シンプルヌードル
ピアノクリエ主催「ナウム・グルーベルト ピアノコンサート」の日。今回私たちのグループはリハーサル係というのを仰せつかった。演奏者が来場する前に会場に入り、控え室を整え、リハーサル中の接待をするというものだ。前回の担当者から「バナナとサンドイッチを必ず用意しておくように。」とくれぐれも言い渡されていたので、それだけははずせない!!前回は「バナナ!」と急に言われて、コンサート会場の周りをバナナを求めてさまよい歩いたらしい。たしかにバナナは愛用食らしいぞ。このサンドイッチを用意するだけでも、いろいろ話があって何とか当日の準備に間に合ってホッとするはずだった…。12時半過ぎにグールベルト氏と村手先生が会場につかれた。お二人とも昼食がまだらしい。グールベルト氏はまずはピアノが弾きたいと。先生が「本人はそんなに食べないからいいわよ。」とおっしゃったので、まずはそのままにしておく。そして先生はクリエ代表のI先生とヒルトンへ昼食に出かけられた。1時間強ほど弾かれただろうか?「すみません、演奏者の方がお呼びですけど・・・。」会場の人が呼びに来てくれた。英語でなにか言っている。 「村手先生は昼食に出かけられました。サンドイッチとバナナと日本茶が用意してあります。 よろしかったらどうぞ。」・・・とほとんどボディーランゲージとカタカナ英語の羅列で応対。 「サンドイッチ?NO!バナナ?NO!」ゲゲッ!嫌だと言ってるぞ!! 「ライク…ライス?ヌードル?…ン~~モア、シンポー~(simple)サムスィング!」おいおい、ライスにヌードルって言ってるよ、この人!ヌードルってか?! 「彼女は何時ごろに帰ってくるんだ?」 「もう1時間ほど前に出られましたので、そろそろ帰ってみえると思いますが…。」 「そう、彼女が言ったのか?」 「いや…たぶん…」 「じゃあ、ピアノを弾いてもう少し待ってみるよ。」たぶんきっと、こんな会話が交わされたのだと思う。さ~てそれからが大変!!肝心の先生の携帯は電池切れ。同行のI先生は携帯をお持ちでない…。もう何がなんだか、あっちへこっちへ助け舟を求めて電話しまくる。村手先生のアシスタントをしてくださっているH先生に電話がつながった。「先生!!!お願いします!英語でなんとか通訳してください!」「え?英語?ダメダメ!それに今から(大学で)会議ですのでごめんなさい!がんばってくださいね!」H先生はフランス語と少々のドイツ語は大丈夫だけれど英語はダメだと…。電話は切れた…。結局、アシスタントをしてくださってるもう一人のS先生になんとかつながって、今度はドイツ語で話をしていただいた。結論。うどんが食べたいということがわかった。ここまでくるのに約一時間。さ~てそこからさらにバタバタうどん?うどん?もう3時だよ、ランチタイム終わっちゃってるよ。今うどん食べられるのは…。そこへ村手先生とI先生がご帰還。「せんせ~~い!!」泣きが入る。事の顛末を簡単にお話して先生にバトンタッチ。グルーベルト氏の母語であるロシア語でざっとお話をされたあと「デパートだったら食べられるでしょ。連れて行ってあげて。私は行かないわ。」ぎゃ~~!!!本当ですか!!!その後、タクシーをつかまえてグループの仲間三人とグルーベルト氏の4人で松坂屋へ行く。レストラン街のうどんやさんで天ぷらうどんを食べて頂き、なんとか一安心。氏がうどんを食べておられる間、沈黙もなんだから(沈黙の最も苦手な私は)なんだかわからないことを口走る。 「ホワイトヌードル イズ 【UDON】。ブラックヌードル イズ 【SOBA】。」 「Oh~!【UDON】,I know ! 【SOBA】,I know !」おいおい、知ってるんなら言ってくれよ…。 「【TENPURA】…ジャパニーズ フライ … OK?」 「【TENPURA】I know.OK!」おいおい、天ぷらも知ってるならいってよ~。この後の予定だとか、大学で教えておられる学生の話だとか、練習の話とか…思いつくことを思いつくままに一生懸命話す。う~ん。再度タクシーに乗って、いったんホテルへお送りする。もう、ここですべての力が抜けたような…。その後、もちろん本番のコンサートがあったのだけれど、なんだか心ここにあらず。【うど~ん】と【ショパン】がグルグル回っているうちに、2時間が過ぎた。あのバナナとサンドイッチはなんだったんだろう。