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2011.03.05
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カテゴリ:仙台
升屋平右衛門が辞任した後、仙台藩の蔵元を引き受けたのは、近江日野出身の富商中井新三郎光基である。

安政3年9月に、同年の新穀から江戸に廻送する米の販売方を中井に依頼するが、中井から問い合わせがあれば世話をするように、藩の財用方役人から升屋に依頼し、升屋平右衛門が承知した上で、この約束を中井に伝える文書が取り交わされている。しかし、升屋が辞任する原因となった100両の累積債務がどう決着したかはわからない。土屋喬夫は、「恐らくその滞借は年賦償還すべき約を結んで、一時的解決を告げたものであらう」(『封建社会崩壊過程の研究』1927年)と類推する。

難事を引き受けることとなった中井だが、そもそも中井源右衛門光武が明和6年(1769)に大町一丁目(現在の青葉区大町2丁目)に家伝日野合薬をはじめ、古手・繰綿を上方からもたらし、奥州産の生糸・紅花・青芋・海産物などを上方に送るために、日野屋という店を開き、店主は中井新三郎を称した。すなわち新三郎は、代々の当主源右衛門の仙台店での名乗りである。

源右衛門光武を初代として、2代光昌、3代光煕と着実に発展をみせるが、光武の代の天明3年(1783)頃から藩との関係が生じている。中井の仙台店日野屋の営業は、純商業部門に関する限り中井家の宝庫であった(江頭恒治『近江商人中井家の研究』1965年)。しかし、藩との関係を濃密にするに従って、御用金や調達金が課せられ、それが不利となった。

升屋が仙台藩との関わりをふりほどこうとしていた安政2年(1855)12月、藩は城下の為替組10人の富商の1人として中井に財用方御用達を命ずるが、中井はそのうちの主立4人の筆頭とされていた。安政3年の蔵元の中井への切り替えはその延長線上のことであった。4代光基は同年11月正式に仙台藩蔵元に就任する。

仙台藩と中井の関係はすぐギクシャクする。安政4年秋には藩から江戸表の米の売支配を断られたが、臨時の御用金を辞退したことが祟ったらしい(江頭上掲書)。それでも中井の江戸廻米売支配は復活するが、万延元年(1860)から中井はこの役を罷免されたことで、蔵元としての実権をほとんど剥奪されている。これに対しては中井は、同年8月仙台店の閉鎖で対応している。

江頭は、これを藩からの追加調達を防止するための戦略と見ているが、このあと仙台店の主な手代15人が連署して当主光基に隠居を迫る事態が発生し、嗣子源吉郎光貞(後の光宗)が継いで仙台店は再開している。

このクーデターのあと、再開された仙台店は蔵元を務めるとともに、光基が拒否した御用金の調達に応じていることが、蔵元としての会計が安政3年から慶應3年(1867)まで5万3500両の損金を計上しているところに窺える。この間、中井が藩に融通した金額は自財他財合わせて12.5万両、中井が関わった藩札発行12.5万両で、合わせて25万両を用立てている。

維新の到来で藩債の処理は政府によって行われたが、升屋同様に中井もこれを取り戻すことはできず、仙台店は明治22年についに閉じるに至る。隠居させられた4代光基は明治4年に没しているが、光基が嘉永2年に開設した京都店は純商業部門の生糸商売で中井最後の拠点として健在ぶりを示し、昭和13年の戦時統制下で閉店するまで継続した。

こう見てくると、光基の仙台店閉店(万延元年)を契機としたクーデターは、藩財用方の意を受けた手代によるとの見方(江頭)は肯ける。しかし、光基はずしのクーデターそのものが、実は財政破綻が明白な仙台からの資本逃避を実行し、中井家存続を進めるための光基の高等戦術のようにも思える(岩本)。

■参考
 岩本由輝『本石米と仙台藩の経済』(国宝大崎八幡宮 仙台・江戸学叢書15)(大崎八幡宮仙台・江戸学実行委員会、2009年)

■関連する過去の記事
 仙台藩の経済と財政を考える(4) 藩財政の構造と御用商人(2011年3月5日)
 仙台藩の経済と財政を考える(3 本石米と買米制度)(2011年2月20日)
 仙台藩の経済と財政を考える(2 仙台藩の歳入歳出)(08年1月3日)
 秋田藩佐竹義和の改革(07年12月21日)
 秋田藩佐竹義宣の改革を考える(07年12月19日)
 上杉鷹山の知恵袋 竹俣当綱(07年1月17日)
 仙台藩の経済と財政を考える(1 藩札)(06年07月25日)





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最終更新日  2011.03.05 20:49:15
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