カテゴリ:創作
彼は求めていた。舞い散る鮮血を。絶望の悲鳴を。恐怖の色を見せた目を、この手でえぐり抜くことを。 渇きも飢えも、心地よい。メインディッシュはもうすぐだ。彼は、笑いを堪えることをしなかった。それどころが、この笑いが獲物に聴こえていることを願った。 自分がたどり着くまでに、極限の恐怖を感じてくれるよう。 殺される!殺される!殺される! 舗装されていない森の中を走れば、息は切れるし、足は痛い。靴も履かずに飛び出したからなおさらだ。しかし、それでも止まることはできない。止まれば追いつかれる。既に、どこを走っているかも分からないけど、ひたすら遠くに逃げなくてはいけない。 首の骨を折られて死んでいた。あいつがやったんだ。生首を投げ込まれた。これもあいつがやったんだ。窓から出たとき、顔がぐしゃぐしゃの死体があった。これもあいつの仕業なんだ。彼は、あの化け物と対峙した彼はどうなっただろう。追いかけてこない。死んだのか? 私のために? 発狂しそうになる。大声で叫びたくなる。叫ぶ。頭を振る。もう、何がなんだか分からない。死にたくない。死にたくない。そんな難しいことじゃないはずなのに、どうしてこんなにも。私は何も悪いことをしていない。私は何もしていないのに。 どうしてこんなことに。楽しいキャンプだったのに。殺される。死にたくない。みんな死んだ。殺された! あの死体に! みんな死体に! うああああ! もうイヤだ! 帰りたい。母さん! 父さん! 頭に浮かぶのは最愛のあの人。私を守るためにコテージに残った、あの人。 いや、ダメだ! 死ねない! 生きたい! 守ってくれたんだ! 助けてくれたんだ!私のために! 彼は最後になんと言った? 逃げろと言った。彼は、最後まで私のために闘ってくれた。冷静になれ。彼はいつもそう言っていた。冷静に。冷静に。そうだ。生きるんだ。方向を確認して、道路に出るんだ。月は出ている。時間も分かる。ならば、方角も分かるんだ。そうだ。冷静になれ。そうすれば、生きることが出来る。彼のために。 絶対に、死んでたまるか! 走る女を、彼は目で捉えた。待ちわびた獲物を見つけたときの快感は、言葉では説明できないほどのものだろう。 感づかれぬよう足音を忍ばせることすらもどかしく思った彼は、全速力で近づき髪の毛を掴んだ。暴れる女を、強引に振り向かせる。 女の目に映る恐怖の色を見たとき、殺人者の興奮は絶頂を迎えた。 ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ 恐怖と、苦痛と、絶望を、腹の底から絞り出すような声が聞こえた。あの女の声だ。何故悲鳴が聞こえる? 私はここにいるというのに。疑問を抱きつつ、急いで声の聞こえた方向へ向かう。先の尖る枝が体を裂くが、とっくに痛覚は無くなっている。 何故女は叫んだのだろうか。転倒して木の枝でも刺さったか、迫りくる恐怖に耐え切れなくなったのか、それとも、 私以上の恐怖に出会ったのだろうか。 そんなことがあるはずがない。迫りくる死の恐怖以上に恐ろしい何かなど、あるわけがないではないか。納得しようとするが、その考えは振り払われることはない。それどころが、体がどんどん冷えていくのを感じている。 私が怯えていると言うのか?ありえない。私は、他人を脅かすために生まれたのだ。他人の恐怖になるために生まれてきたのだ。私が恐怖するなどということは、あってはならないのだ。それなのに、そのはずなのに、私の恐怖は既に核心にまで至っている。 いるのだ。この先に。私以上の、何かが。 私は走り終えた。 女を 否 女の残骸を見つけたのだ。 木にぶら下がった女は、私すらも直視できない状態だった。 最初に目に入ったのは、腹部にあいた大きな穴だった。地面にほとんどの内臓が、無造作に撒き散らされている。乳房は切り取られ、女の腹に詰め込まれていた。 脚には関節が3つほど増えていて、腕は肘から下が丸ごと無くなっている。一本は女のアゴを裂きつつ差し込まれていたが、もう一本はどこへ行ったのか分からない。 顔を見るとさらにひどい。眼窩には木の枝が深々と刺さり、どろりとした液体が涙のように流れている。鼻はぐしゃぐしゃに曲がり、皮が無くてはとっくに取れているだろう有様だ。 女は首をロープで括られ、木の枝からぶら下がっていた。失禁し、折れ曲がった鼻からは鼻水と血が混ざって流れていた跡がある。 ロープを良く見ると、さらに戦慄した。このロープは、他でもないこの女の小腸だったのだ。腹から引きずり出した小腸で、女をぶら下げていたのだ。 人間じゃない。腹の底から冷たいものが全身に広がっていく。こんなことが出来る人間はいない。ましてや獣でもない。獣は、これほどの悪意――悪戯心とすら言える――を持たない。いるのだ。この森に。 私以上に残酷で、私以上に残虐なモノが。 