛を掴む。蚊が鳴くように短く悲鳴を漏らすが、意に介さずそのまま木に叩きつけた。
 口の中を切ったのだろう、血を吐きながら涙を流す男は、か細く「助けて」と呟いた。まだ命乞いをする元気があるようだ。さらに顔面を叩きつける。血が飛び散り、皮膚は裂け、もはや悲鳴も上がらない。
 唇は歪み、鼻も前歯も折れ、あちこちがぐちゃぐちゃに切れた顔には、気取った色男風の面影はない。既に意識を失っているのだろうか。体にはかすかな動きもなく、心臓だけがひたすらに生命を主張していた。私は落ちていた木の枝を拾い、鼓動するそれ目掛けて降りおろした。
 男の体が一瞬感電したかのように痙攣し、すぐに動きを止める。木の枝を抜くと、血が噴水のように飛び散った。
生臭く赤い液体にまみれながら、充足感を噛み締める。
 次だ……。
 コテージの裏に立てかけてあったナタを手に持ち、次なる獲物が待つ湖へと足を向ける。
 風が強くなってきた。







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Last updated  Jun 2, 2007 09:26:21 PM
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