大河ドラマ『光る君へ』第12回~「思いの果て」
2024年NHK大河ドラマ 『光る君へ』 の感想です。この回は、まひろ(吉高由里子さん)と藤原道長(柄本佑さん)がやっぱり互いに思い合っているし、相手の立場を理解して歩み寄ろうとしているのに、結局は二人が別の方向に行ってしまうことが気になった方が多いと思います。しかし私は、全く別の部分で感動していました。ドラマの冒頭でまひろの父・藤原為時の妾で病人のなつめを演じた藤倉みのりさんと、ドラマの中盤で一の姫の倫子の元に道長が婿入りしようとしていることでオロオロとうろたえまくる左大臣・源雅信を演じる益岡徹さんの、お二人の演技に感動でした。重病人を演じる藤倉みのりさんの、力の入らない体、やつれ具合、咳き込み、荒い息づかいなどは、どう見ても重病人そのものでした。また娘・さわにどうしても会いたいと哀願する表情、願いが叶って心残りはないという表情など、どれも見事だったと思います。そして益岡徹さん。目に入れても痛くないほど可愛い自慢の姫の倫子の縁談では、摂政の藤原兼家には気圧され、倫子からはどうしても道長を婿にしてほしいと懇願され、特に倫子をなだめるシーン(22分10秒から24分30秒)の益岡さんの表情は、困惑や狼狽を表すのにこんなにも種類があるのかと、画面に見入ってしまいました。感動というと、泣けることをさすことが多いと思うのですが、感動の言葉の意味は「美しいものやすばらしいことに接して強い印象を受け、心を奪われること」とあるので、私はお二人の演技にスゴイ!と思う感動をしたのです。私は演技に関してはド素人ですが、ここでベテラン役者さんの本領発揮を見たと思っています。こちらでは様々な意見がでていて参考になります。 ⇒ ⇒ #光る君へ 寛和2年(986)夏、藤原為時(岸谷五朗さん)は病の床に伏す妾のなつめ(藤倉みのりさん)はもう先が長くないと悟り、僧を呼んで得度(出家して僧や尼になること)の儀式を受けさせ、なつめを安心させました。しかしなつめにはもう一つ心残りがあり、離れて暮らす娘のさわ(野村麻純さん)に一目でも会いたいという思いでした。為時は娘のまひろ(吉高由里子さん)に頼んでさわを呼んできてもらい、離別してからずっと会えなかった娘との再会を果たせて、なつめは為時に看取られて穏やかに旅立っていきました。その後、さわは礼を言いにまひろのもとを訪れ、そしてまひろに家での仕事や琵琶の弾き方などを習って、姉妹のように仲良く時を過ごしていました。しかし為時の失職によりまひろの家の暮らしは厳しいものになっていました。それを案じた親戚の藤原宣孝(佐々木蔵之介さん)は、まひろがこの家に力のある婿を迎えることこそが最良と考え、いい人物がいると話をしにやってきました。その相手は正四位下で左中将の藤原実資で先ごろ北の方(嫡妻)が亡くなっていて、知恵者で名高い実資は賢いまひろを気に入るだろう、ということでした。為時も実資の学識と筋の通った人柄を認めていて、自分たちとは身分が違い過ぎると思いつつも、まんざらではないようでした。(まひろはこの時は、自分の気持ちも考えずに勝手に盛り上がる父と宣孝に困っていましたが、後で宣孝に「甘えるな。」と叱られています)さて、藤原道長(柄本佑さん)には妾腹の兄・藤原道綱(上地雄輔さん)がいて、父・藤原兼家の陰謀の折にも一緒に働いてその後に父に官位を上げてもらっているのですが、道綱は宮内での人間関係に疲れているようでした。道綱は道長の住む東三条殿に遊びに来て、酒を酌み交わしながら11歳年下の道長にあれこれ愚痴を言っていました。その折に道綱が女の「妾という立場」のことにふれ、道綱の話から道長はまひろとのやり取りを思い出して一人考えにふけっていました。(そしたら兄から顔をムギューっと。この2人は互いに心を許せるようです。)後日、摂政となった藤原兼家(段田安則さん)は左大臣・源雅信(益岡徹さん)を呼びたて、人払いをして内密の話をしました。その内容は、兼家の息子・道長が雅信の一の姫の倫子に婿入りしたいというもので、兼家にとっては願ってもないことでした。兼家は言葉こそ愚息の願いとか雅信への敬語とかで雅信を立てていますが、口調や態度は話を進めるごとに強くなっていき、是非にでもこの縁談が成立するようにと雅信に圧をかけていました。兼家に気圧された雅信でしたが、兼家とのつながりは慎重にしたいので即答は避け、まずは倫子の気持ちを確かめなければと言ってその場を濁しました。