2007/11/06(火)05:05
ランチセット 江戸勘 ~道奥のだれも知らない小江戸~
すしランチの「楓」というのを注文する。(どんな寿司が何貫出るのかは、あらかじめ訊いておいた。ある人に言わせると「そんなことは恥ずかしくてとてもきけない」というが。訊かないで後から文句をいうほうが恥ずかしいだろう。文句を言わないまでも、予想と違ってガッカリ来ることはよくあるケース。勝手に期待して、勝手に失望するのは自由かも知れないが。私はそういう自家処理を、できるだけ回避する)
メニューに「会席風」とことわっているだけあって、定石順にそって素直に供出される。最初に白身のごまだれ合えの小鉢がやってきた。続いて焼物、揚物の順。焼物はぶり、揚げ物はめひかりが選ばれていた。
しばらくして、メインの寿司皿がやってきた。こちらは、まぐろ、玉子、穴子、帆立、いくら、鯛、新香巻という顔ぶれ。巻物が(新香)にされているのは、プライスからいっても妥当なところか。
握りはすべて、市原の江戸銀 と比肩できるくらいの小ぶりな仕立て。女性には嬉しい親慮だろう。ヒョイとつまんで、ヒョイと口に収めることができる。軽妙でカジュアルで小粋そのもの。
隅の隅まで神経が行き届いている。見た目以上に、その細工加減がすばらしい。赤身の真ん中には、筋状のゆるい切りこみが入っていた。食してみると、それが深く大きな意味を持つ。
その筋は、唇の先に触れたとたん「十戒」の海よりも激しく割れ、その後の大規模なる瓦解の幕開けを知らせてくれる。ステージ幕が瞬時に全開する。切身と渾然一体化したはずの握りは、口の中で手もなくほどけ、分離し、細流化し、とろけ、口蓋内の奥のほうに(実体薄く)収まっていってしまう。ソリッドがほぼリキッドに変容する美味プロセスを、口中で電光石火のうちに成し遂げてしまうのだ。
こんなに柔らかで見事なくらいとろけまくる穴子というのは、今まで見たこともなかった。おいしさを味わうためのシステムトンネルである口蓋内で、その甘い身はみごとにほぐれながら融けていく。そのとけ加減、ほどけ加減を各所センサーでまんべんなく味わいつくしながら、次下プロジェクトに受け渡していく。今さっきここにあったばかりの実体の残像感と生の残り香だけが、食の余韻を漂わせてくれる。あらゆる意味においてパーフェクト。これはもう、すばらしいの一言につきる。満喫した。満喫できた。
幹線から奥まり、ひっそりとしたただの普通風情の寿司屋で、こういう味覚の法悦境を味わえるとは。思ってもいなかった。だから食べ歩きはやめられない。地元の人しか知らないだろうこの種の(穴場店)をこういう形で紹介できるのを、しごく光栄に思う。
「すし屋の江戸勘」
住 所:いすみ市岬町桑田2719-9
アクセス:桑田の交差点近く P(約7台)
電話番号:0470-87-9890
営業時間:11:00-14:00/16:30-21:30/
定 休:月曜日
座 席:カウンター8席/小上がり3卓/座敷1卓/
利用種別:個人向き/女性向け/家族向け/グループ向け/
メニュー:【ランチ】
すし点心(リストより3点セレクト)
づけ丼/穴子丼/ミニばらちらし丼(各400)
いくら丼/いかうに丼/ねぎとろ丼/(各600)
会席風すしランチ「楓」2000/「旬彩」2500/
【にぎり】
並1100/上1500/寿2000/特上2500/おまかせ3000/
【ちらし】
並1200/上1600/特上2600/特製ばらちらし2000/
【丼】
穴子丼1500/鉄火丼1500/ねぎとろ丼2400/いくら丼2000/
雲丹丼2500/づけ丼1500/二色丼(うに・いくら)2500/
三色丼(うに・いくら・ねぎとろ)3000/
【その他寿司】
のり玉700/かんぴょう巻600/鉄火巻き900/太巻1000/
【お好み寿司】(1貫)
(100円)玉子/げそ/とび子/
(150円)小肌/いか/たこ桜煮/海老/サーモン/納豆寿司/カッパ巻/
かんぴょう巻/新香巻/梅しそ巻/納豆巻/山ごぼう巻/高菜巻/
(200円)赤身/づけ/穴子/帆立/甘海老/明太子/エシャロット/
(250円)ずわい/いくら/ミル貝/赤貝ひも/子持昆布/小鯵/鉄火巻/
(300円)白身/赤貝/ぼたん海老/いくら巻/ひもきゅう巻/穴きゅう巻/
(400円)中とろ/うに/
(500円)大とろ/煮蛤/ねぎとろ巻/うに巻/
【今月のおすすめ】
キスと舞茸の天ぷら800/ふぐの白子1200/子持ちししゃも600/
あん肝900/生とり貝刺700/銀たらの粕漬700/
【飲物】
生ビール550/同(グラス)450/ビンビール650/八海山500/
ウーロン200/オレンジ200/コーラ200/
評 価:☆☆☆☆☆
(味4.5/量4/サービス4/雰囲気4/CP4/駐車場5)