カテゴリ:私のすきなこと
教室といっても文楽劇場での公演で、公演の間に文楽の技芸員(人形遣い、浄瑠璃語り、三味線を使う人たち)が文楽とはどういうものかということを教えてくれることになっている。 小学校~大学、専門学校生が授業の一環として見に来ていることも多いのがこの公演の特徴。 今回の演目は「五条橋」と「曽根崎心中」からの抜粋 (豆知識) 人形浄瑠璃といえば、それまでは、源義経とか秀吉などが登場する歴史上の事件や英雄の物語と決まっていた。 ところが、近松門左衛門がつい数ヶ月前に起こった大阪で商家の手代と遊女が心中したという事件をもとに、人形浄瑠璃の脚本を書いた。今でいえば「このお話は実際にあった事件をヒントに作られたフィクションです。」とテロップが入るところ。 今まで遠い世界の話しを聞いて満足していた観客は、どこにでもいそうな男女が、次第に心中へと追い詰められていく姿をリアルに描いた筋立てを斬新なものとして受け取った 。 自分あるいは周りの人間がいつこのようになっても不思議ではない。そういう身近なものとしてこの興行は大当たりをとった。これが人形浄瑠璃での「世話物」の始まりである。 しかも、この物語があまりに美しく悲しい話なので、まねして心中するものが続出して、上演禁止になった。 「五条橋」 牛若丸が五条橋に毎夜現れて、腕に覚えのあるものに戦いをいどんでいる。それを聞きつけた弁慶が、俺が返り打ちにしてやると五条橋に現れて立ち回りをするが、牛若丸に負けて主従の契りを結ぶと言う話。弁慶のなぎなたの上に、牛若丸が飛び乗ったり、橋の欄干に立ったり、人形ならではの演出で、内容よりは動きを楽しめる。 「曽根崎心中」 (前提) 醤油屋の手代徳兵衛は遊女お初と恋仲である。しかし、醤油屋の主人で伯父は親戚の娘と結婚させるつもりをしている。支度金も徳兵衛の継母に支払ってどんどん話を進めてくるので、縁談は断りますといったところが、断るなら支度金を今すぐ返せ。もうお前はクビだといわれてしまった。 徳兵衛は支度金の事は知らなかったが、ともかくやっとの思いで継母から金を取り返してきた。 そこで出会った友達の九平治に支払いに回す金がなくて困っていると借金を申し込まれて、少しの間ならと 借用書を徳兵衛が書いて相手に印鑑を押させた。ところが約束の期日を過ぎても九平治は金を返しに来ないので、徳兵衛はやきもきしている 生玉社殿の段 たまたま生玉神社を徳兵衛が通りかかると、お初が客の伴をしてきている。思わず走り寄る二人。長らく連絡がなくて心配していたとお初。徳兵衛は 今までの話をし、なんとか縁談を断るが、店をくびになったら働くところもないと苦しい状況を打ち明ける。 そこへ、友達とほろ酔い機嫌で九平治が登場する。思わず詰め寄る徳兵衛。貸した金どうしてかえしてくれないのか。 九平治は「自分は金を借りた覚えなどない。」としらを切る。借用書があるではないかと徳兵衛。 「なにその借用書はお前の筆跡、しかも印鑑はそれより前に紛失し、しかるべきところへちゃんと届も出してある。 お前が印鑑を拾って勝手に借用書を偽造したのだろう。」と逆に詐欺扱いをされ、友達にも殴られ、さんざんな目に会ってとぼとぼと徳兵衛はその場を立ち去るのだった。 (やっとの思いで取り返したお金、だまし取られたのもくやしいし、せっかく友達と思っていた人間に裏切られた心の痛手はより大きい) 天満屋の段 お初の雇われている天満屋では、お初は徳兵衛のことがきがかりでならない。ふと外を見ると徳兵衛が表でひっそりとたたずんでいるのが見えた。表に出たお初はとっさの機転でうちかけの裾に徳兵衛をしのばせ 天満屋の床下に隠す。 九平治がそこへ客としてやってくる。ここでも徳兵衛の悪口をいいふらし、金をとられるところだったといかにも被害者づらをしている。床下で怒りに震える徳兵衛。端近に座ったお初は、足で徳兵衛を抑える。そしてひとり言のように「男を立てるために(無実であると訴える)は徳兵衛さんは死なねばなりますまい。その時はむざとひとりでは死なせない。」と独り言のように徳兵衛に聞かせる。床下で徳兵衛はお初の足をくびにあて、心中をすることを二人は心の中で決意するのだった。 深夜になってみんなが寝静まったころ二人は天満屋を抜けだし死に場所をもとめて歩くのだった。 天神の森の段 ふたりで、ここまでやってきていざ死のうという二人。ここは筋よりもセリフと人形の動きがあまりにも美しい。 「この世の名残。世の名残。 死に行く身を例えれば、安達が原の道の霜。 1足毎に消えてゆく。夢の夢こそあはれ也。」 うち掛けを脱いだら覚悟の白むくのお初と徳兵衛のからみはアイススケートのペアとかアイスダンスをみているような華麗さである。
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