道長を倫子の婿にすると決めた兼家はすぐに道長を左大臣家に送り込み、道長が大臣家の皆の目に留まるようにしました。道長が帰った後、源倫子(黒木華さん)が思いつめたような顔で父・雅信のところに来て、そして父に訴えました。「私は、藤原道長様をお慕いしております。」自慢の姫で可愛くて仕方がない娘から、好いた男がいると言われて激しく衝撃を受ける雅信左大臣さま。さらに倫子からは、夫は道長と決めている、どうか婿に、生涯一度のお願いとまで言われ、雅信はよりによって摂政家の若君をと、どうしたものかと狼狽するしかありませんでした。果て倫子は、道長との結婚が叶わなければ自分は生涯、猫しか愛でないとまで言いだし、なんとか父上の力で道長を婿にともう必死の訴え。そして倫子が道長の目に留まっていたようだと伝えたら、それならば!とさらに力を込めて、そして泣きながら倫子は父に訴えました。涙する倫子を雅信が慰めながらつい「不承知ではない」と言ったら、それを妻の穆子が聞いていて「この話、是非進めていただきましょう」と穆子からも雅信に圧が。摂政・兼家の圧に負け、可愛くて仕方がない娘の涙の懇願に負け、妻からの圧がダメ押しとなり(要するに自分以外はみんな賛成っこと)、左大臣さまは道長を婿として迎えることになりました。道長は姉で一条天皇の生母である藤原詮子から、倫子だけでなくもう一人、醍醐天皇の孫にあたる源明子を妻に迎えよと強く言われていました。さて、倫子との結婚を意識したからか道長はかな文字の稽古に励んでいて、藤原行成(渡辺大知さん)が師となって教えていました。いつもは大した欲もなく日々を過ごしていると思っていた道長がやる気になっていて、藤原公任(町田啓太さん)と藤原斉信(金田哲さん)は目を見張りました。道長の姿を見て、これは摂政家が宮中を全て意のままにしようとしているのではと感じた公任は父で太政大臣の藤原頼忠に相談しました。すると父・頼忠は、自分は内裏に出仕をするのをやめるから後を頼むと、そして摂政家では藤原道隆ではなく藤原道兼と懇意になるよう、公任に助言しました。さて平安の都では、人々が眠らずに夜を明かす庚申待ちの夜を迎えました。まひろは弟の藤原惟規(高杉真宙さん)と、近頃すっかり親しくなったさわと共に3人であれこれ語り合いながら眠らない夜を過ごしていました。その時、道長の使いで百舌彦がまひろ宛の文を持ってきていたのですが、それを受け取った惟規が勝手に開封してしまい、さわにも読まれてしまいました。でも、いつもの空き家で道長が待っているのでまひろは居ても立っても居られず、惟規とさわを置いてすぐに家を飛び出していきました。まひろは無我夢中で走りながら、妾でもいいから道長の妻でいたい、道長以外の妻にはなれない、と思いを改めていました。しかし道長と再会して道長の口から出た言葉は、左大臣家の倫子に婿入りする、それを自分でまひろに伝えたかった、ということでした。思いがけない展開にまひろは呆然としつつも、なんとか道長を祝福する言葉を送り、道長もまひろが理想とする政を行うために精一杯努めると返しました。まひろは道長なら妾でもいいと思ったけど、才能も人柄も素晴らしくて自分も好感を持つ倫子が嫡妻ではそれはできない/したくないと思い、自分も道長と別れるつもりだったととっさに言葉をつくろい、去っていきました。(息を切らしながら何かを期待した顔で空き家に入ってきたときのまひろのことを思い出せば、今の言葉は本心じゃないと道長もわかると思うのですが。)まひろが去った後、道長はその足で倫子の屋敷を訪れました。(道長なりに、まひろとの決別の思いもあったと想像します。)穆子は倫子に文も寄越さずにいきなり来た道長を呆れつつも、そのまま倫子の部屋の前に通しました。御簾の内を許された道長は倫子の傍に座り、倫子の手を取って徐々にと思っていたら、倫子のほうから道長の胸に飛び込んできました。自分への思いを一心にぶつける倫子に、道長も自然と惹かれていきました。道長に会うために急ぎ走った道を、まひろはトボトボと歩いて帰ってきました。家を出るときは飛び出していった姉が思ったよりも早く、しかもどこか哀しげな顔をして帰ってきたので、惟規とさわはうまくいかなかったのだと察しました。二人は何も言わず、惟規はまひろに酒を勧め、さわは「こらえなくてもいい」とまひろをなぐさめ、まひろは夜空を仰いで酒を一気に飲み干しました。(まひろが道長とのことで傷ついていることを察し、まひろの悲しみに寄り添いただ傍にいてくれる惟規とさわがいてくれてよかったと思いました。)