背後から足音がした。 シ ヲ シ ヲ リ フ ジ ン ナ シ ヲ 私の中の澱みが、強烈な意思を持って叫ぶ。背後にいるであろう怪物を殺せと、体を動かし、響かせる。 コ ロ セ コ ロ セ ヤ レ ヤ レ 今なら、何もかも理解することが出来る。私が、何のためにこの凶行に臨んだのか。私は、奴に殺されたのだ。私は、奴を殺すために蘇ったのだ。 コ ロ セ ザ ン コ ク ニ 娘を助けるために私は、奴を湖に引きずり込んだ。しかし、奴は死ななかった。眠っていただけだったのだ。 ザ ン コ ク ニ コ ロ セ それを察知し、私はまたも蘇った。だが、目覚めたときに記憶は無かった。殺さなければいけないという、明確な意思だけが私を動かしていた。あるいは、奴の持つ深遠のような精神に、感化されたのかもしれない。 コ ロ セ コ ロ セ コ ロ セ コ ロ セコロコロコロコロコロコロ そうして何人もの罪無き若者を殺した私は、今 コ ロ サ レ ル 超子供向け小説スプラタ君ファイナルインプレッション ※R指定 スプラタ君は、元気で残虐でちょっと気弱な男の子。将来の夢は、つま先から頭まで隙間なく釘を打ち込むこと。今はまだ、腸を引きずり出して首を絞める程度しか出来ませんが、スプラタ君は夢をかなえるために、毎日努力を怠りません。 スプラタ君が湖から出て、景気よく女の子をぶっ殺していると、なんとスーツを着た首の無い男が歩いているではありませんか。動く首無し死体を殺す機会なんて、一生に一度あるかないかでしょう。スプラタ君は、喜び勇んで飛び掛りました。 しかし、首無し死体も抵抗します。斧をふりふり、スプラタ君に叩きつけようとするのです。しかし、スプラタ君はひょいひょいと身をかわし、相手の胸に拳を叩き付けました。もんどりうって倒れる死体からすかさず斧を奪い取り、そのまま腕を切り落としました。 喉がないので、悲鳴は聞こえません。しかし、腕を押さえ、ジタバタと地面を転がる死体を見て、スプラタ君は安心しました。もしかしたら痛覚がないかもな、と思っていたからです。スプラタ君は、うつ伏せになり腕を押さえる死体を踏みつけます。そして、ふくらはぎに対してちょうど垂直になるように斧を叩き付けました。 繊維に沿って、斧は筋肉の抵抗を感じず、脚に埋まりました。死体は背中を反り、土をかきむしります。喉があったなら、きっと絶叫していたことでしょう。そのままゆっくりと足先まで丁寧にふくらはぎを切り裂いていきます。アキレス腱に達し、かかとを割る頃には、逃げようともがいた手で穴が掘れているほどでした。 スプラタ君はさらに、もう一方の足に斧を突き刺し、身動きが取れないようにしました。そして、貼り付けにされた百舌のように暴れまわるすがたを楽しみながら、ゆっくりと頭のほうに回りこみます。頭があったはずの場所には何もなく、鋭利な切断面からは胃や肺へと続く空虚な穴が小さくぽっかり開いています。スプラタ君は肩を押さえ、握った拳を穴に思い切りねじ込みました。 死体の動きがさらに激しくなりました。グリグリと進むスプラタ君の腕を、爪がはがれるほどに掻き毟ります。斧が突き刺さった脚を痛みを忘れたかのように暴れさせ、そのたびにドロドロしたどす黒い血が飛び散ります。 そうやって、スプラタ君の手が胃の中に到着した頃、スプラタ君はふと疑問に思いました。首がないなら、心臓も止まっているだろう。それでは、これは何をしても死なないのではないでしょうか。さあ、これは問題です。スプラタ君は、相手をいたぶり殺すのが好きなのであって、惨殺するというケジメがないと、そのうち飽きてしまうのです。 そこで、スプラタ君は包丁を取り出し、背中から思い切り突き刺しました。腕のつまった喉から、また少しゴボッと血が出てきます。そして、スプラタ君はお腹の中で背の部分を掴み、ぐいっと引っ張りました。引いても押してもいないけど、スプラタ君の鬼のような力で、包丁は肉を引きちぎりながら進みます。ジタバタと暴れていた手足は、もはや痙攣しかしていません。そして、お腹から喉に至るまでが真っ二つに切り裂かれると、完全に死体はその動きを止めていました。 スプラタ君は、とても貴重な体験をしたのでホクホクです。足取りも軽やかに、お家へと帰りはじめました。 今回の教訓!「人生万事塞翁が馬」 スプラタ君は前回、首なしの死体に邪魔されたけど、結果的にはそのおかげでこんなに珍しい殺害が出来たんだ!人生何がプラスになって何がマイナスになるか分からないから、皆もピンチをチャンスに変えられるように頑張ってね! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 9, 2007 09:43:15 PM
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