自作カービングローラー 1号機
先日、カービングローラー壱号機の試乗一発目でコケて右手を擦り剥いてしまったため、やむを得ず左手でお尻を拭いてみた所、非常に新鮮な感じがしました。ちゃんと拭けてないんではないかという不安感から最後は右手を使ってしまいましたが、左手の指には今もあの感触が残っていて、それをヒントに、慣れない動作を思い出すことが運動記憶の想起訓練になるような気がしました。また機会があったらやってみたいと思います。後で手を洗う時にできるだけ患部を濡らしたくないので、小便の時もゴム手袋をしてしてみたところ、こちらも他人の介護をしているようで新鮮でした。何はともあれ、アスファルト上で転がる遊びをする時は、プロテクターと革の手袋は必需品だという事を今更実感しました。バイクと違ってスピードが出ないから大丈夫だろうと、今回は手の平側だけ人口皮革製のオフロード用グローブを使った所、見事に繊維を破って皮膚を引っ掻いてしまいました。さて、夏でもその辺で滑れるスキーに似た道具として、グラススキーやローラースキーの他に、ツリス、RSV、カービングローラーなどがあるようです。(ツリスは6輪ですがインラインスケートのように全長が短く、RSVはカービングローラーと似たような長さですが3輪のようです。)その中でもカービングローラーは、走行感が雪上のスキー感覚に似ているという宣伝文句が書かれていて、アルペンスキーヤーの夏場のトレーニングにも使用されているらしいのですが、なにぶん、新品は10万円ほどします。(ツリスやRSVは6,7万ほどです。)オークションで2万位で買えたら購入したいところですが、中古はなかなか出て来ません。ということで、自作することにしました。ネットを見ると、自作している人は結構いました。見た目は、スケボーのトラックをそのままショートスキーに移植すればいいようですから、作り方は簡単です。しかし、当然のことですが、本物のカービングローラーは、プロのスキーヤーによって何度もテストをくり返して雪上感覚に近くなるように工夫されているようで、そもそもスキー本体からが専用設計で、トラックの幅やピポット角度、ウィールの大きさや種類、前後トラックの取り付け位置など、セッティング次第でその走行感は大きく変わってしまうようです。とりあえず、どんな感じか体験出来るだけでもいいので、トラックのアクスル幅が一般的なスケボーより狭いペニーボードの偽物をアマゾンで2台購入し、ファンスキーに取り付けてみました。トラックの取付け位置及びウィールベースは、本物のカービングローラーの写真を見て、それに近い位置に取り付けました。そして、テレマークビンディングを取り付ける前に、もともと付いていたビンディングで試走してみました。すると、思ったように曲がりません。まだシーズン終了して一ヶ月ほどで雪上のスキー感覚は残っていますが、全く雪の上のようには曲がってくれないのです。テレマークターンばかりやっていたので、アルペンターンを忘れてしまったのかと、暫し考えてみました。思ったようにといっても、アルペンターンをする時、何を思っていたのか、いつも雪上では何も思わずにスキーに乗っていたような気がしてきて、曲がり方がよく分かりません。スキーというのはどうやって曲げるのでしょうか?現在のスキーはサイドカーブが付いているので、スキーを傾けると自然にその方向に曲がってくれるような気がします。一方、カービングローラーの場合は、スキーを傾けるとピポットブッシュが変形してキングピンを中心に荷重した側にアクスル自体が舵を切って曲がるわけです。しかも、昔のラジコン「京商プログレス」に搭載されていた4WDSステアリング機能のように、後ろ側のトラックは逆方向に舵を切ることによって、ハの字になって曲がるわけです。このカービングローラーという道具は名前の通り、カービング感覚を磨くための道具で、板に適切な荷重をすることによって板をしならせ、夏場でも路上でカービングターンの練習を行なえることを売りとして開発されたようです。なので、テレマークで多様するテールをスライドされるような滑りは全く出来ないわけです。試乗一回目は2分ほどでコケて終了してしまったので、後日、また5分ほど乗ってみました。すると、曲がらないと思っていたスキーが、荷重の仕方によって曲がってくれることが分かりました。取り敢えず外足に荷重すると、曲がることは曲がります。内足にも同じ分量で荷重すれば外足と同じ旋回半径で曲がるのでしょうが、うまく内足に荷重出来ません。荷重が甘いと内足の旋回半径が大きくなってしまい、内足が外足に重なってしまいます。内足を上げない限り、旋回は破綻します。雪上スキーのようにズラしてごまかす訳には行きません。綺麗なパラレルで滑るためには、内板の旋回半径が外板に比べて小さくなる必要があります。RSVはそれを構造的に実現するために、後輪をズラして設置してあり、内足の内輪がショートホイールベースになって旋回半径が小さくなるように出来ているようです(たぶん)。カービングローラーの場合はどうなのでしょうか?4輪が全て接地した状態で内足の旋回半径を外足に比べて小さくするには、内足荷重を外足より多くするか内足を大きく傾けて余計にブッシュを変形させてやらなければならないような気がします。上手い人のカービングローラーの動画を見ていると、膝と腰を入れて、重心を内側に移動しているように見えますので、きっちり内足荷重して曲げているのかも知れません。一方、私の場合、両足均等あるいは内足に余計に荷重して曲げるのは今のところ難しいです。果たしてカービングローラー動画と同じように曲げることができるのか、5分ほどの乗車では良く分かりませんでした。家の前の駐車場での試乗だったので、それ以上は恥ずかしくて、どうにも続けられませんでした。私の自作カービングローラーは、一台2980円のペニーボードもどきのトラックをそのまま使用しており、ウィールの硬度は78A、径は59ミリで幅46ミリと、恐らく本物のカービングローラーのウィールより柔らかく幅広のため、グリップが良く、転がり抵抗は大きいと思われます。実際の感覚も、粘りっこい滑り心地です。また、写真で見る限り、本物のカービングローラーに使用されているトラックのピポットは、ペニーのトラックより寝ているように見えます。素人的な想像だと、今回使用したペニーのトラックと比べて、ローリングが大きいハンドリング特性になるような気がします。ペニートラックの場合は荷重に対してステアリングがクイックに切れ、ヨーイングで曲げる感じです。と、にわか知識で書いてみたものの、実際は機体の特性云々より、カービングローラーの乗り方自体を心得ていないというのが一番の問題かも知れません。二回目の乗車で分かったのは、初心者がカービングローラーで地面を滑ることは、思ったより地味な遊びだということです。当初目論んでいたような、山道でダウンヒルして景色の変化を楽しむような遊び方は、これから何十年も練習を続けないと無理のような気がします。だいたい、カービングローラーにはバイクのようにブレーキが無いのです。そして、スキーのように両足を揃えてズラしながらストップすることも出来ないのです。雪上のスキーのようにスピード感がない(スピードが出せない)にも関わらず、Gの変化は急激です。このGコントロールを低速で体験できるのがカービングローラーの醍醐味なのかも知れません。そして、分かり切った事ですがアスファルトは強烈に固いです。それに比べて人間の皮膚は柔らかく、餃子の皮のように破れやすいです。ガードレールに激突するわけでもなく、ゆっくりとしたスピードで転んだだけでも、転び方によっては日常生活に影響が出るような怪我になりかねません。この緊張感は、少し慣れてきたテレマークでは味わえないものでした。アルペンターンでのカービングローラーの乗り方もよく分からないまま、次回はテレマークで試乗してみようと、チリケーブルを乗せてみました。なんとなく、構造的にテレマークの方が内足荷重し易いように思えたので。