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テーマ:癌(3513)
カテゴリ:がん治療
来週、大腸がんの患者さんで新たに外来化学療法を行う方がいらっしゃいます
この患者さんは、肝臓・肺にも転移しており 原発である大腸がんを切除し、抗がん剤治療を行うことになりました 以前、大腸がんの化学療法について書いたことがありますが 2006年07月05日 先日の大腸がんシンポジウムのおさらい 米国のNCCNガイドラインにあてはめてみると、 この患者さんの治療方法としては、第一選択として FOLFOX か FOLFIRI が考えられます (bevacizumab(商品名:アバスチン)は日本ではまだ未承認です) FOLFOX、FOLFIRIは共に48時間 点滴をしなければならず ・2週間に一度、3日間ほど入院して点滴を行う ・患者さんの体にポートを埋め込み、2週間に一度外来で点滴し、 その後の46時間の点滴は自宅で行う ![]() ↑ ポートを埋め込んだ状態です この埋め込んだ部分(膨らんでいる部分)に針を刺して点滴をします 上の2通りのどちらかを選択して行う必要があります 今回の患者さんは、『IRIS(アイリス)』というTS-1とCPT-11を使用した プロトコールを行うことになりました うちの病院でこのプロトコールを行うのは初めてなので、少し調べてみました IRIS [使用する薬剤] ○ティーエスワンカプセル(内服薬) 略語:TS-1、S-1 成分:テガフール、ギメラシル、オテラシル テガフールは体内で5-FUになり、抗腫瘍効果を示す ギメラシルは5-FUの代謝阻害(腫瘍内での5-FU濃度上昇) オテラシルは消化器毒性の軽減 ○トポテシン、カンプト(注射薬) 略語:CPT-11 成分:イリノテカン [投与スケジュール] TS-1を2週間服用し、1週間服用をやめる(休薬) CPT-11はTS-1投与初日に点滴する 3週間を1コースとして繰り返す ![]() ↑ 今回使用する 国立がんセンターのプロトコールです 他にも佐賀大学や北海道大学のプロトコールもあります (プロトコールによって投与量やスケジュールが異なります) ちなみに『IRIS』という名前は irinotecan(イリノテカン)とS-1(ティーエスワン)をくっつけただけだそうです 効果としては、Phase2(小規模の臨床試験)のデータしか出ていませんが 手元にある資料によるとFOLFIRIやFOLFOXと比べ、奏効率は遜色なく 副作用は、グレード3以上のもの(結構重篤な副作用)の発現頻度は IRISの方が少なそうです メリットとしては、長時間の点滴の必要がないところだと思います (吐き気止めの点滴とトポテシンの点滴で2時間程度) ティーエスワンは、日本独自の抗がん剤で、米国では承認されていません そのため、日本国内のデータしかないため、大規模の臨床試験や FOLFIRIと直接比較した試験のデータはまだ出ていません ティーエスワンは、現在 胃がんでは第一選択として使用されることが多く 乳がんでは、セローダと同じ位置付けになります 非小細胞肺がんにも使用されます 最近、膵がんの適応も通り、膵がんの第一選択であるゲムシタビン(商品名:ジェムザール)と 比べ、良いデータも出ているそうです 来年(?)ぐらいには 胆管がんの適応も通るそうです 日本が世界の一歩先を行っているかもしれない数少ない抗がん剤になるかもしれませんね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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この比較試験、私は点滴組になってしまったんですが、
複雑でした。 FOLFIRIだと、ポートを埋め込む処置が嫌だったこと。 内服だと、3週間副作用が持続するかもしれないこと。 (TS-1の副作用の出方次第?) どちらにも自分では決めかねていたので、治験参加にしました。 IRISの方が導入しやすいと、先生方の期待が大きかったみたいです(特に高齢の方とかへ)。 FOLFORIからIRISへ変更の選択は無いと聞いていますが、今後はそれもできるようになるんでしょうか? TS-1はコストも安いと聞きました。 期待が良いデーターを得られてうれしいですね。 (2006年08月20日 00時03分01秒)
A.Monkさん こんばんは
こんな身近に比較試験に関与されている方が見えてビックリです たしかに、ポートの埋め込みは抵抗がありますよね 埋め込んだあとの普段の生活や見た目に難色を示す方もいらっしゃいます A.Monkさんは現在、FOLFIRIを行われているとのことです。肝臓のほうにとても良く効いているそうで、嬉しいですね。大腸がんの治療でFOLFIRIを続けていき、そのあとにFOLFOXを行うと効果的だといわれています。FOLFOXもFOLFIRIとほぼ同じスケジュールでトポテシン・カンプトの変わりにエルプラットを使用します。 そのエルプラットを投与する際に血管痛などもあり、腕の静脈を使うのではなく、ポートを埋め込んで行うのが推奨されているそうです。たぶん、IRISを行った方も、その後の治療としてはFOLFOXになると思います。IRISに割り当てられたかたもゆくゆくはポートを埋め込むことになる方も多いと思います。 ティーエスワンは体内で5-FUとなり薬効を示します。FOLFIRI・IRISともに5-FU+イリノテカンというのは同じなので、この二つを切り替える意義は少ないかもしれません。 TS-1はだいたい一日分が4・5千円です、3割負担で1200円強。14日分で約17000円。そう考えるとアイソボリンの値段が高く、サイクルの短いFOLFIRIの方がコスト的には高そうですね。 ただ、実績のあるFOLFIRIの方が安心感はあるように思います。 (2006年08月25日 01時50分34秒)
tomさん、こんにちは。
先日は母のFOLFOX治療のことでお世話になりありがとうございました。 原発の大腸がんの摘出手術後、約10日で抗がん剤治療に入れ、既に2回のFOLFOX治療を終了致しました。 初回の投与では嘔吐止めとして デカドロン2mg4管を2日とも投与いただきましたが、非常に悪心・嘔吐がきつく非常に辛そうでした。 (食事が出来る様になるまで1週間くらい掛かってました) 幸い、その後の血液検査の結果、白血球の数値も大丈夫という事で、2回目の投与は3日ほどづらして実施いたしました。 2回目は嘔吐止めの薬を強力なもの(薬名は聞いておりません)に変えて頂いた所、今回はほとんど副作用は出ていないようです。 今の所、手足の痺れも全くない様ですが少し味覚がおかしいようで、何を食べても苦いと言っております。 来週に再度CT検査をしていただく事になっておりますで、効果についてもある程度判断できそうです。 ただ担当の医師も、最初の治療から切札(FOLFOX)を使っているので、効果が無いようでしたら諦めて下さいと言われております。 ですが、腹水もあまり溜まっていないようですし、黄疸も今の所出ておりませんので、少し期待を致しております。 また、結果が出ましたらご報告させていただきます。 (2006年08月25日 15時25分58秒) |
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